第11話宝箱の下に転移魔法陣がありました



 自分が盛大にやらかしたと、理解った瞬間に脱兎のごとく走り出したセシリアは、10分ほど走ったところで、行き止まりに突きあたる。


 えっ……うそっ………行き止まり?………えぇぇぇ~どうしよう?


 視力強化していたお陰で、暗闇でも不自由なく走って来たセシリアは、バクバクいう心臓の上を右手で押さえながら、乱れた呼吸を整える。


 落ち着くのよ、セシリア………本当に行き止まりかどうか、わからないじゃない

 まずは、探索よ………RPGのゲームでも基本だったでしょ………


 それに、ここなら灯かりを点けても平気そうな気がする………

 勘としても、ここは大丈夫って言っている気がするしね………


 「取り敢えず、視界確保の為に『ライト』」


 自分を落ち着ける為に声に出してそう言えば、ポウッと小粒なリンゴほどの光り玉が浮かぶ。

 周囲を明るく照らす『ライト』の光り玉に、セシリアは視界を焼いてしまう。


 「………っぅぅぅぅぅ~……うぅぅぅ……失敗したぁぁ………」


 視力強化していただけに、両目に痛みを覚えて、セシリアは手の平で覆って『ヒール』を唱える。


 視力強化を解いて、痛みが引いたのを確認し、今度はソッと薄目を開けて周囲を確認する。


 「はぁ~……慌てるとろくなコトないわねぇ………」


 ひとつ大きく溜め息を吐いたセシリアは、首を振り、流れる銀糸の感触に心癒される。


 ああ……本当に、なんて綺麗な銀糸のような髪なの………

 うっすらと、青みすらある銀髪………凄い素敵だわぁ………


 膝裏まで流れ落ちている長い銀髪の手触りを楽しんだセシリアは、ハッとして手櫛で軽く梳いてから、行動に支障が無いように三つ編みにする。


 編み終わりのラストになって、セシリアは愕然とする。

 そう、前世では、何気なく使っていた髪ゴムというモノが無いのだ。


 セシリアは三つ編みの最後の部分を握りながら、どうしようかと悩む。


 んぅ~とぉ~………なんかそれらしいの宝箱になかったっけ?

 指輪みたいな感じの………髪に使えるモノ………ないかしら?


 セシリアはアイテムボックスの中を検索する。

 と、アイテムがズラズラと脳裏に浮かぶ。


 ふむふむ………こんな風に中身が判るのねぇ………っと

 あら、装身具のアイテムに良いモノがあったわ……良かったぁ………


 女性専用の髪飾り

 鈴付き猫の首輪

 魔物避け(中)

 俊敏値上昇(小)


 セシリアはアイテムボックスから取り出し、三つ編みの最後の部分を首飾りへと通す。

 と、音もなく首輪の輪が収縮し、ピッタリと髪を手頃に締め付ける。


 うん………これなら、髪飾りも落ちないわね………

 でも、名前が鈴付き猫の首輪って……微妙なネーミングよねぇ………


 まぁ…魔物避け(中)と俊敏値上昇(小)はありがたいわね

 取り敢えず、髪は三つ編みしたから、フード付きマントの中に隠しましょう


 出た場所によっては、銀髪も目立つ可能性あるし………

 ここからは、ちゃんとフードも被っていきましょう………


 何と言っても、ボリュームたっぷりの邪魔な金髪ドリルが無くなったんですもの

 これで、フードがちゃんと被れますわ………うふふ………


 気持ちが落ち着いたセシリアは、改めて行き止まりを確認する。

 と、キラキラのいかにも宝箱という箱とは違い、壁と同系色の宝箱が行き止まりの其処に鎮座していた。


 『ライト』の光り玉でも、よく良く観なきゃ判らなかったかも………

 こんな色の宝箱もありますのね………ゲームには無かったけど………


 大型アップデートで入った新しいモノなのかしら?

 それとも、この宝箱は魔物なのかしら?


 ああ、こういう時こそ、鑑定した方が良いのよね………


 セシリアは、耳の魔道具に魔力を流す。

 と、ピロ~ンッ………ピッピッピッという軽い音が耳元と響き、文字が浮かぶ。


 隠蔽されし宝箱

 看破できる確率0.001%


 へぇ~……ちゃんとした宝箱みたいね…罠も無さそうだし………

 いったい、何が入っているのかしら?


 首を傾げたセシリアは、そっと宝箱の箱の蓋に触れる。

 それに反応したのか、宝箱の蓋は勝手に開いた。


 えぇーとぉ……鍵も無くて、勝手に開くモノなの?

 じゃなくて、何が入っているのかしら?


 宝箱の中身は、不思議な布に包まれた何かが入っていた。

 セシリアは、その不思議な布を開いてみた。


 そこには、観るから原石と思われるモノから、綺麗に研磨されたモノまで、色々な色合いと大きさのモノが、ぎっしりと詰まっていた。


 あとで使えるかしら?まぁ…今は確認なんてする暇ないけど………

 そうね、宝箱ごと回収しちゃいましょう………『収納』………


 セシリアが心の中でそう唱えると、壁と同系色の宝箱はアイテムボックスへと吸い込まれて消える。


 さて、思わない場所で、余分な時間をくってしまったわね………

 とにかく、ここの出口を探さないと………


 とにもかくにも、何としても、外に脱出して遠くに逃げなきゃ………

 龍帝陛下を拘束封印し、精霊の靈石をあんなに集められる者なんて御免よ


 はぁ………考えると、ものすごぉ~くイヤんなっちゃうけど………

 私に埋められた魔封石と、龍帝陛下に埋められた魔封石を考えると………


 厄介ごとになるのは目に見えているのよねぇ………

 だから、できるだけ遠くに逃げて、まったりとスローライフしたいのよ


 って、良かったぁ……『収納』して正解だったわぁ~………

 まさか宝箱を退かした下に魔法陣があるなんて…………


 現れた魔法陣の上に乗り、セシリアは魔力を流す。

 と、ふわっと全身を包む温かいモノに包まれた次の瞬間には、また、別の空間に移動していた。


 良かったわ……やっぱり転移魔法陣だったわね

 さて、ここは何処かしらねぇ………外には出られて無いわね………


 どこかの小部屋に移動したらしいコトを見て取り、セシリアはグルッと周囲を見回す。


 ふむ………なんか、壁画の様式が違う気がするわねぇ………

 もしかして、別の古代遺跡へと移動できたのかしら?………


 どうか、私の知っている古代遺跡でありますように………

 移動時間はそんなに長くなかったような気がするから………


 たぶん、近場の古代遺跡だと思うのよねぇ………

 未発掘の魔物ひしめく、古代遺跡じゃないことを祈るわ………


 できるなら、ダンジョン化していない、盗掘済みの古代遺跡がいいわねぇ………

 盗掘済みだったら、罠とかほとんど解除されていると思うし………


 はぁ~……この部屋でグダグダ考えていてもしょうがないわね………

 とにかく、外の空気が吸いたいわ………お腹も空いたし、喉も渇いたもの………


 セシリアは、外に出る為に、小部屋の扉へと向かう。


 

  



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