第95話なんか色々と入っているようです



 宝箱からの取得物は、取得した者のモノの権利だと言うルリやグレン。

 そして、何の躊躇いも無く、セシリアの取得したモノとして、お気楽に中身は何が入っているかなぁと言うユナ。


 セシリアは、改めて前世の乙女ゲームを模倣したような世界設定の、今世の世界が前世とかなり違うコトを実感する。

 この世界で生まれ育ったとはいえ、記憶が存在するコトから籠の鳥で、常に魔力を搾取され続け、虐げられてきたセシリアに、一般常識というモノはなかった。


 う~ん…前世の知識や常識に、とらわれる必要な無いってところでしょうか?

 とは言え、この世界の一般的な国民が持つような常識すら無いんですよねぇ

 ああ…本当に基礎的なモノすら知らない、物知らずなのよねぇ………


 ほんとぉ~に、あの『夢の翼』に出合えたのは幸運以外のなにものでもないわね

 お陰で、グレンやルリやユナと一緒に居られるものねぇ~……

 ペット枠には、レオやグリやナナに子ウクダちゃん達もいるしねぇ


 じゃなくて、ナナと子供達も、あとでお外に出してあげないとね

 こういう洞窟の中とか、そこにある『ダンジョン』は、時間の感覚がわからないのよね


 そう言えば、この世界に時計のようなモノはあるのかしら?

 王城や神殿には、一応時刻を知らせる魔道具があったのよねぇ

 すっかり忘れていたけど、冒険者用ってあるのかしら?


 『夢の翼』に色々と、冒険に必要なモノを買い込んでもらったセシリアだったが、時計らしいモノは買ってもらった覚えが無かった。

 それ以前に、彼等が時計らしきモノで時間を確認している様子など、見たことも無かった。


 あれ? 記憶に無いわ……って、もしかしてぇ~…時計って高いのかしら?

 考えてみたら、王城のも神殿のも学院のも、大きなモノだったわ

 国民には、鐘を鳴らして知らせていたような気がする


 あら…あらあら……いや、もしかして、携帯するような時計ってないのかしら?

 いや、私が知らないだけで、魔道具としてならあるかも知れないわね

 私の未来の王太子妃候補の品格維持費は、王妃様に使い込まれていたから………


 そういう意味では、私の私物ってほとんど無いのよねぇ

 まして、追放だって言って、私が身に付けていた装飾品は取り上げられちゃったし

 今耳に着けているのは、砂漠の地下の古代遺跡で発見した宝箱からのだしね


 ちょっと思考が堂々巡りしたセシリアは、とりあえず危険は無さそうだと、大きく口を開いた魔法の革袋へと、手を入れてみる。

 勿論、何かあった時の為に、利き手じゃない左手の指先を魔法袋の開いた口へと入れてみた。


 セシリアが魔法の革袋に指を入れると同時に、その指先に、スイッチを入れた掃除機の先に指をかざした時のような、何かを吸い込むような吸引力のようなモノを感じた。


 え~とぉ………もしかしなくても、使用には魔力が必要ってコトなのかしら?

 わりと長期間使用されなかったので、充電切れならぬ魔力切れってコトかもしれない


 セシリアは、魔法の革袋の口から魔力が吸い込まれるような感覚がおさまるまで、あえて魔力を吸わせるのだった。


 もしかして、個人用に設定されていたモノかもしれない

 けど、長期間使用されなかったコトで、魔力が切れして勝手にリセットされたのかも

 魔力枯渇期間が長くて、バグって強制リセットされたのかもしれないわね


 この魔法の革袋って、魔石が使われている感じがしないんですけど

 粉末にして付与に使用されているのかしら?

 錬金術って奥が深いモノらしいですものねぇ


 前世のラノベやネット小説でも、錬金術師の無双モノがあったモノね

 魔法使いとか魔術師とか、筋肉は裏切らないって言う脳筋系もあったわねぇ

 私のメンバーには、脳筋系は居ないわねぇ……グレンだって魔法使うし


 などと思っている間に、魔力の吸引が一度停止すると、微妙な音が脳裏に響く。


 ピッピッピッ………ピロンッ…


 □□□□…○○○○が……◇◇◇……しま…か… **/☆☆☆

 

 あらあら…なにかしら? なんか文字らしきモノが浮かんでいるけど

 ……って……やだぁ~…また、文字化けなんですか?


 でも、なんとなくだけど、後ろの二文字と三文字って、はいといいえっぽい

 なんだか分からないけど、ここは思い切って、二文字の方を選択してみましょう

 何事もチャレンジしてみないとね……ということで、二文字をポチッと


 と、イメージで押すと、再び魔力の吸引が始まる。

 同時に、頭の中にピロンッピロンッというゲーム音さながらの音がリズミカルに鳴り響いた。


 そのリズミカルなピロンッピロンッに重なって、別の良く似た音が脳裏に響くが、音が重複しているコトに、セシリアは気付かなかった。


 何故なら、たぶんに、はい、だろう文字化けの部分に、イメージでポチッとしたと同時に、魔法の革袋の中に入っているモノが、次々と脳裏に浮かび上がり始めたからであった。


 その間に、微かな文字で『〇〇〇が魔法の革袋の中に復元しました』というモノが、何回も表示され続けていた。

 が、脳裏に何度も点灯する文字を意識の外へとポイっとしたセシリアは、いまだに魔力が吸われ続けているので、首を傾げてい考えていた。


 ふむ…こういう錬金術師が作ったアイテムって、色々な付与があるんですよね

 その中の一説には、収納したモノを亜空間へと運んで保管するモノもあったわねぇ

 他には、空間を拡張するモノも……小説とかマンガなんかにあったわねぇ……


 それにしても、だいぶ魔力を吸い取られた気がするわ

 まぁ…魔法の革袋で復元なんてしているんじゃ…魔力を食うわよねぇ

 でも、そろそろ本気で吸引の停止をしてもらわないと不味い気がするわ


 そんなコトを考えている間に、いくつものアイテムがズラーと並んだ、そのスミに本当に薄く小さな文字で、休眠袋との連結終了という文字が何回も浮かんで消えたコトに、セシリアは気が付かないままだった。


 そんなセシリアは、この後かなぁ~りの時間が経過してから、事実を知るコトになる。

 そう、文字化けしていた二文字は、確かに、はい、であっていたのだ。


 ただ、文字化けして読めなかった文章は、同じ錬金術師が作ったアイテムボックスやマジックバックなどの類似品と、現在、保持している稼働品と連携しますかという主旨が書かれていたモノだったのだ。


 そう、セシリアがやけに長い間、ギュイギュイと魔力を吸引されたのは、同じように魔力切れしたコトで稼働を停止していたモノを、再稼働させた為だったりする。

 そして、連携したコトで、全ての魔法の革袋やアイテムボックスやマジックバックなどは、セシリアが持ち主として登録されたのだった。


 勿論、連結されているので、セシリアの持つ魔法の革袋から、他のモノにしまわれていたモノ取り出すコトが出来るのだった。

 そういう事実を知らないセシリアは、脳裏に浮かんだモノに、目を点にする。


 えぇ~とぉ……ご都合主義じゃないかしら?

 なんか…犬笛なんてモノが、入っているんですけどぉ

 それから、なんか…鍵の束とか……通行許可証…なんてモンもあるけどぉ


 もしかして、この古代遺跡の中のモノかしら?

 そうだったら、もの凄いご都合主義だけど、ありがたいわ

 取り敢えず、犬笛と鍵の束と通行許可証を取り出しましょう


 あとのモノは、またあとで検証すれば良いよね

 行き詰まった時に、この魔法の革袋の中身をあされば良いコトあるかもだしね

 それにしても、残念なコトに食べ物の類いは入って無かったようねぇ


 そんなコトを考えつつ、セシリアは魔法の革袋の中にあるモノを出す為に、掌を上にして、中身を出すイメージで犬笛と鍵の束と通行許可証を取り出したのだった。


 うん……使い方は、腕輪型アイテムボックスと同じねぇ


 セシリアは能天気に、そんな感想を持つのだった。


 







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