いいわけ
伽藍青花
第1話 いいわけ
「あんたはさ。あのコに告白も、あんたの気持ちを伝えることもせずに終わる――そんな結末でいいわけ?」
卒業式があった日。
みんなが校庭で同級生や先生、後輩に別れの言葉を伝えたり、写真を撮ったりしている中、静かになった教室に女の子が二人、話し合っている。
「いいわけ」
「どうしてさ?」
「うん、それで良い訳を話すとね――」
彼女は女の子で、私も女の子でしょ。最近はまだそういうのが認知されてたりとか、理解され始めたりとかしてるけどさ。それでも、気持ち悪がったりする人もいるし、変に知られてるせいで、好奇の目で見られたりするし。それに、彼女には彼氏がいて、女の子が恋愛対象になってるわけでもないし、彼女にも私と同じように周りから何か言われるかもしれないし。彼女にそんな思いはしてほしくないし、彼女には幸せになってほしいし。前に、私のことを友達だと言ってるのを聞いて、嬉しかったけど、友達だと思ってくれてるなら、なおさらそんなこと伝えていいわけないし。彼女の彼氏は背が高くて、運動部で、それに対して私は背が低くて、文化部で、絶対彼女の好みに合ってないし。こんなこと言って、彼女の高校生最後の日が嫌な思い出になってほしくないし、同窓会とかで気まずくなるのも嫌だし。だから私は思いを伝えない方が良いわけで――
途中から涙を流しながら話していた女の子に、話を聞いていたもう一人の女の子が話しかける。
「――そんな言い訳で、あんたはいいわけ? もう一回しっかり考え直してみなよ」
「こんな言い訳で、良いわけないでしょ!」
泣きながら、彼女は叫ぶ。
「じゃあ、どうすればいいわけ? って言っても、もうわかってるでしょ」
「……うん! あのコに思いを伝えてくる!」
彼女は、袖で涙を拭いて、走っていった。
残された女の子は、ポツリと呟く。
「がんばれよ。……あたしも、言い訳せずにあんたに思いを伝えないとね」
いいわけ 伽藍青花 @Garam_Ram
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