第13話定番設定と真逆な設定しかないでしょ



 「俺は『夢の翼』のリーダーぶ、デュバイン、剣士だ」


 そう言われたセシリアは、なんと答えたら良いか困る。

 先ほどは、やっと人影を見付けたコトで、声をかけてしまったが、前世ではかなりなコミュ症だった為に、何をどう言って良いか困って、ボソボソと答える。


 「えっ……と……私は……リア………転移魔法陣で………あの部屋にいたの………」


 セシリアの答えに、ちょっと不審そうに、もう1人の男の冒険者が言う。


 「なぁ……あんたさぁ……さっきなんかやったか?」


 その言葉に、セシリアは首を傾げる。


 言われた言葉の意味が理解らないセシリアは?を浮かべて、一般的な言葉遣いを心がけながら問い返す。


 「えっとぉー……なんかってどういう意味でしょうか?」


 その言葉に、追い付かれ、襟首を捕まれる寸前だった女冒険者が、補足して言う。

 


 「………私達追い駆けていたゴブリン達が、貴女が部屋から出てきたら逃げたわ」


 ちょっと疑いを持つような声音で言われて、セシリアは再び小首を傾げる。


 ん~とぉ……私は、何もしてないんだけどぉ………

 こっちに移動してから、そういう意味での魔法とか………あっ………


 そこに思い到ったセシリアは、三つ編みを留める為に使った装身具を付けた長い髪の端を見せて言う。


 「……た…ぶん……コレのセイ…かも………魔物避け(中)付いてる…から……」


 小さな青銀色の鈴が三つ付いている赤い髪飾り、鈴付き猫の首輪をチロッと見せる。


 そうすると、もう一人の女冒険者が溜め息混じりに言う。


 「貴女ねぇ………聞かれたからって、ホイホイそういう魔道具は見せちゃダメよ」


 その言葉に、同じように溜め息を吐いて、問いかけの補足をした女冒険者が同意する。


 「聞いた私が言うのもなんだけど、確かに、そういう魔道具は見せないほうが良いわ」


 「ソレ………たぶん、ミスリル使われているわよ………結構、高価なモノよ………」


 着けているセシリアが、価値が理解って居なさそうなコトを見てとり、そう忠告してくれる。


 「えっと…『鈴付き猫の首』って言う魔道具なのは知っているけど………高いの?」


 はっきり言って、すべてにおいて行動の制御をされていたので、一般常識てきなモノを知らないセシリアは、途方にくれる。


 ここは、ネット小説の定番的な設定でそれらしいコト言ってごまかそう


 「コレは……亡くなった母の形見なの………魔物避けだって教えられたの……」


 それから顔を上げたセシリアは、ちょっと考えて言う。


 「あの……私が…出て来た部屋に……入りませんか?……扉あるし………」


 セシリアの言葉に、4人は一瞬で視線を交わして頷く。


 「……そうだな……いくらあんたの…魔物避け(中)があるって言っても………」


 「効果が聞かない魔物は、追い払えないわよねぇ………」


 それに頷いてから、セシリアはハッとする。


 「あっ……あの…中に…宝箱ある……けど……魔物みたいだから…気をつけて………」


 とぎれとぎれに言うセシリアに、リーダーのデュバインが頷く。


 「了解……お前らも、勝手に宝箱に近寄るなよ」


 「「「了解っ」」」


 ハモって、取り敢えず、セシリアが出て来た部屋へと入るコトにする。


 と、2つのはずの宝箱が、4つになっていて、セシリアは首を傾げた。


 それに目敏く気付いた女冒険者が、セシリアに問い掛ける。


 「どうしたの?……あっ私はエルザ、ジョブは盗賊よ……で、どうしたの?」


 エルザの言葉に、セシリアは困惑気味に答える。


 「あの…宝箱…増えてる……2つだった……4つになってる………」


 セシリアの言葉に、全員が部屋の中の宝箱を見て首を傾げる。


 「エルザ、判別できるか?」


 問われたエルザは、腰のポーチから楕円の黄水晶を取り出して、魔力を込めながら確認する。


 「えぇ~とねぇ~……奥の2つ、左は魔物の擬態ね……赤いわ」


 セシリアは、エルザの持つ楕円の黄水晶不思議そうに見る。


 と、もう一人の女冒険者がセシリアの隣りに立って言う。


 「あれは、宝箱が魔物の擬態かどうか見破る道具よ」


 その言葉に、セシリアは首を傾げる。


 「たまに『ダンジョン』で発見されるのよ……そうそう私はカレン、魔法使いよ」


 名乗られて、セシリアはちょっと困りつつも頷く。


 「私……リア………継母に………呼び出されて………」


 セシリアの言葉に、もう一人の男冒険者が言う。


 「継母って………虐げられていたのか?」


 その姿で?というニュアンスに、セシリアはコクっと頷いて言う。


 「……その……『お残しは許しません』って………ギトギトのごはん………」


 継母と先妻の子イジメは、ガリガリが定番の継子イジメの真逆を口にしてみる。


 フード付きマントの上からでも、太っているの丸わかりだもの………

 もう、そういう設定で行くしかないじゃないの………


 「最初……ご飯もらえなくて……痩せた……お父様が……『痩せたな』って………」


 「ふむふむ…ご飯抜きして痩せたら、父親が娘の姿を不審に思って聞いたから………」


 「太るようなご飯しか出されなかったってコトねぇ……うわぁ~…悪質ぅ~……」


 と、確認の終わったエルザが、振り返って言う。


 「……んじゃ………下手に家に帰れないな……ヤバそうじゃん………」


 バウの言葉に、セシリアは頷く。


 「………妹が……良いところに…嫁ぐって聞いた………」


 セシリアの言葉に、カレンがありそうっという感じを滲ませて頷く。


 「だから、嫌がらせで太らせたリアが邪魔で転移させたってコトかしら?」


 それに頷き、セシリアはたどたどしく言う。


 「たぶん……でも…家…出るつもりだったから………このまま…逃げる……」


 その言葉に、デュバインが問い掛ける。


 「やり返さなくて良いのか?」


 「うん…妹の相手………良くない噂聞いた…妹…我が儘……身代わりなんてイヤ」


 「なるほどなぁ……ところで、リアさん…取り敢えず、宝箱はどうする?」


 たぶんに取り分の話しだと理解ったが、セシリアは首を振る。


 「あの……私には…無理だから……戦う…皆さんで分けて………」


 アタリもハズレもいらないと断って、セシリアは入って来たばかりの扉の側の壁際にススッと避ける。







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