第18話 冒険者ギルド


 アッカムの街滞在4日目。

 俺たちは、大衆食堂で飯を食ったあと、冒険者ギルドへ行こうということになった。

 冒険者ギルドには、日々いろいろな困りごとが持ち込まれて、クエストとして張り出されている。

 迷子の子猫探しから、ドラゴン退治まで、その内容は様々だ。

 だが、とりあえず困っている人はギルドに依頼をする。

 困っている人を助ける目的の俺にとっては、ギルドに行くのが一番てっとりばやかった。

 クエストは、街によっても様々だからな。

 もしかしたら、緊急クエストとかが張り出されているかもしれない。

 そうなったら、俺の出番だ。

 

 俺たちは冒険者ギルドへやって来た。

 アッカムの街の冒険者ギルドは、フィルフィラメントとは違い、少し治安が悪い雰囲気だった。

 いかにもな荒くれものたちが、ビールを片手にくつろいでいる。


 冒険者ギルドに入った俺たちに、難癖をつけてくるやつがいた。

 ハゲ頭のいかつい冒険者が、こちらに近づいてくる。


「おいおい兄ちゃん、ここはあんたなんかの来るところじゃねえぜ?」

「なぜだ? 俺はただクエストを受けに来ただけだがな」

「ふん、よそ者は消えな。お前みたいなひょろいガキ、ここじゃドラゴンの餌食になるだけさ」


 まるで善意からそう言っているのかのように、男は俺にそう言ってきた。

 もしかしたら、雑魚が死なないように忠告してあげているのかもしれない。

 やさしいお兄さんだ。

 だが、俺には不要な忠告だ。


「いや、大丈夫だ。俺は全身をUR装備で固めている。そんじょそこいらの敵には負けないさ」

「は……? ぎゃはははははおいきいたかお前ら! こいつはいうに事欠いて、全身UR装備だとよ! そんな大ボラも大概にしろよ! そんなのあり得るわけねえだろ!!!!」


 男は仲間たちに振り返り、大笑いした。

 

「まあ、信じないならなんでもいいけど……。そこをどいてくれないか? 俺も手荒なまねはしたくない。面倒はごめんだ」


 俺は少し強い口調でそう言った。

 これ以上こいつらに時間をとられるのも無駄だ。

 こんなやつらにこびへつらってやるのも癪だしな。

 ここは強気にはっきりと言おう。


「は……? 嫌だね。なおさら嫌になったぜ。UR装備だとかつまんねぇ嘘つきやがって、お前みたいなイキったガキが一番嫌いなんだよ! さっさと失せろオラ!」


 男はそう言うと、俺の鎧に剣で攻撃してきた。

 もちろん、そのくらいで俺は倒れない。

 しかし、男はかなり本気で斬りつけてきた。

 俺も、そんなことしてくるなら、容赦はしないぞ?


 ――キン!


 男の刃が、俺の鎧に弾かれる。


「……っへ、へへ……俺も本気で斬りつけたんだがな……、倒れないとはなかなかやるじゃねえか。いい度胸していやがる、ま、まあここはこれに免じて許してやってもいいがな。まあ、これに懲りたら調子こいた嘘なんかもうつくんじゃねえぞ……」


 男は、俺が倒れなかったことで実力差を悟ったのか、少々弱気な口調になった。

 どうやらこれで俺たちを解放してくれるみたいだ。

 だが、俺はそう簡単に許してはやらない。


「まあ待て、今の攻撃で、俺の鎧に傷がついたんだが……?」


 俺は強い口調で詰める。

 鎧の一か所を見せ、その傷を強調する。

 もちろん、今の攻撃で傷ついたなんてのは大嘘だ。

 あんな剣で斬りつけられただけの攻撃で、俺のUR防具は傷つかない。

 これはもとからあった傷だ。

 そう、べへモス戦で、スタンピードのときに戦闘で着いた傷だ。


「あん? 傷だと……?」

「そうだ。お前のせいで俺の大事な防具に傷がついた。弁償してもらおうか?」

「っは……! ま、まあそのくらい、いいぜ。いくらだ? どうせ今ので傷つくくらいだ。しょうもねえ市販品のR級装備だろう。そのくらい、俺様のサイフにとっちゃ痛くもかゆくもねえ」

「いや、これはUR装備なんだが? さっきからそう言ってるだろ?」

「は……? UR装備だ? それは嘘だろうが! 嘘に決まってる!」


 どうやら男はまだ信じる気がないようだ。

 鑑定スキルも使えないのだろう。

 もしくは、R装備だと信じ込んでいて、使う気がないのか。


「お前は言ったよな? 弁償くらいしてやると」

「あ、ああ……だから何だよ……」


 男も、さすがに状況が悪いと思ったのか、弁償はするつもりのようだ。

 さっきの一瞬の攻撃で、俺の実力を悟ったのだろう。

 俺と決闘にでもなれば面倒だと思い、このままなるべく穏便に事をすませる腹積もりらしい。

 俺は、ギルドカウンターの向こうにいる受付嬢に、手招きをした。

 ギルドの受付嬢は、みな鑑定スキルが使える。

 まあ、フィエルさんに鑑定をやらせてもよかったが、それだとこいつは信じないだろうからな。

 やってきた受付嬢に、俺は言った。


「受付嬢さん、すみません。俺のこの防具を鑑定してみてくれませんか?」

「? は、はい……わかりました」


 男は、余裕の表情で腕を組んでいる。


「っは……! どうせR級の不良品だろうがよ!」

「それはどうかな……?」


 受付嬢さんの鑑定結果が出る。


「こ、これは……!? 確かにこの防具は、UR装備です……!!!!」

「な…………!?!?!!?」


 男は驚愕と絶望に満ちた表情を浮かべる。


「それで、弁償してくれるんだったよな……?」

「ひ、ひえええええええ! か、勘弁してくれええええええ!」


 男は頭を床に埋め込む勢いで、土下座して謝罪した。

 まあ、ちょっと虐めすぎたかな?

 俺も別に金をとる気はないので、それで許してやることにした。


「UR装備の弁償なんかできねえよぉ……」

「これに懲りたら、もう冒険者へ難癖つけるのはやめるんだな」

「は、はい……すみませんでしたあああ! もうしません……!!!! だから許して……!!!!」


 これにて、一件落着。

 俺たちは、冒険者ギルドを利用できるようになった。

 


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