いいわけ魔法の使い方

五三竜

平常運行で出てくるいいわけ

「なんで遅れたのよ!?」


突如そんなことを言われた。それに対していつもこう言う。


「悪い悪い。道に迷ったんだ」


「またそれ!次はなんの道に迷ったの!?」


「愛の道だ。お前の可愛さについ迷ってしまった」


自分は平気な顔してそんな嘘をつく。普通の人なら許さないだろうが、可愛いと言われた、女の子はつい許してしまう。


「もう♡許してあげるんだから♡」


それを聞いて小さく笑う。


そう、これがこの男の能力だ。いいわけ魔法、どんな事でも適当ないいわけを言い許されるという魔法だ。


「そうだ、今日はあれ持ってきたの?」


「あれ?」


「そうあれ。光の剣よ」


そう言われて急に固まったかのように動かなくなる。そして、黙り込んでしまった。


多分、いや確実に忘れたのだろう。


「あるよ」


「え!?嘘!?」


男から出た言葉につい驚いてしまう。いっつも持って来ないし、言い訳ばっかりだからちょっと期待する。しかし、何も出さない。


「あれ?出さないの?もしかして無い?」


「フッ、あるよ。無いという事実がここにね」


そう言われて何も言えなくなる。良くもまぁこんな言い訳が思いつくものだと感心したいくらいだ。


「じゃあもしかして、ガラスの刃は?忘れたの?」


「いや、あるよ。ほら」


そう言って取り出したのはバラバラに砕けたガラスの破片だった。


「え?壊れてる?」


「悪いな。ついお前のことを考えてたら踏んでしまった」


再び呆れる……のかと思いきや、自分のことを考えていたと言われ何故か嬉しくなる。


「ん?待って、じゃあなんでこの魔の森に来たのかわかってる?」


「あぁ、わかってるよ」


自信満々で言う。それが逆に怪しい。


「言ってみて」


「フッ、簡単な事だ。俺の意思がここへ導いたのさ」


やっぱりそんなことだろうと思った。


「本当に凄いよ。よくそんなに言い訳が言えるね」


「それが俺だからな」


「言い訳していいわけなの?」


その一言でその場が凍りついた。

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