第五話 おはぎとラムネ
召喚魔法を選んで黒猫を使役したのだけれど、黒猫に怒られてしまったわ。
無理やり契約されれば、誰でも怒る事よね…。
使役した動物は私の好きなように使う事は出来るけれど、無理強いはさせたくないわ。
召喚魔法の中には、使役した動物や魔物を解き放つ魔法があるわ。
それを使って、解放してあげた方が良いのかも知れないわね。
『私との契約を解除出来るけれど、どうする?』
『解除しなくていいニャ』
『そう?酷い命令をするかもしれないわよ?』
『美味しい物を食べさせてくれれば構わないニャ』
『分かったわ。じゃぁ、貴方の名前を教えて頂戴』
『いつもご飯をくれる人には、黒と呼ばれているニャ』
『そう…』
リド、もう少しいい名前を付けてあげましょうよ…。
何かいい名前は無いかしら?
話せるのだから、自分で決めて貰うのが良さそうね。
『どんな名前で呼ばれたいか、希望はあるかしら?』
『ないニャ、ボスに任せるニャン!』
任せると言われたので、色々考えてみる事にしたわ。
黒猫で有名なのはジ〇だけれど、そう言うのは不味いわよね…。
目の前で丸くなっている黒猫を見ながら名前を考えていたら、急におはぎが食べたくなったわ。
買い物に行くと、レジの近くに良く置いてあったのよね…。
無駄遣いを禁止されていたから一回も買った事は無いのだけれど、どうしても食べたくて自分で作った事を思い出したわ。
あの時は母も珍しく、私が作ったおはぎを美味しそうに食べてくれたわね…。
『貴方の名前は、おはぎに決めたわ!』
『黒の方が良かったニャ…』
『うるさい!今日から貴方の名前はおはぎよ!』
私も黒の方が良かったとは思わなくもないけれど、おはぎも悪くないわよね?
名前が決まった所で、様子を見ていたナディーヌ姉様が話しかけて来たわ。
「その猫捕まえたの?」
「はい、おはぎと言う名前です」
「おはぎかぁ、変な名前だけれど可愛い猫だね。触っていい?」
「はい、どうぞ」
おはぎをナディーヌ姉さんに渡すと、ナディーヌ姉さんは喜んでおはぎを撫でまわしていたわ。
「キアラ、私も良いかしら?」
「はい、フローラ姉様も可愛がってあげてください」
「ありがとう」
フローラ姉様も猫を可愛がりたかったのね。
ナディーヌ姉様からおはぎを受け取ったフローラ姉様は、珍しく表情を緩めていたわ…。
フローラ姉様の幸せそうな表情を見れただけでも、召喚魔法を選んでよかったと思うわね。
『ボス、何をすればいいニャン?』
『そうねぇ、小鳥を生かしたまま捕まえて来てほしいわね。その後はおはぎの好きにしていて構わないけれど、リドの所にもちゃんと行くのよ!』
『わかったニャン!』
フローラ姉様から解放されたおはぎが仕事を聞いて来たから、適当に命令して見たわ。
おはぎは走って小鳥を捕まえに行ってくれたのだけれど、猫が小鳥を捕まえられるとは思っていなかったので期待はしていなかったわ。
だけど、私が魔法の訓練をしていると、青色の小鳥を口に咥えたおはぎが戻って来たわ。
『ボス、捕まえてきたニャン!』
『おはぎ、偉いわ!』
猫って小鳥を捕まえられるのねと驚きつつ、頑張ってくれたおはぎを優しく撫でてやったわ。
折角だし、小鳥も使役して見たわ。
『こんな猫に捕まるとは、ついて無かったピヨ』
『それは残念ね。そして私にも捕まったのだけれど、貴方に名前はあるのかしら?』
『名前は無いピヨ』
『じゃぁ、貴方の名前はラムネよ!』
『ラムネピヨ』
『ボスはネーミングセンスがないニャン…』
『うるさいわね!では、おはぎとラムネに命令します。今まで通り好きに過ごしなさい!』
『分かったニャン!』
『了解ピヨ!』
おはぎとラムネは、私のもとから離れて行ったわ…。
これで、最近訓練で使いこなせなくなった魔力を消費することが出来そうね。
私の魔力が切れたら、おはぎとラムネは召喚状態が解除されて私のもとに戻って来るわ。
私の魔力が回復すれば、また呼び出すことが出来るし、魔力の消費量次第では動物を増やす事も考えて行かなくてはならないわね。
暫くは様子見ね。
魔法の訓練を終えた後、私は自室に戻って召喚魔法の魔法書を読みなおす事にしたわ。
召喚魔法とは、動物や魔物と契約し、使役して戦わせる事が出来る。
動物や魔物との契約は、自分より弱い物か、術者一人で弱らせた物に対して行う事が出来る。
一度契約した動物や魔物は、術者が解約しない限り、一生使役する事が出来る。
契約した動物や魔物は、術者より魔力を得る事によって活動し、餌を必要とはしない。
契約した動物や魔物を召喚している間は、常に魔力を一定量供給され続けて行く。
消費される魔力は、契約した動物や魔物の強さに比例して消費量も上がって行く。
召喚していない状態だと、魔力を消費する事は無い。
召喚した動物や魔物が戦闘不能になった場合は送還した状態となり、再召喚出来る様になるまで一日を要する。
術者は、召喚中の動物や魔物の一体と五感を共有する事が出来る。ただし、その場合術者は行動不能となる。
私は弱いので、魔物を使役するのは無理そうだわ。
おはぎとラムネを使役できたので、動物は問題なさそうね。
でもそれは、私より小さい動物に対してだったし、馬は無理そうかしら?
商売をするのであれば、馬は使役したい所よね。
まぁ、すぐに商売を始められる年齢では無いし、馬を使役する方法もあるかも知れないわ。
それから、契約数に関しての記述が無かったのだけれど、限度は無いのかしら?
まぁ、まだ数を増やせるかも分からないし、契約できなくなったら、不要なのを解約すればいい事よね。
慌てず、ゆっくりやって行こうと思うわ…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます