いいわけない

千求 麻也

教室での教師と生徒の会話


教師:遅刻した理由を言ってみなさい。


生徒:良い理由わけと悪い理由わけがある。どっちから聞きたい?


教師:先生に向かって何を偉そうに言ってんだ!


生徒:では、良い理由わけから話そう。


教師:偉そうに言い訳する気か!


生徒:お婆さんが道に迷ってたんですよ。一番線ホームまで行きたいって言うから、駅まで一緒に連れて行って電車に乗せてあげたんです。


教師:理由と書いて「わけ」と読ませ、良い理由わけか。たしかに、お年寄りを助けることは良いことだ。しかし、時間に余裕を持って行動しないとな。もしかして、それが悪い理由か?


生徒:悪い理由わけは電車が遅延したんです。満員電車にお婆さんを押し込むのに時間かかってしまって。お婆さんは意識を失い……あ、命には別状無いようでした。


教師:お前が電車遅延させたのか! しかも老人虐待!


生徒:いや、お婆さんは意識を失う間際、「コロ助か」って。たぶん、キテレツ大百科に出てくるコロ助のように良い子だっていうことなんでしょう。


教師:たぶん、それ「殺す気か」って言ったんじゃないか……。


生徒:あ、コロスキーか! でも僕、純日本人って顔ですけどね、てか、コロスキーって誰……。


教師:知らねえよ! すごい笑顔で人殺す暗殺者の名前でありそうだけどな!


生徒:そんな人います!? 面白いなあ先生、アハハハハ!


教師:お前みたいな奴だよ!


生徒:ちょっと先生! いくら先生でも言って良い事と悪い事がありますよ、殺しますよ? アハハ! てか、イクラ先生っていたら面白いっすね、プチって簡単に潰せそう。アハハ! しかも、お婆さん、その前から「違うホーム、違うホームって」って、一番線で合ってんのに。てか、お婆さん、一番線のことずっと「いちばんかん」って間違って言ってんの。アハハ!


教師:お前だよ、間違ってるの! たぶんそのお婆さん、老人ホームに行きたかったんだよ! こいつ、理由わけもなく笑って人殺しそうだよ!

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