第93話古代遺跡の機能が復活しているようです



 「こうなると、この古代遺跡の機能がちゃんと起動していると考えてよさそうだな」


 グレンが戻って来たルリにそう言えば、ルリも同感だと頷く。


 「ああ、そのようだね……他にどんなモノがトラップとして仕掛けられているのかねぇ?」


 首を傾げるルリに、セシリアは小首を傾げる。


 う~ん……でも、せっかく古代遺跡に入ったんだし、ここは攻略の一択よねぇ

 ただ、まずは一周してどのぐらいの規模かを確認したほうがよさそうね


 「取り敢えず、このまま行けるところまで言って、どんづまりになって進めなかった引き返す……進めるなら進んで、出来れば一周ってところでどうかな?」


 セシリアの言葉に、ユナがにこにこしながら頷く。


 「それにさんせぇ~い……せっかくだから、進んでみようよ」


 楽しそうなセシリアの味方をするユナの発言に、ルリとグレンは肩を竦めて頷く。


 「それじゃ、そうするかねぇ」


 「ああ、取り敢えず、そうするか………んじゃ、ルリはまた馬車の屋根上から警戒を頼む……ユナはどうする?」


 セシリアの腰に抱きついているユナは、屋根上に戻る気が無いコトが見て取れたので、一応の確認の為に、グレンが聞いたのだ。

 聞かれたユナは、セシリアを見上げながら言う。


 「リアお姉ちゃんといたいけど……だめぇ?」


 と、甘えを含ませて言えば、ユナに甘いセシリアはクスクスと柔らかく笑って答える。


 「グレン、ユナが居ても大丈夫かしら? 軍馬ちゃん達への指示の邪魔にならないかしら?」


 ユナひとりが加わっただけで、手狭さを感じるほど狭くない御者台だけに、グレンはセシリアの問いかけに肩を竦める。


 「ぜんぜん大丈夫だぞ…余裕あるからな……かえって、ユナが身を乗り出すリアを、落ちないように抱き付いて居てくれるなら助かる」


 その言葉に、言外に好奇心のまま何度も身を乗り出して、落ちかけたコトを示唆するグレンに、セシリアは無意識に唇を尖らせていた。


 いいじゃない……ちょっとぐらい身を乗り出したって………

 グレンも、ルリも落ちないように支えてくれていたから、つい気が緩んだのよ

 ちょっと油断しただけなのにぃ……そんな風に言わなくて良いでしょぉ~……


 と、こころの中では思いつつも、やはりコミュ症は簡単に解消されるモノではなく、結局は口にするコトは無かったセシリアであった。

 ただ、その代わりに、ユナが言う。


 「危険なんて無いんだから…そんなに気にしなくても良いでしょぉ~……だって、リアお姉ちゃんってば、いっぱい保護系の魔法掛けているよぉ~……怪我してもォ…即時治癒とかぁ~…なんか飛んで来ても、防護魔法もかかっているしぃ~……」


 何重にも重複して掛けたモノは、いまだにかかったままらしいコトをユナが口にしたので、セシリアは思わず自分自身のステータスって確認できるのかしら?と初めて考えたのだった。

 ただ、ユナがあれこれと、セシリアの掛けた魔法のコトを言っているのを聞いて、何故かもの凄く不味いと思い、話しの切り替えにかかった。


 「と…取り敢えず…先に進もうよ………まだ、見て回りたいし…危なくなさそうなら、ちょっとだけ歩きたいなぁ~……なんて……」


 セシリアが歩きで見てみたいと言い出したコトで、ルリとグレンはサッと意識を切り替えた。


 「さて…んじゃ…出発するぞぉ……ゆっくりと進むから、それで我慢してくれな……マジで、何が飛び出てくるかわからないからな」


 「一応、周囲に危険な気配は無いよ……ただ、あの改悪されたシャドウハウンドのようなモンが居たらわからないけどね……取り敢えず、ゆっくりと進んで……トラップは起動させたから、もう大丈夫だろうけど……警戒はしといた方がイイね」


 「了解」


 その言葉と同時に、馬車がゆっくりと動き出す。

 そして、一連の間に、ちゃっかりとユナはセシリアが落ちたりしないようにと、太目の縄を持って来て、セシリアの腰に巻いて、御者台の日陰を作る為の柱に縛っていたのするのだった。


 あらあら……ユナったら……こんなコトしなくても、落ちないのにぃ………

 とは言っても、まだまだ私の身体は見事な墫ですものねぇ~……はぁ~

 ここ数日のドタバタで、少しは痩せたような気はするけどねぇ~……


 そう言えば、ネット小説にあったわねぇ~……

 自分の掌を見て、自分自身のステータスを確認するっていうのが

 ああやって、自分の掌を見たら、ステータスを見るコト出来るのかしら?


 そう言えば、あの『夢の翼』のみんなを最初に見たときはろくな情報出なかったわ

 というコトは、この世界では、数値化するコトは無いってことかしらね?

 まあ…それはいいわ…それより、遺跡よ遺跡……ああ…興味が尽きないわ


 この奥にあるのは、パルテノン神殿みたいなモノがあるのかしら?

 それとも、カンボジアにあるアンコールワット寺院みたいなモノかしら?

 できるなら、中にまで入って見てみたいのよねぇ……


 いや、外回りだけでもワクワクしているけどね

 ここの情報って何にも無いに等しいから、あの直立ワニさんに聞きたいなぁ

 もし無事に、グルッと見て回れたら、聞いてみましょう


 そんなコトを考えている間に、馬車は何事もなく2本の柱の間を通り抜けていた。


 やっぱり一度発動した直後は、なんの障害も無く通り抜けできるのねぇ

 このトラップって、あのシャドウハウンドを改悪した錬金術師の作品かしら?

 それとも、別の誰かが仕掛けたモノなのかしら?


 前世の知識の中には『ダンジョン』には『ダンジョンコア』というモノが在るって

 いや、全部ゲームやマンガや小説の中の話しだけどね

 イメージは、大きな魔石みたいなモノだったような気が……


 『ダンジョン』の最下層の最奥の壁に、核となる『ダンジョンコア』が埋まっている

 それが、一般的な…イメージかしらねぇ?

 あと『ダンジョンコア』には意思みたいなモノはあるのかしら?


 存在するとして『ダンジョンコア』っていうモノは、AIで学習型なのかしら?

 それとも、人族又はそれに類した種族の脳を使って作られたモノなのかしら?

 かなぁ~り古い…たぶん…マンガに、そんな感じのがあったのよねぇ……


 ああ……もの凄くもどかしいわ……タイトルがぜんぜん浮かばないのに……

 円柱形の培養液の中に、色々な配線に繋がれて浮かぶ巨大な脳のイメージが……

 頭蓋骨という限られた容量域から解放されて、巨大化するって話しもあったわね


 脳を保護する為の、培養液のコポコポっという幻聴まで聞こえる幻視を見たセシリアは、無理矢理に思考を別に持って行く。


 そう、脳にはもの凄い可能性があると…聞いたコトがあるような気がするわ

 前世での詰め込み学習って…後から役に立つ……って言われていたけどねぇ

 それが悪いってコトになって、今度はゆとり学習ってモノに教育方針が変わったけど


 ゆとり学習の世代の子達って、残念なほどスペック下がっていたのよねぇ……

 まぁ…前世の私が当たった子が、そうだっただけかもしれないけれど

 出来不出来の差が広がって…経済格差でも…学習能力の差が広がるって噂あったわね


 脳の成長過程に詰め込みをして、記憶の領域のキャパを出来るだけ拡げてある人達と

 無理に拡げずに成長した人とで、世代間格差が出ちゃったのはたぶん本当よねぇ

 ある意味でゆとりって子供達に変な余裕が出て、悪質なイジメも増えたようだしね


 まぁ~…御上の方針に、一市民が文句なんて付けられないけどねぇ……

 足引っ張られたなぁ~……コピーすら出来ないんだもの……はぁ~……

 オタクと呼ばれている子の方が、そういうの得意だったわねぇ


 ほぼ同時に入社して…コネありとコネなしでも……って………じゃないでしょ

 現実逃避しようと、もう、私はこの世界に生まれ変わっちゃったんだから

 ヒロイン疑惑があろうと、私は私、私の生きたいように生きる予定なんだから


 だいたい、今世の両親の記憶なんて、綺麗さっぱりと無いしね

 チートがあるなら使えるだけ使うわよ…そして面白おかしく生きるんだから

 なんて現実逃避している間に、またトラップ発見……んぅ~……


 「トラップ発見したよ……ってコトで、直ぐに停止して……」


 セシリアの言葉に、軍馬達はグレンの指示を待たずにピタッと足を止める。


 「うふふふ……本当に賢いわねぇ……じゃなくて、そこの壁のところに掘り込まれた…女性?をモチーフにした人の腕に抱えられている壷?のようなモノのところを、グレンが予備で持っている長ヤリの石突で突いてくれる……たぶん…三回かな? トントントンって感じで、リズム良く」


 セシリアの言葉に、グレンは長ヤリを手に取り、言われたように石突で突いた。

 

 

 

 


 



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