第9話和輝の妹達出現



 和輝からのさり気ない促しを含んだ問いかけに、桜はいったんソレを言おうかどうしようかと、躊躇ためらった言葉を続けることにした。


「うぅ~…実は…今まで、何度も色々なペットシッターを雇ったんだけど

 〈レイ〉や〈サラ〉と相性が悪くて、次々と辞められてしまって………

  今じゃ…ペットシッターの派遣をしている会社に電話すると


 『現在、当方のペットシッターの予約は満配状態です

  当方では手の空いている者が居ない為、受けられません


  また、予約待ちの方が多数おりますので

  現在は予約も受け付けておりません


  他のペットシッター派遣会社に、ご連絡ください』


 って、断られてしまうの………」


 そう言って、冷たく断られた時のコトを思い出して、項垂れる桜を腕に抱いたまま、スタスタと歩き続けてていた和輝が、足をピタッと止める。

 その停止した感触を感じた桜は、涙目になる。


 うっ…やっぱりポイッされるのかな?

 だから、言いたくなかったのよぉ~……でも、言い返したかったし………


 せっかく、和輝は〈レイ〉と〈サラ〉の両方と相性良さそうなのにぃ~

 ああそうだ、状況が理解わからないふりしていよう


 このまま、和輝と別れるのは惜しいモン

 2頭の懐きぐあいを考えると、和輝に面倒を見てもらうコトも出来そうだし


 内心での落ち込みを押し隠し、桜は小首を愛らしく見えるように傾げて、和輝に問いかけた。


「どうしたの?」


 片腕に抱き上げた桜の葛藤や落ち込みに気付かなかった和輝は、その問いかけにあっさりと答えた。


「ぅん…ああ…俺の妹達が学校から帰って来たようだ

 前方で仲良く歩いている2人は、俺の双子の妹なんだ

 でも、助かるな…ちょうど良いところに帰って来てくれた」


 ちょうど、ボロボロの桜の治療をした後の着替えをどうしようか?

 って思っていたところだからなぁ………流石に、この姿だからなぁ………


 脱がせたら、もう上着どころか中着のТシャツも使えないだろう

 無事そうなのって、下着くらいかな?

  

 新しい着替えが必要だとなぁって思っていたからな

 優奈や真奈が学校から帰宅したのにぶち当たってラッキー………助かった


 予想外の答えに、桜は和輝の視線を追って、前方にいる良く似た2人の少女を見た。


「えっ?…妹?…双子なのか?……たしかに、そっくりね」


 無意識に再び小首を傾げながら呟く桜を横目に、和輝は仲良く歩く双子の姉妹に声を掛ける。


「ああ…一卵性双生児なんだ…だから、そっくりだろう……優奈、真奈」


 和輝の呼び掛けに、カバンを背負って、喋りながら歩いていた双子が顔を上げる。


「あー…真奈ちゃん…お兄ちゃんだ…うわぁ~…ボルゾイだよぉ~…………

 すごぉ~い…かっこいいし…綺麗……」


 感動する優奈に、真奈も頷いて言う。


「本当だ、和輝兄ぃ~だぁ~………それに、ボルゾイぃ~………」








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る