第115話お掃除スライムをゲット
全ての培養ポッドに魔力を入れられるだけ注ぎ込んだリアは、後ろ髪を引かれつつも、この洞窟の奥にある古代遺跡のゲート監視を担う管理室らしい部屋を出るコトにした。
勿論、ちゃっかりとお掃除スライムは取り出して連れて来たコトは言うまでもない。
足りなかったお掃除スライムの核となる魔石を投入し、魔力を流し入れて、培養ポッドの中の個体から分離させた、小さなお掃除スライムだったりする。
勿論、本体は核の無い状態で、いまだに培養ポッドの中にぷっかりと浮かんでいる。
その本体から分離させたお掃除スライムは、リアの掌に乗る程度の大きさでしかなかった。
リアがアポーツ(小規模物体移動)で、核ナシで培養されているお掃除スライムに核となるモノ(魔石)を与えて、分離して作った子だけにかなり小さいのだ。
更に言えば、培養液の中に浮かんでいただけに、ほとんど透明に近い水色で、リアが与えた核となる魔石が透けて見えている状態だった。
その小さなお掃除スライムを肩に乗せて、ご機嫌なリアだった。
まだ意思疎通は出来ないものの、魔石を与え、魔力を流し入れて分離させたのがリアだと本能で理解っているらしく、培養液の中からアポーツで取り出されても、おとなしいままだった。
そして、なによりもルリ達が許容した理由は、リアの意思にちゃんと反応して居るコトだった。
リアは、正しく育てていけば、いずれは会話も出来るのではないかと、期待していたりする。
勿論、スライムを分離して連れて行くというコトに反対したルリやグレンだったが、リアがちょっと赤面しつつ、おトイレ事情とかを説明して、納得してもらったのだ。
いちいち、外で穴を掘って、用足しして埋めるという作業が………というコトを説明したのだ。
だって、お腹とか壊したら…臭うし…いちいち穴を掘って埋めてが必要ないし
ふふふふ……姿見の中に、そういう空間を作って、前世の快適なおトイレよ
その為のお掃除スライムもゲットしたもの……
ああ…これでやっと、落ち着いておトイレに入れるわぁ~…
めっちゃ、嬉しいよ、本当にね
これで、気分は鳥になれ(一瞬でぴっと出して立ち去る)しなくて済むわ
そういう意味では、学院や神殿や王宮は、それなりだったけどね
やっぱり、前世を思い出しちゃうとツライのよ
なまじ、生活環境が一般市民でも現在の王侯貴族以上に良かったから………
前世の快適空間での生活を懐かしむリアは、自重というモノをポイッと捨てるコトにしたのである。
ふふふふ………この管理室から持ち出すの、ちょっとは躊躇ったけど、良いよね
乙女ゲームに、ここの古代遺跡のイベントが組み込まれているとおもうし
そしたら、どうやったって巻き込まれるだろうしね
あの断罪、婚約破棄、身分剥奪、国外追放された時から始まっていたのかもなぁ
砂漠で襲って来た魔獣の囮にされるのも、地下の古代遺跡の探索や神殿に到達するのも
世界樹の呪根(じゅこん)に囚われし龍帝陛下もイベントかもしれない
なにより、この踏破不能の超が付くような古代遺跡をルリが見付けたコトもおかしいし
私が自重しようがしなかろうが、巻き込まれはほぼ確定事項だもの
だったら、私は自分の為の快適生活を躊躇(ためら)わないわよ
それにヒロイン枠に踏み入っちゃっているなら、いずれは敵キャラと遭遇するだろうし
私にはグレンが居るから、他の攻略キャラはいらないから会いたくないなぁ
あとは、前世持ちの『私は愛されヒロインよ』なんて敵キャラ居ないといいなぁ
そんなコトを考えながら、リアはナナの先導で、入って来た入口や奥へと続く洞窟に出る。
と、その背後でシュッという微かな音が響くと同時に、普通の洞窟の壁に戻っていた。
「はぁ~……本当に、奥の古代遺跡にしろ、この壁の奥にある管理施設にしろ……謎が多過ぎるわよねぇ………いずれ、もう何度か来るコトになるかも知れないわねぇ」
少なくとも、もう一度ここに来て、今度は古代遺跡の中まで入りたいわ
それに、この壁の奥の管理室の培養ポッドの中の子達も育てたいし
なにより、神代語を何とか習得したいわねぇ
何処に行ったら、神代語を身に付けられるかしら?
それにしても、ナナって不思議な子よねぇ………
こんなところに、何かあるって見付けるんだから……ん?
そう思ってリアは側に居るナナを振り返り、その口の中に何かを銜えているコトに気付く。
「ナナ? 何を口に入れているの?」
ちょっとモゴモゴしていたナナは、リアの手に鼻先をちょんちょんして見せる。
「えっと……なに?」
ナナの要求が判らなくて小首を傾げるリアに、ユナが言う。
「リアお姉ちゃんに良いモノあげるって……両掌を出してって言っているよ」
ユナの言葉に、リアは首を傾げつつも言われた通り両手をナナの前に、掌を上にして差し出す。
と、ナナはリアの掌の上に、ペッと口の中に入れていたモノを吐き出す。
ただ不思議なコトに、口に入れていたハズなのに唾液とかは一切付いていなかった。
そして、ナナが口から出したモノは、綺麗で精緻な細工が施された腕輪だった。
「あら……腕輪? こんなモノ、どこにあったのかしら?」
と不思議そうにリアが呟いたのとほぼ同時に、ナナが口から出した腕輪はポォ~っと光り輝いて、腕輪型アイテムボックスとは反対側の手首に、勝手に嵌まっていた。
「えっ?」
うっそぉ~……って、第三の瞳に続いて、勝手に私の手首に嵌まるのって………
いや……そうよね……ここって、錬金術師が拠点にしていたらしい遺跡だものね
人工的に創造されたホムンクルスみたいに、物にも意思があるのかもしれないわね
前世にだって、そういう意味合いに近い物の怪がいるって話しあるしね
針供養やクジラ供養…は、ちょっとちがうかな……じゃなくて
長く使用したモノには、付喪神(つくもがみ)が憑くなんていう話しもあるくらいだし
それって、ある種の精霊信仰みたいなものだものね
前世の私が生きていた日本という国は、陛下を巫覡とした宗教国家のようなものだもの
新年に、陛下が国土や国民の安寧を祈る儀式を、毎年欠かさず行っている国だもの
それを考えると、前世の世界での母国は、超最先端技術の最前線を突き進んでいた
それでいて、自然崇拝を尊ぶ古代国家のままなのよねぇ~……
八百万神(やおよろずのかみ)を尊ぶ国民性だったものねぇ
モノには命が宿る、自然の現象にも、世界の理(ことわり)が存在する
そういう考えを基にした多神教国家だったものねぇ
じゃなくて、コレ(腕輪)は錬金術師が作ったモノなんでしょうねぇ
前世で言うところの、AIみたいなモノが組み込まれていてもおかしくないしね
適合者が居たら、そのモノの有無にかかわらず、自動的に管理者任命されるかも
私の場合は、魔力を流し入れたコトで、適性有りってコトになったのかもしれないわね
リアは、腕に勝手に自分の手首に嵌まった腕輪を見て溜め息を吐く。
が、ルリやグレンはそれどころではなく、慌てて警戒の言葉を口にする。
「リア、大丈夫かい? ソレ、今勝手にリアの手首に嵌まったよね」
「リア、体調はどうだっ? 痛いとか? 気持ち悪いとか? 目眩がするとか? そういうのは感じないか?」
わたわたする二人に、リアは肩を竦める。
『…………管理……登録……完了………』
と、いう声とも違うモノが脳裏を走ったコトで、リアはソレが何か理解し、思わず溜め息を吐いてしまった。
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