第111話残念無念これ以上進めません
一頭目のコモドオオトカゲもどきを回収すれば、その向こう側に居る別のコモドオオトカゲもどきが、リア達へと視線を向けていた。
そう、視界の邪魔となっていた、自爆したコモドオオトカゲもどきを腕輪型アイテムボックスに収納したコトで、向こう側からこちらがまる見えになっていた。
その為、獲物となるシャドウハウンド達や軍馬の存在に気付いた為に、貪欲なぎらついた瞳で、襲うタイミングを見計らって居るのだ。
シャドウハウンド達や軍馬達へと、食欲に満ちた双眸で、コモドオオトカゲもどきはジッとリア達の方を見ながら、ゆっくりとこちらに身体を向けているのだ。
そして、頭をリア達に向け、身体も向き直りさせ、それぞれがアレは自分の獲物だと、同族を威嚇しながら襲い掛かるべく、グッと四肢に力を込めるのを感じて、ゾッとする。
その数と、大きさと、ギラギラとした双眸に、竦みながらも、リアも何頭いるか数えようとするが………。
うわぁぁぁ~……何頭いるのよっ……ってか、増えてない?
もしかして、空間が裂けているどころか、何処かと繋がっているんじゃないのぉ?
それも、コモドオオトカゲもどきの巣と連結しているとか?
最初に現われた時よりも、コモドオオトカゲもどきの数が増えているコトを視認したリアは、喉をゴキュッと鳴らす。
いや、いくら突進に耐えられる物理耐性強化の結界を張ったって怖いモノは怖いのよ
まして、あんなに大きなコモドオオトカゲもどきが大口開けて突進だもん
鋭い牙がザックザクに生えていて、ヨダレ垂らして向かって来るのは恐怖だわ
それでも、正気で居られるのは、ルリやグレンやユナが側に居るお陰よね
けして裏切らない者が、三人も側に居てくれるんだもの
それに、私の魔法で物理耐性を強化した結界が有効だって見てわかっているからね
それはそれとして、なんでこんなに急に魔獣が出てくるようになったわけ?
どういう因果関係で、魔獣が出現しているのかしら?
もしかして、封印されていた第三の瞳も関係あるのかしら?
じゃないでしょ、私………逃避してもしょうがないわ
とにかく、もう一回結界に物理耐性強化を掛けておかないとダメね
流石に、何度も突進されたら壊れるね
だいたい、何が原因でコモドオオトカゲもどきが、あんなに出現しているのよ
最初の熊型の魔獣は一頭だったのに? どうして?
数が多すぎるわよ
そんなコトをこころの中で愚痴りながら、リアは再び結界に物理耐性強化の魔法をかける。
リアが強化魔法を掛け終わるとほぼ同時に、二頭のコモドオオトカゲもどきが突進してくる。
その後ろにも、次のコモドオオトカゲもどきが迫っていた。
えぇ~と…えぇ~と……この場合の魔法攻撃って何が良いの?
ストーンランス? フレイムランス? アイスジャベリン?
風魔法だと、エアーカッター? かしら? 何が有効だったっけ?
いっくら結界の物理耐性を強化したとは言え、連続で衝突されればどこかで壊れると、リアは感じて、思わず先制攻撃を仕掛ける。
前世の時の記憶を頼りに、リアは印象に残っていたモノを選択する。
「ストーンランスっ……アイスジャベリンっ……」
続けざまに、喉元から頭まで貫くイメージで、コモドオオトカゲもどきを下から突き上げる。
が、やはり、慣れて居ない為に、喉元を過ぎて、胸部や腹部に石の槍や氷の槍が突き刺さる。
それでも、柔らかい部分に上手く命中したらしく、競うように並走して来たコモドオオトカゲもどきを上手い具合に、足止め出来た為に、後続の突進を避けられて、リアはホッとする。
やったぁ~っ………取り敢えず、二頭の突進は止められたわ
これで、死んでくれているんなら、アイテムボックスに収納が出来るはずなんだけど
取り敢えず、唱えてみれば良いのよね
リアは腕輪を掲げるようにして、二頭のコモドオオトカゲもどきの収納を試みる。
「コモドオオトカゲもどき収納」
だが、残念なコトに、まだ息絶えていないらしく、二頭とも腕輪型アイテムボックスに収納するコトは出来なかった。
「残念…まだ死んで無いみたい……共食いとかされたくないから、しまいたかったんだけどなぁ…」
はぁ~…もう……こういう場合、どうしたら良いんだっけ?
氷で包む魔法って……水晶みたいに……アイスクリスタル? かな?
それで封印しちゃえば、収納できるかしら? ものは試しよね
「アイスクリスタルっ………」
リアの詠唱と同時に、氷と岩に突き上げられてピクピクしていたコモドオオトカゲもどき達は、一瞬で氷の中に封じ込められる。
キンッという音と共に、氷細工の水晶に密封された瞬間、リアは収納を試みる。
「コモドオオトカゲもどき収納」
リアの声と同時に、今度はちゃんと腕輪型アイテムボックスに収納される。
「ふぅ~……なんとか、収納出来たけど………」
まだ、いっぱい居るのよねぇ~……更に増えてない?
なんかの増殖の魔法でもかかっているの?
こんなに居ても困るんだけど………いっそ、隠蔽をもう一回かけてみる?
もう視認されちゃっているから無理かなぁ?
どっちにしても、どかさないと向こう側に行けそうにないのよねぇ……
いっそ、このまま進むの諦めて、引き返した方がいいかしら?
本気で引き返すのも検討した方が良さそうだけど
取り敢えず、なんとかやり過ごさないことには、それも出来そうにないわね
まずは、ルリとグレンとユナに相談ね
「ルリ、グレン、ユナ、どうする? このまま進むは無理そうだけど………一応、今のを見て、突進が止まったからさ……今のうちに対策考えよう」
先を争ってシャドウハウンド達や軍馬に喰らい付こうとして、突然岩や氷による障害を受けて、二頭の後ろに続いてコモドオオトカゲもどきは、警戒態勢でリア達を見ていた。
流石に、三頭、目の前で消えれば、恐竜脳でも警戒するのね
欲望に忠実でも、命の危険は感じるってことね
とは言え、方向転換なんて、今の状態では無理なのよねぇ
仮に上手く方向転換できたとしても、追い駆けて来るわよねぇ
いくら軍馬達が優れていたって、身体の大きさで速度負けしちゃうよねぇ
あのコモドオオトカゲもどき達の視界を塞いで、どうやって逃げようかしら?
そうリアが考えている中、ルリ、グレン、ユナは頷き合う。
「リア、岩壁とか作れるか? 氷の壁でもいいんだけど」
グレンの問いかけに、リアは軽く頷く。
「出来るよぉ~…って…そっか、何もあのコモドオオトカゲもどきを、わざわざ壁にしなくても良いんだ」
「アイスウォール…ストーンウォール」
氷の壁を最初に作り、二枚目に石の壁を作る。
勿論、できるだけ広く大きく厚くつくるのを心がける。
それと同時に、ルリの尻尾がリアの腰にガッチリと回る。
ルリがリアの身体が落ちないようにした瞬間、グレンは軍馬達に方向転換を命令する。
軍馬達もこれ以上進むのは無理と理解し、馬車に乗るリア達に負担にならないギリギリで回る。
勿論、シャドウハウンド達もそれにあわせて方向転換し、走り始める。
背後では、氷の壁に突進しているらしい音が響く。
ドシンッ ドシンッ ドシンッ ミシッ ピキッ ドシンッ ビシッ
響く不気味な音を聞きながら、リア達はその場から逃げる。
それこそ、脱兎のごとくとはこういうモノかというような素早さで、方向転換をすませた後は、もの凄い勢いで、軍馬達は駆けだした。
勿論、二頭の軍馬は、ちゃんと交代要員が、姿見の中で休んでいるコトを知っているので、フルスピードでその場を離脱するのだった。
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