第4話 ビンゴ!


「う、うぅ…………」


 声のしたほうを見ると、そこにはボロボロに負傷した女冒険者の姿があった。

 ソロの女冒険者のようで、ひどいけがをしている。

 クエストで負傷して、ギリギリのところで逃げ帰ってきたのだろうか。


「うぅ……」


 ――バタ。


 ギルドの中に入ると、女性は安心したのか、その場で倒れこんでしまった。


「あ、あれは……! 有名Aランク冒険者のシエルじゃねえか!? あのシエルがこんな負傷をするなんて……! なにごとだ……!?」


 誰かがそんな声をあげる。

 冒険者のシエル……有名な人なのか?

 とりあえず、俺は倒れているシエルに駆け寄った。

 誰も助けようとしないが、このままじゃ危ない。


「おい、大丈夫か……!?」

「うぅ……」


 俺はシエルを抱えて起き上がらせる。

 どうやら意識がもうろうとしているようだ。

 けがもひどくて、このままじゃ危ない。


「おい誰か! 回復魔法を使えるやつはいないのか!」


 俺はギルド内全体に響く大声で、みんなにそう呼びかけた。

 だが、名乗り出るものはいない。みんな面倒ごとに巻き込まれるのはごめんなのだ。くそ……。

 そこに受付嬢さんが話しかけてきた。


「ウルトさん、これはもう回復魔法じゃどうにもならないです……。残念ですが……」

「そうなのか……。くそ……どうすれば」


 なんとかこのシエルという冒険者を救ってやりたいところだが……俺にはどうすることも……。

 はっ……! そうだ……!


「もしかしたら、俺にどうにかできるかもしれません!」

「え……!?」


 俺は受付嬢さんにシエルを預けて、いったんギルドの外へ出る。

 ガチャを引くところを他人に見られるのは、面倒なことになりそうだからな。

 人目のつかないところに行って、UR確定ガチャを回す。

 すると――。



《紅蓮剣ドラグリオ》

レア度 UR★★★★★★★★★★

攻撃力 +450

説明 ドラゴンの素材から作られた真っ赤な剣。



「くそ……今は武器なんてどうでもいいんだ!」


 なにか、回復アイテムのようなものがあればいいんだが……。

 回復魔法よりも効果のある、伝説級の回復薬があるってきいたことがある。

 それはおそらくURのアイテムだろう。

 エリクサーか、それに準ずるものがなにか出ればいいんだが……。

 俺はさらにガチャを回した。

 くそ、一回100万Gと考えると、そう何度もは引けないぞ……。


「えい!」



《エリクサー》

レア度 UR★★★★★★★★★★

効果 HP全回復、けが全治療、その他。

説明 あらゆる状態を治す万能治療薬。



「おおおおお! ビンゴ!」


 なんと2回目でお目当てのエリクサーを引き当てたぞ!

 俺はなんて運がいいんだ!

 エリクサーを持って、シエルのもとへさっそく駆けつける。


「受付嬢さん、これをシエルに……!」

「ウルトさん……! こ、これは……!?」

「エリクサーです。使ってください」

「え、ええええエリクサー……!? こんなものをどこから!? こんな高価なもの、本当に使っちゃっていいんですか!?」

「いいから! 今は人命が大事です!」


 俺と受付嬢さんでシエルを支えて、協力してエリクサーを飲ませる。

 すると……。

 みるみるうちにシエルのけがは回復し、目をさました。


 ――シュウウウウウン!

 ――キラン☆


「こ、ここは……」

「よかった、目が覚めた……!」

「あ、あなたが助けてくれたの……?」

「そちらのウルトさんが、エリクサーをくださったのです」


 受付嬢さんが俺のことを指さして、シエルに紹介した。


「え、エリクサーを……!? そんな高価なものを……いいの……?」

「お、俺は別に構わないよ。それより、無事でよかった」

「なんとお礼を言ったらいいか……」

「いや、礼なんて……」


 目を覚ましたシエルは、それはそれは綺麗だった。

 真っ白な短髪に、黄色の透き通った目。そこにブルーの鎧が映える。

 シエルは誰がどうみても、絶世の美人だった。

 そんなシエルにすごく熱意のある目で見つめられて、礼を言われると、照れてしまう。


「俺の名はウルト。よろしく」

「私はシエル。本当に、助けてくれてありがとう、ウルト」


 俺たちは握手をした。


「それで、シエルはなぜこんな目に……?」

「うん、それが……凶悪なモンスターに襲われて……」


 Aランク冒険者として有名なはずのシエルが、逃げることもできずにここまでやられてしまうなんて……。

 いったいそのモンスターってのはどんな怪物なんだ……?

 それからシエルは、思い出したように立ち上がった。


「そうだ……! 私、まだペンダントを取り返してない……!」

「ペンダント……?」

「大事なものなの……。そのモンスターに、飲み込まれてしまって……」

「なるほど、それを取り返すのに気をとられて、やられちまったってわけか」


 大体の事情は察した。


「だけど、私一人で戻ってもまたやられるだけ……」

「仲間はいないのか?」

「誰も、私とは組みたがらないさ……」


 なんだかわけありのようだな。

 Aランク冒険者として有名なはずのシエルなら、きっと引く手あまただと思うが?

 だけど、そうじゃないってことは、なにか特別な事情があるんだろう。

 そこまで詮索する気はないけど。


「よし、じゃあ俺がいっしょに行くよ!」

「え……? いいの……?」

「ああ、俺も仲間がいない。それに、これもなにかの縁だ!」

「ウルト……ありがとう……!」


 一度乗りかかった船だ。最期まで付き合うぜ。

 それに、シエルとは初めて会った気がしなかった。

 彼女の大事なものを、俺も取り返してやりたいと思った。

 ま、シエルが美人で超好みってのも、理由のひとつだが。



======================

《大事なお願い!》


お読みいただき、ありがとうございました!

少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、


『ブックマーク』と【☆☆☆】を【★★★】にしていただけると幸いです!


評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る