第14話まさかのロマリス王国の古代遺跡のダンジョンでした



 壁際にセシリアが下がったのを確認し、4人は頷き合う。

 改めて、ここで出合ったセシリアと落ち着いて話す為にもと、4人は宝箱と擬態した魔物の討伐にとりかかった。


 セシリアは、4人が連携して宝箱に擬態した魔物を討伐するのを見ながら、自分が知らなければならないコトを内心で確認していた。


 まずは、現在の居場所を知らないとね

 それから、どうにかして奴隷を手に入れる


 あと、できれば身分証明書の為に、冒険者登録したいわね

 最低、それだけは必要よねぇ………


 現金としてのお金は持っていないけど………

 ここで手に入れた宝箱の中には、それなりのモノが入っているはず………たぶん


 取り敢えずは、現在地と冒険者登録ね

 奴隷を買うにも、身分証が必要かもしれないから………


 奴隷が手に入れば、お金のレートとか判ると思うし………

 それにしても、喉が渇いたわねぇ…お腹も空いたし………


 そんなコトを考えている間に、4人は宝箱に擬態した魔物を討伐し、アタリの宝箱を開けてキャッキャッとしていた。


 「おまたせぇ~………リアさん」


 嬉しそうなエルザの言葉に、セシリアはコクッと頷いて、取り敢えず、現在地だけでもと口を開く。


 「あの……それで、さっき聞いたんだけど………ここって、何処なんですか?」


 最初セシリアを警戒していた為に、新しくできたダンジョンだとしか答えて居ないコトを思い出して頷く。


 「そう言えば、新しい『ダンジョン』って話しはしたけど…何処かは言ってないわね」


 「此処は、ロマリス王国の防護壁の東門から出た先にある古代遺跡の端だよ」


 「つい先日だよぉ………ここに新しい『ダンジョン』が出来たのって………」


 「ちなみに、ここって1階部分なんだぁ~………」


 「まだ、正式にギルドの探索入って無いから、宝箱あるかもって………来たんだよね」


 と、教えてもらい、思わずセシリアは、こめかみを押さえる。


 よりにもよって、商業都市のロマリス王国ですかぁ…………

 遊廓とかあるから避けたかったのよねぇ………つーか、近いわっ


 もっと、遠くに跳ばされたと思ったのに………はぁ~………

 私を運んでいた男達は、たぶんだけど此処には来ていないと思うのよねぇ………


 取り敢えず、髪の色をかんがみて、私の出身はシルーク王国ってコトにしましょう

 身分証明書を造ったら、お別れするんだし………


 「そうですか………ロマリス王国………私は………シルーク王国出身です………」


 セシリアの言葉に、カレン達はふ~んと言う顔で頷く。


 「どうりで綺麗な銀髪だったものねぇ………あそこの国民に多い色よねぇ………」


 「ああ、シルーク王国って金色とか銀色が多かったよなぁ………」


 「ある意味で、こっちに跳ばされて良かったです………」


 「そうよねぇ……ロマリス王国って色々な人種が居るものねぇ………」


 「ああ、だけど人間至上主義だから、亜人にはキツイ国だ………」


 「リアさんに、忠告しとくな………」


 「下手に獣人とか同情して…警邏の奴らに目をつけられるなよ」


 「そうそう、あいつらって直ぐに難癖つけるからさぁ……きぃーつけな」 


 口ぐちにそう言う4人に礼を言って頷く。


 「ご忠告……ありがとうございます………気をつけます」


 はぁ~……ちょっとどころじゃなく気が重いけど………

 身分証は、必要だものねぇ……あと、水と食料は必須だし………


 ここから移動するにしても、一般常識もわからないから………

 もう、どうせだから聞いてしまいましょう………


 「あの…跳ばされたので、身分を証明するモノがないのです………」


 どうしたら良いのでしょうというニュアンスで聞けば、リーダーのデュバインが溜め息混じりに言う。


 「一番簡単なのは、冒険者ギルドで冒険者になるコトかな」


 「商業ギルドは………売り物になるモノがないと無理だしねぇ……」

 

 「薬師ギルドも……無理でしょ………」


 その答えに、セシリアは思わず溜め息を吐く。


 「えーと……その……身分証明書なくても、奴隷を買うとかできますか?」


 セシリアの言葉に、バウが何とも言えない表情で答える。


 「それこそ、モノによるぜ……良い奴隷は身分証明書と大金なけりゃかえないぜ」


 「ああ、そのかわり、獣人を含む亜人種系はエルフ以外は、金さえ有れば買えるな」


 デュバインの言葉に、セシリアはちょっと考え込む。


 ふむ………高望みしなければ、わりと簡単に買えるみたいね………

 しかし…エルフは高いみたいね………ゲームや小説の定番ね………


 「ねぇ……奴隷なんて買うの?」


 カレンの嫌悪を含んだ声での問いかけに、セシリアはハッとして答える。


 「私…閉じ込められてた……から……お金とか…よくわからないから………」


 庶民の常識にうといコトを前面に押し出しながら、セシリアは続けて聞く。


 「えっと……門…通るの……許可証とか…必要?……無い…どうなる?……」


 その言葉で、セシリアが跳ばされて来たコトを思い出す。


 「金払えば入れるけど……金の価値が理解らないんだよな」


 「うん………宝箱から………たぶん…宝石…手に入れたから……入れるかなぁ?」


 そう言いながら、フード付きマントの内側にポケットでもあるかのように、探るフリをして、小ぶりの宝石と魔石を6つ程出して見せる。


 「コレなんだけど………使える?」


 無造作に見せるセシリアに、全員が確かにセシリアには、完全服従の奴隷が必要だと感じた。


 「取り敢えず、出入口は俺達の新メンバーだってごまかしてやるよ」


 「だな、これも何かの縁だし……宝箱譲ってもらったしな………」


 「えーと、リアさん……まだ、この宝石ってあるの?」


 セシリアは、素直に頷く。


 「うん…ある……これで、奴隷買えるかなぁ?………」


 無防備すぎるセシリアに、全員が声をハモらせて言う。


 「「「「はぁ~…リアさんに奴隷は必要だ(ね)」」」」





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