深夜の本屋 ~続巻~

タカナシ

第1話「発売日未定」

 深夜になるとこの書店はマンガたちが具現化する不思議な大型書店です。


 あっ、ご挨拶が遅れました。私は編集者エッセイマンガの具現化、名前を著者名から取って、江津 えつ ひかりと言います。 

 元の作者に倣って、この不思議な書店をエッセイにしていきたいと思い、今日も店内を観察しています。


                 ※


「エッセイっていつもいるけど、俺、お前が平台にいるとこ見たことないんだが」


 現代ファンタジーの具現化の眼帯が何気なく私のことについて口から出すと、「そういえばそうだな」と色々なマンガたちが集まり始めた。


「エッセイは大判だから、ここの棚にずっといるけど、確か3巻までしか出てなかったよな」


 そうなのだ。何を隠そう私は未だに3巻までしか出ていない。だが、しかし、3巻の刊行年はかなり前、もうかれこれ5年は前だ。

 5年あれば、週刊誌のマンガなら早いものなら20巻以上出ていてもおかしくない。というか眼帯が5年前に連載開始して今21巻出ている。


 そんな中、一巻も出ずに3巻で止まっている。

 だって、しょうがないじゃないかっ!!


「私だって、もっと平台に並びたいさ。だが、作者が腰痛で書けないっていうんだからしょうがないじゃないかっ! しかも、なまじ3巻まででドラマ化とかしちゃったから、ずっと本屋にいるし!」


「あれ? そういえば、この前再開してなかったか?」


 今度は編集部マンガの編集長からの言葉。


「うぐっ! いや、確かに、もう休載はしないって言って書いてたけど……、そのネタがないって言って、今は放浪の旅に出て休載に……、そのドラマの大ヒットでお金を稼ぐ必要もないのが悪いんだっ! せめて、せめてネタさえあれば……」


 いいわけを一通り言い終えその場にうな垂れ崩れる。そんな私の肩にポンっと手が置かれる。


「編集長?」


「それでキミはネタを集めていたんだな。その思い、きっと作者の江津先生にも届くさ」


「編集長っ!!」


 私たちはアツい抱擁を交わし、再開を願った。


 その後、再開するかどうかは作者のみぞ知る。

 あ、最後にもうひとついいわけしておかないと。


 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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