第3話 うーん、手のひら返しがすごい
全身UR装備と神獣フェンリルのコハクを手に入れた俺は、その足で冒険者ギルドに向かった。
前に冒険者登録してあるから、今回は紹介がなくても大丈夫だ。
俺はカウンターに行って、冒険者登録の手続きを申し込んだ。
「では、こちらの紙にお使いの装備を記入してください」
受付嬢はそう言って、俺に用紙を手渡した。
俺はそこに、自分の装備を記入する。
名前 ウルト=ラマン
年齢 19歳
性別 男
武器 破邪の剣(UR)
防具 レッドドラゴン装備(UR)
仲間 フェンリル一体(UR)
「これでよし……っと」
紙に必要事項を記入して、俺はそれを受付嬢さんに返した。
俺の用紙を受け取ると、受付嬢さんは目を丸くして二度見して驚いた。
「あ、あの……! これって本当ですか……!? ウルトさんはUR装備をお持ちなんですか……!?」
「え、本当ですけど……」
「す、すっごおおおおおおい! 私、全身UR装備の方なんて初めてみましたよ!」
「えへへ……」
「普通はどんなAランク冒険者でも、武器だけとか、防具だけとかですよ。これなら、ウルトさんはすぐにAランクになれますね! 多少のブランクがあっても、大丈夫です!」
受付嬢さんは俺を過剰に持ち上げた。なんか連絡先書いた紙とかももらった。
すごい……UR装備ってだけで、こうまで人の対応が違うのか。
あとで食事にでも誘おうかな。
「では次に、魔力の測定をしますね。こちらの水晶に手をかざしてください」
「うーん、俺はあまり魔力は高くないからなぁ……」
気乗りしないまま、俺は水晶に手をかざした。
すると……。
――ドガアアアアアアアアアアン!!!!
――バリバリバリィン!!!!
「ふぁっ……!?」
なんと、俺が手をかざした瞬間に、水晶から謎のビームが出て、割れてしまった。
ギルドの壁に穴が開いてるぞ……。
「ど、どういうことなんだ……!?」
「どうやら、ウルトさんの魔力があまりにも大きすぎて、この水晶では測れなかったみたいですね……」
「そんな馬鹿な……」
俺はおせじにも、大した魔力だなんていえるようなものじゃないのに。
それは昔に冒険者登録をしたときにもわかっていることだ。
なら、なぜこんなことに……?
この5年で俺の魔力に変化があったのか?
いや、そんな馬鹿な。
肉体労働だけで魔力が成長したりなんかはしないだろう。
俺が疑問に思っていると、小さくなって肩にのっかているコハクが口を開いた。
「主、それはおそらく、我のせいでしょうな」
「え? コハクのせい?」
「我をテイムしているので、主は我の魔力を一部取り込んでいる状態になっているのです」
「そうなのか……」
「テイムする魔物が増えればその分、魔力は増えていきます。我の魔力があまりにも大きかったせいでしょうな……」
「さすがURの神獣だな」
ということで、俺は魔力も装備もやばい状態で登録完了となった。
ここまでのステータスはなかなかないそうだ。
俺は晴れて、最初からAランクでの登録を許された。
いきなりAランクなんて大丈夫だろうか。
「それではウルトさん、これにて冒険者登録は終わりです。今後の活躍に、期待していますね」
「どうも」
受付嬢さんから、冒険者カードを受け取る。
さて、さっそくなにかクエストを受けるかなと、振り向いた瞬間。
俺の周りには、軽い人だかりができていた。
なにごとだ……?
「おいあんた! UR装備なんだってな。ぜひうちのパーティにきてくれ!」
「いや、うちだ! うちにきてくれ!」
どうやら俺がUR装備を持っていることをききつけた冒険者パーティが、俺を勧誘にきたようだ。
それにしても、ほんと引く手あまただな。
その中には、5年前俺を振った冒険者パーティもいた。
カスミさん率いるAランクパーティだ。
「ねえあんた、うちに来ない? ていうか、ぜひうちに来てほしいの。あんたのようなUR装備のすごい新入りが入れば、きっと最高のパーティになる!」
「えぇ……」
カスミさんは、どうやら5年前に俺を振ったことなど忘れているようだ。
俺のことをN装備しかない身の程知らずだとか言って、ひどい拒み方をしたというのに。
うーん、手のひらの返しようがすごいな。これがUR装備の力か。
「うーん、今のところは、俺はパーティに入るつもりはないかな。ソロでやってみます」
「そんな! そこをなんとか! お願いだよ!」
「いえ、残念ですが結構です」
「そんな! このままじゃ、うちのパーティはもう落ちぶれるばかりだよ……」
「俺の知ったことじゃありません」
俺は、カスミさんの頼みを、きっぱりと断ってやった。
以前断られた人を、振るのはなんだか気持ちがいい。仕返しのつもりじゃないけど、ちょっとすっきりした。
カスミさんも5年前はかなりの美人だったけど、今や太って見る影もないしな。
俺のような新人をあそこまで勧誘してくるということは、落ち目のパーティなのだろう。
5年もあれば、冒険者なんかけがをしたり、衰えたりでパーティの勢力図はかなり変わるからな。
俺はそのまま、次々と勧誘されたけど、とりあえず断っておいた。
まあ、いい仲間に恵まれれば、俺もパーティを組むことにやぶさかではない。
だけど、こんなふうにUR装備の噂をききつけて軽々しく誘ってくるような連中とは、パーティを組む気にはなれなかった。
今の俺のステータスを考えれば、ソロでも十分やっていけるだろうしな。
それに、パーティを組むにしても引く手あまたな状況だ。俺は好きにするぜ。
パーティ勧誘が一区切りついたころ。
ギルドの中が、再び騒がしくなった。
なにかあったのだろうか。
入口のほうだ。
「う、うぅ…………」
声のしたほうを見ると、そこにはボロボロに負傷した女冒険者の姿があった。
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