そんな昔ばなしを

サンドリヨン

好きな女の子に告白された。

 ずっと好きだった女の子に告白をされた。でも断ってしまった。


 私に告白してきた女の子、紅葉。幼馴染で、姉妹のように育った、魂の片割れのような少女。


紅葉は男子と付き合っていたこともあるし、好きな人がいることを相談されたこともある。

私は昔から紅葉以外を好きになったことはないし、これからもそうだと思う。

ずっと諦めていた彼女から告白されて嬉しくないはずがない。

だけど、私は臆病だった。


この田舎町で女の子同士で付き合って、無理やり離されてしまった少女たちを知っている。

同性愛なんて気持ち悪い、間違っているという両親を知っている。

学校に広まったら?私がいじめられるだけならまだいい。

紅葉がいじめられたりしたら私には耐えることはできそうにない。

それに紅葉は元々男性が好きだったはずだ。紅葉に捨てられたりしたら、紅葉の幸せを願いながら身を投げる自信がある。

 

断られた紅葉は悲しそうな顔をしながら、「そっか…」って言って去っていった。

あんな顔をさせたくなかった。

でも卑怯な私には引き留めるすべなどなく、罪悪感だけが募っていった。

私には涙を流す資格なんてないのに、眼から溢れ落ちる水滴を止めることはできなかった。


間違いだった。過ちだった。


そう紅葉に告げることができたならどれだけ嬉しいだろう。

お前はバカなことをしたって誰かに糾弾してほしかった。


紅葉を振っても、私がどれだけつらくても明日はやってくる。

週明けの教室で、ショートカットになった紅葉を見て、私への想いごと捨てさられた気がして、泣いてしまったことをよく憶えている。

そんな私に紅葉はすぐ駆け寄ってきて、ハンカチを手渡しながら、

「どうしたの?大丈夫?」

なんて聞いてきて、ますます泣いてしまった。

あぁ私は、紅葉のことを一生好きでいるんだろうなって、再確認したんだ。

 ベランダで、手を握りながら、そんな昔のいいわけを紅葉としていた。

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