第103話第三の瞳は第三の瞳のようです



 こころの中で思いっきり叫んだリアは、腕の中に抱きかかえた、わりとずっしりとする物体に、ハッと意識を取り戻す。


 ありゃりゃ~……もしかしなくても、意識が飛んでたのかなぁ?

 じゃなくて、コレってやっぱり、あの龍帝陛下の第三の瞳なんだよねぇ~……

 見掛けや大きさを考えると、かなり軽いよねぇ~………じゃないでしょ、私


 この第三の瞳に反応して、ほんの一瞬とはいえ、龍帝陛下が覚醒めたんだから

 あげくに、トレント亜種? から、強引にむしり取ってくれたんだし

 まぁ~…そのお陰で、わりかし簡単に討伐できたのは、確かな事実だけどね


 じゃなくて、これって………もしかしなくてもぉ………

 私のお腹の中で眠る龍帝陛下の御霊に、第三の瞳も反応したってコトかな?

 それなら、さっきの映像の理由も……認めたくないけど、納得はできる


 ようするに、この第三の瞳が見たモノだったのかもしれないってコトよねぇ

 そう言えば、隠しミッションイベントが色々とある、乙女ゲームだったわねぇ

 たしか……『龍帝陛下の珠玉』なんていうモンあったわね


 こうなってくると……どっかの死神の王様みたいなモンもあったりして

 そう、こういう古代遺跡とかに、龍帝陛下の手だとか足なんかもありそうだわ

 はぁ~…こうなったら……乙女ゲーム的なモンは…全力でスルーしてやる


 取り敢えず、コレは抜け殻と一緒に放り込んでおくしかないかしら?

 それでも、もし龍帝陛下の身体の一部とかが封印されていたら………

 やりたくないけど、ちゃんと回収するしかないわよねぇ


 だって、龍帝陛下の身体の一部なんて、人族が扱うには危険すぎるモノだもの

 まったく、誰なんでしょうねぇ~……はた迷惑なコトしてくれるのは……はぁ~……

 いや、だいたいは想像つくんですけどねぇ~……


 私のお腹の中にある、龍帝陛下の御霊を御霊移しした陽の精霊王の靈石が存在する

 ということは、きっと、堕ちた陽の精霊王の神子も存在しているでしょうねぇ

 そして神子を、巧妙にそそのかしたモノがいるのも確かでしょうねぇ……はぁ~……


 元・陽の精霊王の神子自身が、そういう性質だとは思わないのよねぇ………

 そして、私という前世の記憶持ちがいるコトを考えればねぇ……ふぅ~………

 前世でも、いたモノねぇ~…なんで、そういう思考になるのか? っていう人


 自分だけが可愛くて、全てにおいて、自分が優先されるのが当たり前

 他人の嘆きほど面白いモノは無いっていう性悪

 お局様なんか、ものすごぉぉぉぉ~く可愛い性格って思える、究極の我が儘な人


 思い付くだけで、それだけ該当する人居たものねぇ………はぁ~……

 前世の私でさえ、そういう人を見たコトあるくらいだもの

 そんな、存在自体が迷惑な人が、記憶を持ったまま、こっちに転生していたら………

 嗚呼、考えたくないわぁ………はぁ~………


 この世界にも、私と同じように前世の記憶を持っている人……居そうだしなぁ………

 その上で、私はヒロインだから、何をしてもOKなの💛なんてのが居たら最悪だわ

 そういう記憶持ちの、とんでもちゃんとは絶対にかかわりあいになりたくないわ


 溜め息しか出ないリアは、ヒロイン枠のイベントは全力スルーをこころに決めつつも、龍帝陛下に関連するモノは、できる限り回収しようと思うのだった。


 御霊の他に、抜け殻となった本体さえ、手に入れているリアは、そのコトがどれだけもの凄いコトか気付かずに、腕の中の第三の瞳を見下ろして呟く。


 「流石に、ユナに吸収させるなんてコトできる代物じゃないわよねぇ……ルリで無理っていうぐらいだし……コレどうしようかしらねぇ~………もっとコンパクトなら良かったんだけど……」


 なんて言うコトを呟いたリアの言葉に反応したかのように、シュルシュルっともの凄い速さで縮み、ウズラの初玉と変わらないぐらいに収縮するのだった。

 そして、ヒュッとリアの掌の中から飛び出して、その額にペタッと張り付き、さもソコが自分の居場所だとばかりに、潜り込むのだった。


 本当に、一瞬のコトだったので、誰も動くコトができなかった。

 額に飛んで来たが、当たった感じもなく、なんとなぁ~く額に温かいモノを感じるなぁ程度しか感じなかったリアは、きょとんとする。

 が、周りにいた者達は大慌てする。


 「「リアっ」」

 「リアお姉ちゃんっ」


 「えっ?」


 ルリやグレン、ユナがワタワタすると、シャドウハウンド達もなにごと?と慌てて周囲に鋭い視線を走らせてグルルっと唸る。

 シャドウハウンド達にすれば、リアは大事な主人(=勝手に、自分達の主だと認定している)なのだ。


 あわあわする三人に小首を傾げてリアは、ほけほけと考える。


 えぇ~とぉ………もしかして、みんなが私の額を見て騒いでるのってぇ………

 ちっちゃくなったのが飛んで来たけど、私の額に張り付いたの?

 別に、痛みとか、なぁ~んにも無いんだけどぉ~………


 そうすると、このなんとなく温かいのって、第三の瞳のセイでしょうかねぇ~…

 でも、ただ単に張り付いただけで、そんなに騒ぐもの?

 …………ルリもグレンも、ユナまで、何をそんなに…………ぃぃぃたぁぁ~………


 ズキンッというもの凄い痛みを感じたと同時に、妙な映像がもの凄い速度で流れて、リアは思い切り目眩を起こして倒れる。

 が、グレンがサッと抱きとめて、リアを抱き上げ、馬車へと向かう。


 ルリは周囲に危険が無いコトを確認し、シャドウハウンド達に馬車と軍馬を護るように待機するコトを命令してから、グレンを追い駆ける。


 ユナは、グレンがリアを抱き上げた段階で馬車へと走り、ドアを開けてリアを抱えたグレンが馬車へと入りやすようにする。


 勿論、ささっと中に入り、倒れたリアを寝かせられるようにしたのは言うまでもない。


 意識がブッツンしてないけど、目眩がもの凄いわ

 それに、妙に気怠いのってなんでかなぁ?

 コレ、あの時に似ているわぁ~………


 残業三昧になった、魔の三日間

 クライアントがもの凄く性格が悪くて、やり直し何度もしたっけ

 お局様でさえ匙なげて、私に押し付けたのよねぇ~………はぁ~……


 ものごっつ美形なクライアントだったから、みぃ~んな群がって………

 結局、仕事は私の方に回されたのよねぇ………

 残業代と、特別手当は嬉しかったけど、アレはキツかったなぁ………


 あははは………なんか、もの凄くいっぱいの魔法陣だわぁ~………

 んん? …あれ? コレ見たコトあるわ………

 って、龍帝陛下に使われていたのもかなりあるわねぇ………


 ああ、知識がどどっと雪崩れ込んで来て、対応しきれなくてブレーカー落ちたんだ

 今の私の身体って、そういう状態ってコトでしょ

 う~ん……痛みは直ぐに無くなったのに、まだ、目眩がおさまらないんですけど


 取り敢えず、目眩が落ち着くまでここでおとなしくしておくしかないかなぁ

 ああ、まず確認しておかないとねぇ………はぁ~…めんどい

 他者から見た状態を知りたいし、聞いてみるのが一番ね


 「グレン、私の額に張り付いた第三の瞳ってどうなっているの?」


 リアの言葉に、グレンはそのまま言ってイイものかと、ルリとユナへと視線を振る。

 その視線を受けて、ルリは端的に事実を言う。


 「リア、あんたの額の中におさまっているよ」


 言われて、気怠さのあるリアは、確認するように額へと指を持って行く。









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