第94話あちこちに錬金術師のトラップがあるみたいです



 グレンが石突で叩き終わると同時に、重い音が響く。


 ズズズズッ…ガゴンッ……ゴゴゴゴォ……


 その音が鳴り止むと、馬車の前に大きな石棺が出現する。


 えぇ~とぉ……予想とぜんぜん違うモンなんですけど

 さて、どうしましょうかねぇ……不要に触るのもはばかれますし

 ここはやっぱり、ピアス型魔道具の鑑定具に頼るコトにしましょうかねぇ


 出現と同時にそう判断したセシリアは、鑑定魔道具に魔力を注ぎ込む。

 と、同時に、ここ最近で聞きなれた音が小さくなれ響く。


 勿論、グレンもルリもユナも、セシリアからの指示待ちで、何時でも動けるように待機していた。


 ピロ~ン………ピッピッピッ………


 石棺型ミミック(人造)

 錬金術師か、防衛の為に作った人造品

 許可証が無い者が、スイッチを起動させて通ろうとすると出現する

 討伐すると、通過は出来るが、多くの道が封鎖される


 「えぇ~とぉ~……アレは、人造のミミックだそうです……それで、作ったのはやっぱり錬金術師のようですね……なんか許可証がないのに、解放のスイッチを押すと、出現する見たいです…討伐すると、ここは通過できるけど……別の複数の場所の道が封鎖されるようになっているようです」


 セシリアからの言葉に、グレンは納得する。


 「ああ…なるほど……しかし…人造のミミックねぇ……あのシャドウハウンドを改悪した錬金術師と同じヤツかな?」


 首を傾げながら、ルリがヒョイッと馬車の屋根から降りて、一瞬で本体に戻ると同時に、軽く左手でワシャッと叩き潰す。

 と、石棺はものの見事にひしゃげて潰れる。


 うわぁ~…ルリってば…流石、災害級だねぇ


 錬金術師作の人造のミミックがひしゃげるとほぼ同時に、重い音があちこちで鳴り響く。


 ズシンッ……スズッ…ズンッ……ドン…ドン…ドドン……ズシンッ…ドォーン…


 その音で、あちこちが封鎖されたコトが分かり、なんとなくみんなで方を竦める。


 「まっ…通行証みたいなモン…どうやっても手に入らないだろうから…これはしょうがないな…取り敢えず、馬車で行けるところまで行くか?」


 と、セシリアに問い掛けるグレンに、ちょっと苦笑いを浮かべてしまう。


 「そうねぇ…ここがどういう機構を持っている場所かはわからないけど…行くだけ行ってみようよ…どの辺が封鎖されたかは、元の状態がわからないからなんとも言えないけど」


 セシリアが言えば、それが方針になる。

 何せ、ここで隷属のシバリが無いのは、セシリアひとりだけなのだから。


 「いいんじゃない………って、コトで、不法侵入と判断したモノに対して、それでも討伐報酬ってモンはあるようだよ……ホラ……」


 そう言って、ルリはセシリアに人造ミミックを破壊した後に出現した革袋を差し出す。


 「えぇ~…うそぉ…討伐の報酬? そんなモン…出るの?」


 そうムンクの叫びに近いポーズで思わず叫ぶセシリアに、ユナが小首を傾げながらも口を開く。


 「リアお姉ちゃん…たぶん…だけど…ここって…もう『ダンジョン』なんじゃないかなぁ…じゃなきゃ…微妙な境界線の上なのかもぉ……だから、宝物を落とすのかも……」


 そうユナに言われて、セシリアはなるほどと思う。


 ようする、あの石棺もこの場所に出現する前は『ダンジョン』化した場所にあって、その間に変質しているのではないかと推測して頷く。


 「うん…そうかもしれないね、ユナ……さて、この革袋には何が入っているのかなぁ?」


 ルリから手渡された革袋は、大きさにしてちょっと手提げ袋ほどの大きさだった。

 大きさで言えば、前世のエコバックくらいかしらねぇ?

 手触りは、見た目の通り皮なのね


 そんなコトを考えつつ、セシリアは何も考えずに革袋の口を簡単に開く。

 が、その中には何も入って居なかった。


 あら………ざぁ~んねん……何も入っていないのね


 そう思って、残念の溜め息が口から零れた時に、聞きなれた音が鳴り響く。

 

 ピロ~ン………ピッピッピッ………


 魔法の革袋(特級品・容量は王城がまるまる入る程)

 伝説とうたわれる錬金術師が弟子に作って与えたモノ

 プライドが高い弟子は、使わずに師匠の品として飾っていた

 盗難されて、ある血統の秘宝とされていた

 中身在中


 えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~……なんで…そんなモンがあるの?

 いや…まって……ここでも錬金術師なの?

 もしかして、この都市って錬金術師が多かったの?


 そういうモノを生産するのに向いた場所で、作り手達が集まった場所…とか

 いやいやいやいや………それよりも、何か中身が入ったままだったりするの?

 弟子に作って与えたけど……使わずに、飾っていたねぇ……


 飾っていたってコトは、弟子は未使用で飾っていたってコトよね

 それで、盗まれて使用された結果が入っているってコトで良いのかな?

 ラノベとかにある設定……特定の……え~と…なんだっけ…


 ああ…そうそう……たしか……紅血付与…とかいうのだったけかな

 血とか魔力とかで、利用者の登録するように設定されていなかったのかな?

 盗まれたって出たから、盗んだ人は普通に使えたってコトなのかな?


 そんなコトを考えつつ、セシリアは口を縛るヒモを解いた革袋の口を大きく開く。

 一応は警戒して、覗き込むようなコトはしなかった。


 「どうやら、コレは魔法の革袋らしいわ……それも、特級ですって……伝説とうたわれる錬金術師が、お弟子さんの為に作って与えたモノらしいわね」


 セシリアの言葉に、グレンは微妙な表情をする。

 勿論、ルリも首を傾げる。


 「「伝説とうたわれる錬金術師か(ね)」」


 2人の言葉に、頷いてセシリアは鑑定魔道具に出ていた内容を説明をする。


 「うん…ただ…そのお弟子さん…プライドが高くて使わなかったみたいなの……飾っていたら盗まれたみたいね……で、盗み出した人が使っていたらしくて……」


 途中で言いよどむセシリアに、ルリが首を傾げる。


 「うん? どうしたんだい?」


 その言葉に、セシリアは肩を竦めて躊躇った言葉を口にする。


 「あのね…どうやら…中身が入ったままみたいなの……たぶん、盗んだ人が入れたモノじゃないかな?」


 何か悩んでいるらしいコトに、グレンがピン時て言う。


 「誰の持ち物であっても、宝物や魔物から出たら討伐した者のモノだぞ……勿論、中身も全部な……そして、このパーティーのリーダーはリアだから、リアのモノだな」


 グレンの言葉に、ルリもユナも頷く。


 「そうだね、リアのモノだ」


 「良かったねぇ~…リアお姉ちゃん…良いモノ入っていると良いねぇ~……」




 

 

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