第110話ワニですか?トカゲですか?
挨拶と同時に、グレンはソーセージに齧り付き、顔を綻ばせる。
ルリは、厚地のトンカツをちゃんとナイフで切って、頬張る。
ユナはユナで、ミルクアイスを乗せたパンケーキを口にいれてご満悦の表情になっていた。
ちなみに、ミルクアイスは溶けないようにと、手を付けるまでの短時間、現状維持ようの状態保存をかけてあったりする。
魔法使いが見たら、目を剥いて間違いなく使い方が間違っているというようなコトをしていたりす。
さてと、全部食べたら絶対に重いから、味見……だけだと、ルリ達が心配するわね
うぅ~ん……そうね…四分の一くらいなら、充分腹持ちするし胃にこないわね
2倍以上食べていた時は、神官様達が胃の為の薬と魔法で補助していたのよねぇ
前世でのテレビCМとかで、青汁とかの健康うんたら見て思ったのよねぇ
食べれる分だけ、食べれれば充分じゃないのかなって思っていただけに
そうまでして、大量に食べ食べたいものなのかなぁ? って
意図したモノじゃないけど、私もそういう状態だったのよねぇ……はぁ~……
その結果が、このもの凄い大墫体型なのよねぇ……
この身に詰まったのは、余剰栄養と不浄な穢れの澱(おり)なのよね
そんなコトを考えながら、リアは食前の挨拶をした後、自分の分として取り分けられている料理を全て四等分にする。
そして、ちょっと大き目の木皿を出して、自分用に四等分にした一切れを取り分けてから言う。
「みんな聞いてくれる? 私は食べすぎの結果、こんな体型になっちゃたから、食べる量を減らそうと思うんだ…それに、人族の私に、この量はちょっと胃にキツイのよねぇ……まだ、手を付けていないから、そっちの残ったモノをみんなで分けて食べてくれる?」
リアの言葉に、余分に食べられるコトになった三人は素直に喜んでいた。
ついでに言えば、言動の端々に、太っていることを気にする言葉が混じっていたので、みんな気にしていたのだ。
「それとね、お腹が空いたらちゃんと言ってね……私以外、みんな栄養不足なんだからね………私は、ある事情で必要以上に食べさせられていたから、こういう姿になったんで、過剰摂取を止めて、適度に運動すれば、ゆっくりとでも痩せるはずだから……って、コトで、減らしただけだから気にしないでね」
そう言いながら、四分の三が残った皿を中央に置いて、好きに食べてと言うリアだった。
リアの健康が気になっていたルリやグレンは、リアの言葉に、好きで暴食していたわけじゃないコトを知り、あえて何も口にしなかった。
ユナにいたっては、ちゃっかりと自分の分として、パンケーキとアイスだけは確保していたりする。
グレンもお気に入りのソーセージ二本と、カラアゲをもらい、ルリに言う。
「ルリ、お腹に子供いるんだから、食べられるなら食べてくれ、俺も急にガッツリは胃にくるからな」
「ユナも欲しいのもらったから、あとはルリお姉ちゃんが食べてくれる?」
という気遣いに、ルリはふわっと笑って頷く。
「それじゃ、ありがたくもらおうかねぇ………」
などという一幕の後、美味しくご飯を食べたのは言うまでもなかった。
そして、食後の休憩をした後、再び馬車は外周道路を走っている。
勿論、ナナと子供達は全員、再び姿見の中の住人となっている。
ちなみに、伴奏で左右を走っていた軍馬達も、姿見の中で休憩してもらうコトにしたリア達だった。
現在、軍馬2頭が馬車を曳き、周囲にシャドウハウンド達が囲むようにしてゆっくりと走っていた。
ルリとユナは、馬車の屋根に乗り、前後左右を警戒しつつもゆったりとしていた。
そしてリアはというと、例によって御者を務めるグレンの隣りから、外周道路から見える壁や建物などを嬉々として観察していたりする。
本当に、前世の馬達と違って、こつちの馬って凄いわよねぇ
足なんで、ズドッていうぐらい太くてしっかりしているし
馬体だって、全然大きさが違うモノねぇ~……まして、軍馬だし
などと、のんびりと周囲の観察をしていると、再び大型の魔獣が現われる。
眼前に出現したのは、ワニとトカゲを足したような姿の魔獣だった。
尻尾が身体の長さの2倍はありそうな個体だった。
へっ? ワニ? トカゲ? どっちかしら?
熊の次は、爬虫類なのぉぉ~……って、どっから来たのよっ
そうリアが思ったところに、ルリから声が掛かる。
「リア、アレも突然出現したよ」
ルリの言葉に、リアは顔を顰める。
うわぁ~……尻尾がやたらと長いけど、顔や身体はコモドオオトカゲっぽいわね
この距離であの大きさでしょ……軽く10メートルぐらいはありそう
勘弁してよぉぉぉぉ~……私は普通の冒険がしたいのよぉぉぉ~……
こんな狭い空間に、なんであんなモンが出現するのよっ
って言うか、龍帝陛下の第三の瞳を封じたトレント亜種? が居たんだから、ああいうのもアリなのかな?
にしても、大きすぎるでしょぉぉぉぉ~……って、うわぁ~…こっち見た
そんなコトを考えつつ、リアは落ち着いて言う。
「またぁ……ってコトは、何らかの空間亀裂が、いくつも出来ているってコトかな?」
首を傾げるリアに、グレンは苦笑する。
なにせ、残念なにコトに何処にも隠れる場所など無いのだ。
その上で、周囲を警護するシャドウハウンド達や、馬車を曳く軍馬2頭に気付き、獲物を見付けたと、ヨダレをたらしながら突進して来るのだから、たまったモノではない。
グレンは、しかたがなしに馬車を止めて問い掛ける。
「どうするリア?」
やり過ごすのは無理よねぇ~……これは、討伐しないとダメかなぁ…
……って、うそぉぉぉぉぉぉ~っ……あれの後ろに、まだ居るじゃないのぉぉぉ~…
ちょっとぉ~……何頭いるのよ…こうなったら、ガッツリと魔法使うわよ
ここは、討伐してダイエットよダイエット
大規模魔法を使えば、消費エネルギーが多いから、痩せるって書いてあったもの
とは言え、火魔法は危険だから、氷か土にした方が良さそうね
「取り敢えず、私が魔法で討伐するわ」
そう答えたリアは、まず、馬車中心とした結界に対して、物理防護を二重三重に掛ける。
リアが物理防御を掛け終わった時には、コモドオオトカゲもどきが、大口を開けて二頭の軍馬達の前に居たシャドウハウンドにかぶり付こうとする。
が、シャドウハウンド達は、リアの張った結界の中に居るので、見た目は何もない空間にぶつかって、ズダダダーンっと盛大に転がるのだった。
なまじ突進して来た運動エネルギーがもの凄かったので、最初の一頭は、リアが何もしていないのに、勝手に討伐されてしまったらしい。
気絶じゃなく、討伐されたと判断したのは、ひっくり返ったコモドオオトカゲの額から延びていた、もの凄く太く立派な角がポッキリと根元から折れていたからである。
「えっとぉ~……私、まだ何もしてないんだけどぉ~……結界に物理防護の魔法付与しかしてないのに………私のダイエットがぁ……ぶつぶつ…」
リアの嘆きに、グレンは呆れたように言う。
「リア、取り敢えず、本当に死んでいるんなら、その腕輪の中に収納できるんじゃないのか? その腕は生き物入らないヤツだろ」
グレンに言われて、リアは腕輪を掲げて、収納できるかどうかを試す。
「あのコモドオオトカゲもどきを収納」
と、リアが言えば、目の前で盛大に転がっていたコモドオオトカゲもどきは、一瞬で収納されてしまう。
「あははは………本当に、結界にぶつかって死んじゃったみたい………って、あの転がってる角も収納」
リアは、根元から折れた角も、ちゃんと回収する。
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