放課後のお返しは、最高の笑顔でした

さばりん

自分に言い訳してたら放課後になってました

俺、沢田亮さわだりょうは今日一日、ソワソワしていた。

なぜなら、幼馴染のさくらにホワイトデーを渡すため。

しかし、中々渡す機会が訪れることなく、あっという間に放課後を迎えてしまう。

帰りのHRが終わり、自席でちらちらと桜の様子を窺っていた。

桜は友人と雑談に興じており、まだ帰る様子はない。

クラスメイト達は、各々部活へ向かったり、岐路へ着いたりとしていき、徐々に教室内の人数も減っていく。


「じゃあねーバイバイ!」


ようやく友達との話を終えて、桜は友達と別れた。

友達が教室から出ていくと、教室内に残されたのは俺と桜だけになった。

すると、友達を見送った桜が、にこりとした視線をこちらに向けてくる。


「で、亮はそんなにソワソワして何してるわけ?」

「べっ、別に⁉ なんでもねぇけど⁉」


何言っちゃってんの俺⁉

ここは正直に、桜を待ってたとか言えばよかったのにぃ!

自身のヘタレっぷりに頭を抱えていると、桜がにやりとした笑みを浮かべながらこちらへ近寄ってくる。


「ふぅーん。さっきからずっと、私の事見てた気がするんだけどなぁー? 気のせいだった?」

「あぁ、俺は廊下の様子を見てただけだ」

「廊下? どうして?」

「そりゃ、廊下の様子が気になったから」


理由になってない苦し紛れの言い訳を述べると、桜は細い目を向けてくる。


「ふぅーん……そっか。そんな言い訳するなら、私もう帰ろっかなぁー」

「いやっ、ちがっ……!」


気づいた時には、俺は踵を返した桜の手を掴んでいた。

自身の行動に驚いていると、桜も咄嗟のことに驚いたらしい、目をまくるして振り向いてくる。


「そのぉ……あれだ……これっ!」


俺は恥を忍んで、机の下に忍び込ませていたホワイトデーのお返しを桜に差し出した。

桜は何度か目をパチクリとさせてから、ふっと破願する。


「もう、待ちくたびれたんだけど」

「ご、ごめん……遅くなって」

「まっ、校内で渡してくれただけ、まだ良しとしてあげる」


そう言って、桜は俺から受け取ったホワイトデーのお返しを大切そうに抱え込み、それはそれは嬉しそうな笑みを浮かべているのであった。

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