第117話小街道に戻りましょう
洞窟の外に出たリアは、振り返って溜め息を吐く。
たった今、出た来たばかりの入口は閉じ、よくよく見なければ、ソコに洞窟があったという痕跡を見付けるコトは出来ないほど、巧妙に偽装されていた。
ほんとぉ~に……私が管理者……というかマスターになっちゃったってコトなのかな?
とはいえ、今の力じゃ攻略なんて無理そうだものねぇ……はぁ~……
取り敢えず、馬車が出しやすいところまで徒歩で移動ね
勿論、姿見の中のシャドウハウンド達はココから少し離れるまで出さないわよ
強制的に、遺跡の中に転移とかさせられたら可哀想だものね
もしも、私がその状態になったら、絶望しかないもの
もう、あんな報われない生活なんて御免よ
たとえ、王様や大神官長様達が、私のことを思っていてくれたとしても
自由を知った私には、もうあんな生活なんて、絶対に無理だわ
それに、前世の快適生活を思い出した今、不自由極まりない生活なんて絶対にイヤ
きっと、私達に付いてきたいって訴えたシャドウハウンド達だってそう思うだろう
だって、あの子達、全頭、ものの見事にガリッガリッだったもの
最初に出合ったシャドウハウンド達は、帰り道に出会わなかったのよねぇ
もし居たら、犬笛で正気にして、回収して上げたかったのよねぇ
せめて、エサだけでもと思ったんだけどねぇ………はぁ~……
シャドウハウンド達以外に、何が居るか判らないから置きエサも出来なかったわ
こればっかりは、どうしようもないわよねぇ………
それにしても、外に出たら明け方っぽいってどのぐらい中に居たのかしら?
「ねぇ……ルリ、グレン、ユナ、私達ってどのぐらい中に居たのかなぁ?」
薄暗いから少しずつ明るくなり始めたので、思わず私は三人を振り返る。
「う~ん……感覚としては、半日ぐらいかなぁ? 眠気とか来なかったしなぁ……」
グレンは首を傾げながら言えば、ルリが首を振る。
「時間感覚が狂っているような感覚が在るから、意外と数日経っているかもしれないね」
ルリの言葉にユナはちょっと首を傾げ、洞窟に入る前に採取した灯夜守〔ひよす〕と吉藻蟻〔よもぎ〕があった場所を指さして言う。
「ルリお姉ちゃん、そんなに経ってなさそうだよぉ~……ほらぁ~ここの薬草、まだチョビっとしか生えてないもん」
ユナの言葉に、全員がそちらを見て頷く。
「ああ、確かにそうだね」
頷くルリに、グレンも確認して頷く。
「ああ、そのようだな……確か灯夜守〔ひよす〕も吉藻蟻〔よもぎ〕も、成長速度は早いからな………葉を採取してから三日も立つと、新しい葉が採取出来るはずだからな」
そんな会話をしつつ、一応全員で周囲を警戒しながら小街道に向かって歩く。
馬車で移動する為には、やはりちゃんとした街道を通る必要があるのだ。
ちなみに、ナナは出たままなので、意気揚々とリア達の前を先導するように歩いていたりする。
リアは、ルリ達が警戒しながら歩いているので、何か物珍しいモノはないかと、あちらこちらと視線を彷徨わせながら歩いていた。
う~ん……流石に、めぼしいモノって無いわねぇ………っと
今、向こうの岩の上をムカデみたいなの走らなかった?
ああいうのも、採取依頼とかあるのかしら?
「ねぇ……そこの岩にムカデみたいなの走ったんだけど、そういうのも何かの役に立つかなぁ?」
ラノベとかで、薬にされていたような気がするんだけど……どうなのかな?
確かムカデって、噛まれると腫れて痛いらしいのよねぇ
私は、実家の庭とかで見たコトはあっさても、被害にあったコトないけどさぁ
通っていた高校の保健室で、足齧られたとかっていう話しがあったのよねぇ
二倍以上に、足がパンパンに腫れたって聞いたのよねぇ………
あら……あんなところに、ホタルブクロみたいなモノがある
この辺を歩いた時には無かった気がするんだけど………
って言うか、岩石砂漠にあるようなモノなの?
この世界の生態系がよくわからないわ(困)
リアがそんなコトを思って、無意識に足を止めて首を傾げている間に、グレンはリアが指さした岩へと行き、紫紺色のムカデを捕まえて小さな壷に放り込んでいた。
「リア、大当たりだぞ、シコンムカデだ……コイツは、薬師に高く売れるんだぞ」
ご機嫌でキラキラ笑顔のグレンに、リアはちょっとクラリッとする。
うっ…あぁぁぁ~強烈だわ…イッケメンの全開笑顔……ちょっと足に来たわ……
グレンに慣れたと思ったけど…まだまだ免疫が足りないわね……じゃなくて……
さっき見付けたムカデは、シコンムカデって言うのね…へぇ~……
「ふふふふ………流石ね、グレン…上手く捕まえられたのね………それじゃ、次にどこかの都市とかに行ったら売りましょう」
そう言ってから、リアは別の方角を指さして言う。
「それで、グレン、あそこにホタルブクロみたいな草? が、生えているんだけど………ここに来た時、あったかしら?」
リアは、草丈がかなり大きな、前世で見たことのある植物とよく似たモノを指さす。
「ゲッ……あれは、食虫植物だぞ、リア……来た時には無かったから、たぶん移動するタイプだな」
グレンの言葉に、リアはルリを振り返る。
「ルリ、アレって何かに使える? 食虫植物ってコトはアリとかを食べる為に移動して来たのかなぁ?」
不思議そうに首を傾げるリアに、答えを持っていないルリはグレンへと問い掛ける。
「ふむ、討伐対象になっていた気がするけど………アタシも、都市に数年行って無いんで、だいぶ前の記憶しか無いからねぇ………どうなんだい、グレン」
問い掛けられたグレンも、アゴを掌でさすりながら首を傾げる。
ちなみに、ユナは誕生したばかりの幼体なので、そういう知識は無いだろうと質問しなかった。
「根っこから引っこ抜いて、ギルドに持って行くと討伐金がもらえた気がするな……俺も、あまりそっちの知識が無いからなぁ……」
その答えを聞いて、ルリは尻尾を伸ばして、ヒョイッと掴み力尽くでズボッと抜いてしまう。
ギゲゲゲッ……という奇声を発するが、リアの耐性魔法がかかっているので、全員不快という程度で、そういう意味での影響は出なかった。
グレンとしても、ルリがそういう暴挙に出ると思っていなかったので、ちょっと硬直していたりする。
「おいおい、ルリぃ~…そういうコトする時はひと言たたのむぜ………マンドラゴラほどは影響なくても、ヤバいヤツなんだからさぁ~………」
グレンが苦情を口にするが、ルリは素知らぬふりをして言う。
「ああ、本当に移動型だったようだねぇ~……って、アタシよりナナのほうが問題じゃないかい」
その言葉で、ナナの方へ視線を向ければ、ご機嫌でホタルブクロのような植物をムシャムシャと食べていた。
「あら、ナナつてば……もしかして美味しいの?」
リアが聞けば、嬉しそうに根っこまでひっこ抜いたホタルブクロを食べながらコクコクするのだった。
それを見たルリが、呆れたように呟く。
「ナナはナナだねぇ~……」
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