第5話警官VS和輝



 和輝は、桜に向かって言う。


「まぁ…取り敢えず…その手足……ウチで治療した方が良いな……」


 そう言う和輝に、おっとり刀で来た警官達が話しかける。


「………そこの君………その犬……君の犬かい?」


 その問いかけを聞いた瞬間、和輝の抱き上げた腕の中で、桜がビクンッと身体を揺らす。

 大きな犬を連れ歩いたコトをとがめられると感じて………。


 そんな桜に、ちょっと同情したした和輝は、問いかけてきた警官達へと視線を向ける。


 小柄な桜が、2頭の超大型犬に引き摺られている姿を見て

 誰かが通報したんだな……まったく、余計なことを………


 縮こまった桜の様子に、内心で舌打ちした和輝は、警官達を観察する。


 ったく、今頃かよ…遅すぎだろう……その上で、いかにもな質問て……

 なんの為の警察なんだか………けっ…お巡りさんじゃなくて……


 ひまわりさんって改名した方がイイんじゃねぇ~のか?

 ったく……いや、言わねぇ~けどよぉ~…面倒だから


 こういう、親切ごかし風に問いかけてくる

 お巡りって面倒くさいんだよなぁ……はぁ~…うざいぜ


 そんなコトを内心で思いつつも、和輝は人当たりの良い表情をこころがけながら言う。


「ああ…お騒がせすみませんでした…この2頭は、俺が飼っている犬です

 普段は、俺も一緒にこいつらの散歩しているのですが

 今日は用事があって、桜に散歩を頼んだんです


 ほら、ここ最近、全然天気が良くなかったので………

 幸い、俺の用事もそんなに時間を取られずに帰って来れたんですけどね


 どうやら、途中で俺の匂いに気付いたようで、俺ンところに向かって

 嬉しそうに走って来ちゃったんですよ」


 和輝は、その2頭は危険だと、注意しようとする警官達の言葉をさえぎるように、先を制してそう言う。

 そして、自分の前でおとなしくお座りしている2頭の犬の頭を、当然のように撫でる。

 が、その内心は………。


 あぁ……うざったい……初動がとろくさいクセに………

 こいつら連れた桜を注意する暇あったら


 引き綱外して野放しにしているのや

 引き綱をやたらとズルズルと伸ばして、ダラダラと歩いている


 迷惑なオバサンやオジサンを注意しろってーの

 引き綱の意味ねぇーコトしてんだから


「見ての通り、2頭とも、普段はこの通りおとなしい犬なんです

 今、なんでこんなところで暴走したのかを、桜に聞いたところなんです


 本当に、困ったもんですよねぇ~………

 ちゃ~んと、管理されていない猫や犬ってヤツは


 今も、少し前に性悪な野良猫がケンカしながら飛び出して来て

 眼前を横切られたコトに驚いて走ってしまったようです


 あと、飼い主不在らしい、野良犬がケンカしているのを見て

 更に興奮してしまったようなんですよね


 この辺でも、まだいるんですねぇ~…野良犬……怖いですよね

 ケンカしているってコトは、何匹か居たってコトですよね


 危ないですから、早く捕獲なりなんなりして欲しいですね

 良かったですよ、こいつらにケンカを売りに来なくて………


 野良ってコトは、狂犬病や色々なワクチンを打っていない犬ですもんね

 そういうのは、市民の安全の為にも、ちゃんとしてもらいたいですよね


 いや、それにしても、本当に、すみませんでした 

 2頭のボルゾイの散歩を、桜ひとりで行かせたのは、俺の落ち度です

  

 警察官の皆さんには、大変ご心配をおかけしましたが……


 この通り、この2頭のボルゾイは、由緒正しい優秀な血統を持つ

 厳しく躾けられたボルゾイです


 その辺の、躾けというモノをまるっきり出来ていない危険な犬とは

 見ての通り、全然違いますから大丈夫ですよ」


 そう和輝は言い切り、にっこりと笑う。


 






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