第109話みんなの食べたいモノは?



 一斉に時ならぬガッツリのオヤツをもらい、嬉々として食べているのを見て、ちょっと羨ましそうな顔を見せたルリ達三人に、リアはクスッ笑って言う。


 「それじゃ…私達もちょびっと休憩しよっか……なんなら、カラアゲとかローストビーフもどきなんかも出すよ」


 リアの言葉に、三人は嬉しそうに笑う。

 そして、何時も通り、ちゃっちゃとテーブルと椅子を出す。

 勿論、時空神様用のお供えのテーブルもパパッとスタンバイさせる。


 そんな様子に、リアはクスクスと笑って言う。


 「他にリクエストはある?」


 それに、すかさずグレンが言う。


 「あっだったら、俺は、あのソーセージってヤツ食べたいな」


 素直に食べたい言うグレンに、リアは頷く。


 「了解、ソーセージね……ルリとユナは? 何か出して欲しいのあるかしら?」


 ルリがちょっと考えてから、食べたいモノを言う。


 「だったら、アタシはトンカツってヤツが食べたいね……ガッツリと食べたいから、あと、コロッケも食べたいねぇ……」


 ルリの言葉に、リアは小首を傾げて問い掛ける。


 「出すのは良いけど、流石に重くない?」


 リアの言葉に、肩をひょいっと竦めて首を振りながら、自分のお腹を優しく撫でる。


 「どうやら…この胎の子達もやっと落ち着いてきたらしくてね…昨日あたりから、アタシからの吸収が激しくなって来ているんだよ…今までは、母体のアタシが餓死しないように生命維持の分だけで、成長の為の栄養吸収をするコトを極力搾っていたようでねぇ…」


 ああ、そうだよねぇ~………グレンと魂と身体が入れ替わっていたからねぇ……

 どうも、生餌なんて無理って……全然、何も食べていなかったみたいだもんね

 そっか、お腹の赤ちゃん達の為にも、食べないとだよねぇ~………


 「ああそうだよねぇ~………それじゃ、ルリの胃の負担にならない程度に…ちゃんと食べてね………お腹が空いたら、何時でも言ってね………人族みたいに朝昼晩って時間で食べているわけじゃないんでしょ?」


 と、いうか、この中で人族は私とグレンだけだよね

 でもって、グレンはルリと魂の入れ替えされていたから、痩せているのよねぇ

 ユナも言うコトを聞かせる為に、ご飯の量が少なかったようで痩せているのよね


 リアの言葉に、グレンがポリポリと顎を掻いて、素知らぬ振りをする。

 生餌がダメで絶食したセイで、ルリの腹の子供達に悪いコトしたなぁと、顔に書いているグレンに、ルリはフッと笑う。


 「グレン、あんたは気にしなくて良いんだよ……悪いのは、アタシ達を実験台にしたあの呪術師だからね………見付けたら、容赦しないよ………その為には、しっかりと食べて身体を整えておかないとねぇ~……グレンだって、復讐はしたいだろう……その為にも、ちゃんと食べて、万全にしときな」


 ルリの言葉に、グレンも悍ましい実験台にしてくれた恨みがぶり返す。

 が、そのお陰でリアに会えたので、結構、呪術師への恨みを忘れていたグレンだった。


 「ああ………とは言っても、のど元過ぎればかなぁ? あんまり…どうでもよくなっているわ…ただ、やっぱりちょっとは仕返ししたいけどな」


 グレンの言葉に、ルリは苦笑する。


 「まぁ~ねぇ~…リアに出合えたからねぇ~………でも、それとこれとは違うよ…ケジメはつけとかないとねぇ………放置したら、どれぐらい被害者が出るか判らないからねぇ………面倒っちゃ面倒だけど、見付けたら処分しておかないとね」


 リアはルリの魔獣帝という称号を思い出して苦笑いする。


 私の言葉で、ルリは自分が魔獣の頂点に立ったコトを知って、義務と責任を感じたのかな?

 きっと、この世界の調和の一端を担うモノになったコトを無意識に自覚したのね

 でも、それが私が主になったのが原因って言うのが解せないんですけどね


 何にしても、正体不明の呪術師は困るわね

 魂を扱うなんて、神の領域だって言うのに………

 禁忌以外のなにものでもない


 まぁ~…第三の瞳の宿主になった私が言うのは微妙かもだけどね

 それでも、私自らが手を出して、欲望を元に取り込んだわけじゃないし

 じゃなくて……ああ…なんか色々と脱線しているわ


 取り敢えず、全部棚上げで、無かったコトにしたいわ

 なにより、私は、この後も、この古代遺跡の探検して楽しむんだから

 ヒロイン枠は御免だけど、イベント踏破はしたいのよねぇ


 ちょっと話しと思考がズレたなぁと思ったリアは、2人をポイっとして、ユナに問い掛ける。


 「それで、ユナは何が食べたいかなぁ?」


 リアに話しを振られ、ユナはニコニコしながら言う。


 「えっと…ユナはねぇ~……ミルクアイス…あと、パンケーキも食べたい」


 瞳をキラキラさせながら言うユナに、リアはその頭をナデナデしながら頷く。


 「そっか…それじゃ、今言ったのを出すわねぇ……ユナは、時空神様に捧げる為の取り分けしてくれかなぁ?」


 「うん」


 ユナの良い子のお返事を聞いたリアは、まず自分が口にしたカラアゲとかローストビーフもどきを出す。

 次に、グレンがリクエストしたソーセージ各種を十本ずつ出す。


 そして、ルリが食べたいと言ったトンカツとコロッケ数種を人数分+時空神様用を出す。

 勿論、ユナのリクエストのパンケーキにミルクアイスを添えたモノも人数分と時空神様の分を出す。


 勿論、お酒類はないが、果実水とお茶とナナのミルクなどを出した。

 それを、ユナが時空神様の分を取り分けて、専用となったテーブルに置く。


 ユナが時空神様用の捧げ物を供えたのを確認し、リアはソッとハンバーグとサイコロステーキを、ソソッと追加で添えてから声をかける。


 「時空神様、温かいうちにご賞味ください」


 第三の瞳の宿主になった時、あの一瞬、時空神様から要求されたのよねぇ

 もっと、色々と食べたいって………

 異世界のご飯って、美味しいモノばかりだって言ってたし………


 私と違って、太る心配ないんだし、良いよね

 ルリにしろ、グレンにしろ、ユナにしても、みぃ~んな痩せているしねぇ

 数日飽食したって、そう簡単に太らないよねぇ


 ああ、色々と食べたいけど、全部は無理だから、チョビ食べしよう

 下手に食べなかったりしたら、みんな遠慮しちゃいそうな感じだしね

 ダイエットの基本は食べ過ぎないと、動くコト


 そして、最大のタブーは、やせ我慢して、食べないコトなのよねぇ

 いきなり減らすのは、身体にも負担がかかるから………

 みんなと同じモノを、少しずつ食べるのが一番よねぇ


 テーブルに用意された自分の席に座り、食べる前の挨拶をする。


 「いただきます」


 「「「いただきます」」」







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る