第5話 ウルトラスライム


「それじゃあ、いっしょに行こうか」

「うん」


 俺とシエルは冒険者ギルドを出て、クエストに出発する。

 シエルがモンスターに奪われた大事なペンダントを取り返すために!

 だが、ギルドを出たところで、シエルは立ち止まり、


「あ……そういえば、私武器も奪われたままなんだった……」

「武器……?」

「うん、武器もモンスターに飲み込まれちゃって……」

「そうだったのか」


 シエルはそのモンスターによほど苦戦したんだな。

 そりゃあ、武器まで奪われてしまったら、あそこまで負傷するのもしかたない。

 それより、よく生きて戻ってこられたな。それだけが幸いだ。


「あ、じゃあ代わりにこの武器使うか?」


 俺は先ほどガチャで出た紅蓮剣ドラグリオを手渡した。


「こ、これは……? いいの……?」

「ああ、うん。余ってるからな。ほら、俺は自分の武器がある。さっきエリクサーを出すために、ガチャを引いて余ったんだ」

「ガチャ……?」

「ああいや、こっちの話だ。なんでもない」


 おっと、口が滑った。


「とにかく、この武器いらないから、よかったら使ってくれ」

「うん、なにからなにまで、ありがとう。ウルト」


 シエルは俺から紅蓮剣ドラグリオを受け取ると、腰に刺した。


「って、これ……よくみたらUR武器じゃない……!?」

「ああ、まあそうだな」

「そうだなって……本当にいいの!? UR武器なんて、一生に一度手に入るかどうかってものよ!? 私も実物は初めてみた……」

「構わない、俺の武器もURだしな」

「ウルト……あなたいったい何者なの……? エリクサーももってるし……」


 シエルは俺のことを探るような目つきで見てくる。


「え、えーっと……それはぁ……」

「ま、どうでもいいか。ウルトは私の命の恩人。それだけで」

「そうしてもらえると助かる」


 ガチャのことを説明してもいいが、面倒だ。

 そうこう話をしているうちに、ダンジョンまで到着する。


「ここか……」

「気を付けてね、敵はかなり強いから」

「ああ……」


 俺たちはどんどんダンジョンの中を進んでいき、目的のモンスターを目指す。

 おそらくシエルがやられたのはボスモンスターだろうから、一番奥にいるのだろう。


「さすがはUR武器……! 全然苦戦しない!」

「そうだな。しかも二人ともUR武器だから、楽勝だ!」


 俺たちはまったく苦労することなく戦闘を切り抜けていった。

 UR武器のパワーはそこまですさまじかった。

 取りこぼしたモンスターや後ろからの不意打ちは、フェンリルのコハクがやっつけてくれる。

 その調子で、あっというまにボスモンスターのところへ。


「こいつか……」

「そう、武器をとられないように気を付けてね」

「ああ……!」


 ボスモンスターは超巨大なスライム型のモンスターだった。

 だがただのスライムじゃない。騎士のような形に変形したり、ドラゴンの形に変形したりと、変幻自在だ。

 さしずめ、究極ウルトラスライムってとこか。


「うおおおおおおおお! いくぜ!」


 俺はスライムに斬ってかかる。

 しかし、スライムは瞬時に騎士の形に変形し、剣でそれを受け止めた。


「なに……!? 硬いし早い……!」


 騎士の形になっているときは、剣の部分もそれなりに硬くなるのか?

 このスライム、形状を真似するだけじゃなく、その性質までコピーするのか!


「グオオオオオオオ!!!!」


 するとスライムは今度はドラゴンの形に変形した。

 そして、火炎ブレスを俺に向かって吐いてきた。


「っく……!」


 俺はシエルの前に立って、全身でそのブレスを受け止める。


「ウルト! 大丈夫なの!?」

「ああ大丈夫だ。俺はURのレッドドラゴン装備を着ている。このくらいのドラゴンブレスなら、耐性があるからなんとか大丈夫だ!」


 なるほど、確かにこれは強いな。

 いろんなモンスターをいっぺんに相手しているようなもんだ。

 そりゃあ、ソロでシエルが負けるのも無理はない。


「主、今度は我が引き付ける……!」

「ああ、頼む、コハク!」


 今度はコハクがスライムに食って掛かった。

 すると、スライムはフェンリルの形に変化して、コハクを迎え撃つ。

 まるで鏡合わせのように、2匹のフェンリルが向かい合っている。


「こいつ……我のことをトレースしている……!?」

「なかなかやるな……!」


 コハクが引き付けている間に、今度はシエルが攻撃にうつる。


「うおおおおおおおおおおお!!!!」


 ――ズシャ!!!!


「やった……!」


 シエルの攻撃は見事にスライムに当たり、ダメージを与えた。

 紅蓮剣ドラグリオのUR効果で、スライムの傷口に火傷を負わせる。

 だが、まだこの程度の攻撃ではスライムは死なない。


「よし、俺の攻撃でトドメだあああああああ!!!!」


 俺は破邪の剣を大きくふりかぶって、スライムに特攻をしかけた。

 だが……。

 スライムはいきなり、こんどは巨大なカエルの姿に変身した。


「なに……!?」


 そして、スライムは舌をべろーんと出すと、俺の武器をからめとってしまった。

 そしてそのまま、胃袋の中に飲み込む。


「っく……シエルがやられたのはこれか……!」

「ウルト……! 大丈夫……!?」

「ああ、俺は大丈夫だ……!」


 だが、ここからどうするか……。

 仕方がない。シエルの前だが、アレを使うか。


「ガチャ発動!」


 俺はその場で新しく、ガチャをひくことにした。

 別に俺は武器を失っても、新しくガチャを引けば、それでいいだけだ。



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