第118話巨大なウサギと遭遇
ホタルブクロって、前世の知識に、ノウサギが好きな植物だったような……
そういう意味では、雑食だけど草も喜んで食べるナナには美味しいのかもしれないわね
ただ、この世界のホタルブクロは、食虫植物で自力で移動するのねぇ…ん?
そう言えば、前世でのノウサギってホタルブクロが好物のひとつだったわねぇ
もしかして、洞窟入る前に飛びウサギが獲れたのって、そのセイかしら?
だったら、また飛びウサギが獲れるかしらねぇ?
そんなコトを考えながら、ホタルブクロをモゴモゴしながら先導するナナの後に付いて行く。
ちなみに、既に半分くらいまで食べ終わっているナナだった。
もうすぐ小街道にたどり着くと思ったところに、ナナがピタッと立ち止まる。
同時に、フワッとした何かの気配を感じて、キョロキョロするが何も見当たらず、リアは小首を傾げる。
ナナが立ち止まったコトで、ルリやグレンも警戒心を引き上げて、それぞれ剣などを構える。
と、空からスタァーンという音が付きそうな勢いで、もの凄く大きなウサギが小街道に降って来た。
えっとぉぉぉぉぉ~………えぇぇぇぇ~…ウサギなのぉ……めっちゃ大きいんですけど
大型バス並に長さあるし、足も太いわ…耳も大きいのね……じゃなぁ~いっ
なんなの…あの大きさは……ラノベのウサギって、せいぜいが中型犬ぐらいでしょっ
うわぁ~……全然、可愛げってモンがないっ……じゃなくて…角がある
えっ…もしかして、こっちのホーンラビットってあんなに大きいの?
いや、お肉がいっぱいとれそうな程、まるまるとしているけどね
びっくりしすぎて声も出ないリアに、ナナが口にモゴモゴしていたホタルブクロをペッとする。
グゥゥゥ…ゲェェッ…グェェェケッ
ついで、巨大ウサギに向かって、首を精一杯反らすようにして、警戒音のようなという妙な鳴き声をあげる。
と、もの凄い巨大なウサギは、ハッとした顔をして、ナナに警戒したような体制を取る。
えっ? ナナちゃん? なんか、巨大ウサギがイヤそうな顔しているんですけど
体格差がもの凄くあるのに、警戒されるって?
そう言えば、飛ばされるツバがもの凄く臭いって言ってたわね
下手すっと、ツバを掛けられたところが溶けたりするって言っていたような
そう言えば、全然気にしていなかったけど、ウクダってヤバいんだっけ
もしかしなくても、ナナちゃんも戦闘能力あったりするの?
そう思ってから、リアはハッとして側に居るはずのグレンとルリとユナを振り返る。
が、グレンは黙って抜き身の剣を構え、何時でも切る体制になっている。
ユナは、尻尾を膨らませて、リアの前に立って手首に付けたヒジまで覆っていたソレを開き弓にして構えていた
あれ? ルリが居ないんだけど……何処に消えの?
……って、うわぁ~…ルリってば…あんなに大きくなれるんだ
そういう場、ルリって魔獣帝の称号もっていたっけ
そんなコトをリアが思っている間に、巨獣と化したルリが、ナナを警戒している巨大ウサギの背後から襲い掛かる。
本当にあっさりと、首筋に牙を打ち込み、一瞬で身をひねって巨大ウサギの首を折る。
ギャッ……ボキッ……ゴキンっ……ズズーン……
そして、大地に打ち付けるように巨大ウサギを打ち倒す。
うわぁ~…凄い振動だわ
流石に、巨体を打ち付けられると大地が大きく揺れるわね
それにしても、ルリの全体重を掛けたひとひねりには、ひとたまりも無いのねぇ
ちょっとあっけに取られたリアは、たった今、ルリによって仕留められた巨大ウサギを見て、溜め息を吐く。
「こんなに大きなウサギって居るのねぇ~……」
ククククッ…ククククッ………ケッ
ナナがどこか楽し気に鳴いて、ご機嫌で尻尾をフリフリして、さっき口からペッとしたホタルブクロの半分を再び食べ始める。
拾いなおして食べるくらいだから、かなりの好物なのかしらねぇ
じゃなくって、本当にもの凄く大きいわねぇ~…
普通のウサギの何十匹、いや何百匹分かしら?
リアがそんなコトを思っている間に、剣を鞘にしまったグレンが嘆息しながら言う。
「トリプルコーンのエンペラーラビットかよ……こんだけデカイってコトは…軽く百年モノだなコイツ」
グレンがそう言えば、人型に戻ったルリが頭部に後ろ向きに生えている角を手刀で叩き落とし、額の角も手刀で落として持って戻って来る。
「ああ…アタシでも、こんな大きさのにはあたったコトないよ……もしかしたら、この辺の主かもねぇ~………観なよ、この角の立派なコト……」
軽く二メートルはありそうな一本と、三メートルぐらいありそうな二本の角に、リアはマジマジと見詰めてしまう。
が、そういう意味での感動が無いらしいユナは、その三本の角をさっさとマジックポーチへとしまって言う。
「それより、そのエンペラーラビット、ここで処理するの? しないなら、リアお姉ちゃんのアイテムボックスにしまって移動しようよ」
ユナの建設的な言葉に、リアはハッと正気になって頷く。
「そうだね…今、ちょっと処理する気分じゃないから、取り敢えず、小街道に出て馬車と軍馬達を出そうか」
「「そうだね(な)」」
ルリとグレンの反応に、リアはちょっと苦笑いしながら、角を折り取られたエンペラーラビットをアイテムボックスに収納する。
「さて、それじゃ移動しようか……あと少しで小街道だし……」
「そしたら、リアお姉ちゃん、朝ご飯を食べようねぇ…ユナ、お腹空いちゃった」
言われて、リアもお腹が空いていることに気付く。
同時に、ルリとグレンの腹もご飯を要求するようになる。
「あらあら、アタシの腹も空いたって文句いっているよ」
「ああ、俺の腹もだ………また、ソーセージ食べたいなぁ~……」
「ユナは、カラアゲが好きぃ~……」
「アタシはトンカツとコロッケだね……食ったっけが強くて好きなんだよ」
「どっかに、またジャンボモアの新鮮な卵…転がってないかなぁ~……」
などと言いあいながら、小街道に出たリアは、手首の腕輪型アイテムボックスに収納していた姿見を出す。
そして、その中に収納した馬車と軍馬達四頭をまず最初に出した。
「ナナぁ~…子供達を出すから面倒を見てねぇ~……」
そう言えば、すぐさまリアの側に来て、出て来た子供達を回収する
勿論、雛のグリとまだまだお子様なレオも、分け隔てなく回収してくれたコトは言うまでもない。
「本当に、ナナは面倒見が良い子だから助かるわぁ~……あとは、シャドウハウンド達だけど、まずは一頭出して確認ね」
リアに呼ばれて、姿見の中で待機していたシャドウハウンドの一頭がノソッと出て来る。
ちゃんとリアの言葉を理解しているらしく、一頭だけ代表で出て来て、どこぞに回収されたりしないコトを確認する。
「良かった、外に出て居ても大丈夫そうね……」
ふふふふ……と笑って、リアは最初に出て来たリーダーの頭を撫でる。
「良い子ねぇ…仲間の安全確認の為に出て来るなんて…流石、リーダーね」
リアにたっぷりと撫でてもらい、リーダーはご機嫌で尻尾を振るのだった。
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