第108話熊型魔獣はみんなで分配
リアが全頭の頭を撫でて、怪我を癒したシャドウハウンドとユナのところに戻ったところに、暴れてすっきりしたルリが戻って来た。
勿論、獲物として、討伐した熊型魔獣を軽々と背負って来たコトは言うまでもない。
馬車に張った結界ギリギリまで熊型魔獣を運んだルリは、一瞬で半獣人と化して、ルンルンでリアの元に戻る。
当然、リアに懐いていたシャドウハウンド達は、スススゥーっとさがって、耳を寝かせて尻尾は股間に隠し、ほぼ全頭が伏せをして動かなくなる。
「ただいまリア、あの熊こうは討伐したよ……消えなかったから、この『ダンジョン』で生成された魔獣じゃないのかもねぇ………アタシャ…てっきりここの『ダンジョン』の防衛のひとつとして、アタシ達のところに送られたと思ったんだけどねぇ………」
ルリの言葉に、ユナと一緒に治癒魔法を掛けたシャドウハウンドを撫でていたリアは首を傾げる。
えぇ~とぉ……それって、やっぱりおかしいってコトだよね
もしかして、なんか空間に歪みがあるってコトと違う?
まぁ~…元龍帝陛下の第三の瞳なんてモノが封印されて在ったぐらいだしねぇ
「それって、単なる空間の歪みで、どこか別のところから来たってこと?」
あのトレント亜種? だって、ちょっとどころか、かなりおかしかったみたいだし
この古代遺跡の外周道路周辺に、ポコポコと落ちて来るのは困るわねぇ
ただ、吸収されないからって、外からっていうのはちょっと微妙よねぇ
可能性としては、大量流出のスタンピードではないけと、個体流出かなぁ?
この外周道路がその境目なのかもしれないわねぇ………
だから、外周道路の外側だと、倒しても消えないで全部残るのかもしれないわね
リアの言葉に、ちょっと考えるフリをしてから、ルリは考えるコトを放棄して型を竦める。
「ああ、たぶんそうじゃないかなってだけだけどね…可能性のひとつだね……ドロップもしないで、まんまだったんでね……ところで、あの熊型の魔獣、どうする?」
ルリの言葉に、リアは首をウリウリと何度も傾げる。
ふむ…確かに、ドロップじゃなくてまんまなんだよねぇ
じゃなくて、どうしようかなぁ?
毛皮とかを引っぺがすとして………他に使い道はあるかしら?
「あの熊型魔獣……毛皮以外に使えそうなところあるのかしら? 熊っていうと、毛皮と熊肉と熊の胆ぐらいしか思い付かないんだけど」
リアの言葉に、グレンが提案する。
「だったら、それだけ回収して、残りはシャドウハウンド達にでも食べさせちまうか? 俺、熊肉はあまり好きじゃないんだよなぁ……クセがあるからさぁ………」
グレンの言葉に、ルリも賛成する。
「アタシもあんまり食べたいって思えないねぇ~………首ちょんぱした頭と、毛皮に熊の胆と魔石だけで良いんじゃないかな?」
グレンに賛成というルリに、ユナが手をあげて言う。
「はいはい……ナナちゃん達と軍馬ちゃん達にも、お肉のおすそ分けした方が良いと思う………ほら、ちょっと恨めしそうな瞳しているから……シャドウハウンド達ばかりズルいって訴えているから………」
ユナの言葉で、リアは軍馬達を振り返ると、期待を込めた瞳にぶち当たる。
あららら………そう言えば、この世界の馬って、雑食で肉も食べるんだったっけ
前世の馬達みたいに、デリケートじゃなかったわ
それじゃ、それはルリとグレンにお任せしちゃおう
「そう…なら、グレン、ルリ、悪いけど、適量で満遍なく分けてあげてくれる………私も、熊肉を食べる気ないから………」
リアの言葉に、グレンとルリが頷く。
「ああ……了解」
「わかったよ、リア」
グレンとルリは、すぐさま結界外へと向かいながら、冒険者ギルドで買い取りしてくれる、牙や角、心臓や熊の胆などの希少部位をまず取るコトで合意する。
そして、リアの隣りで自分達を見ているユナに、グレンは振り返って声をかける。
「ユナ、マジックポーチにしまうモノもあるから来てくれ」
同じように振り返ったルリは、リアに注意をする。
「リアは、御者台に戻ってな」
ルリの言葉に、リアは肩を竦めて、いそいそと御者台へと戻る。
ユナは、タタッとグレンとルリのもとへと向かう。
言うだけ言った2人は、さっさと結界外に置き去りにした熊型魔獣へと向かう。
そこまでの距離がある訳ではないので、さっさとデデーンと転がっている熊型魔獣を転がした場所に到着する。
そして、ユナがほんの少し遅れて到着すると、さっさと首をザシュッと一撃で切り落とす。
ちなみに首を切り落としたのは、グレンである。
「う~ん…ちょっとこの剣だとこういうの切るには合わないなぁ………後で、解体用の一本……いや、予備込みで三本ぐらい用意しないとなぁ………」
などと言いながら、熊型魔獣の解体を始める。
勿論、血液も色々な用途に使えるので、ユナが上手に壷へと詰め込んで居たりする。
切り落とされた首を、次の瞬間ちゃんと回収しているユナである。
そんな様子をぼぉ~っと見物しながら、リアは首を傾げていた。
えっとぉ~…冒険…というか…洞窟…その先の古代遺跡の探索ってこんなもんなの?
前世知識だと、もっとこう『ダンジョン』とか『迷宮』とか呼ばれ場所って大変だった気がするんだけど?
戦力を考えるとオーバーキルなんじゃないかしら?
まぁ…安全に、楽しめるならなんでも良いんだけどね
自分から危ないところに近付くつもりは無いんだけどねぇ
なんでか、気が付くと巻き込まれているのよねぇ……はぁ~…
こういうの、強制力って言うのかしらねぇ?
まぁ…称号に、厄介な『ヒロイン枠に、大きく踏み入りし者』なんてのあったし
予定調和的に、そういうイベントに持っていかれるのは御免なんだけどなぁ
だからって、見て見ぬふりできるほど、冷徹なつもりないから………
ここは、私に出来ることはするけど、無理はしないくかないわよねぇ
そんなコトを考えてい居る間に、さっさと解体に腑分けまでして、冒険者ギルドに買い取りに出すモノと、エサになるモノを分けて、さっさと分配を始めるのを見て、リアは慌てて姿見を出して、ナナ達全員を出す。
ご機嫌で出て来たナナ用の器に、熊肉その他を入れて、ササッとグレンが配って行く。
勿論、子供達ようにそれぞれ、子ウクダ達用、レオ用、グリ用と分配する。
軍馬達には、ルリがひょいひょいと器を運んでいた。
シャドウハウンド達は、最初の時と同様に、三頭でひとつの器で与えられていた。
きちんと分配が終わるまで、軍馬からグリまで、ちゃんとお座りしてリアの許可の号令を、ヨダレを垂らしながら我慢して待っていた。
「リア、こっちは分配終わった」
「おう、俺の方も終わった」
「ユナも配り終わったよ」
三人からの言葉に、リアはクスッと小さく笑う。
「はぁ~い、みんなおまたせぇ~…食べて良いよぉ~……OKだよぉ」
リアの許可の言葉に、みんな一斉に食べ始めるのだった。
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