第30話 連休明け・5月8日月曜未明

「それでは、森川先生、わたくしからの提案です。この論争は、来たる2023年5月8日月曜日の早朝、未明より開始ということで、おいかがでしょうか?」


 少しばかりの沈黙が両者間に漂う。

 まだ、世は明けていない。


「よろしい。米河さん、貴殿の提案に異存はありません。喜んで、この論争を受けて立とうではありませんか」


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 かくして、実務的な? 話はすぐにケリが付いた。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


「では、どの争点から論じて参るか、とは申しても、最初の争点整理通りに行くわけもなかろうが、最初の論点だけは、決めておく方が無難であろう。この数日間にも、お互い思考の時間が与えられることとなろうがね」

「その点についても異存はありません。それでは森川さん、ここはまず、養護施設という場所における大人と子ども、要するに、職員と児童という関係について、まずは根本から確認していくことが肝要ではないかという趣旨であります」


 この提案に、森川氏はすぐに応じた。


「それでよろしかろう。あなたは児童側、私は職員側にいたわけであるが、それぞれの立場から、あの地の職員と児童の関係性を、まずはきちんと検証して参ることが必要であるということじゃな。よろしい。それを今回の起点としましょう。さてこれが、どこまでのお話になるかはわからんが、ともあれ、そこから、な」


・・・ ・・・ ・・・・・・・


「それでは、本日はここまでといたそう。では、5月8日朝、参りますぞ」

「わかりました。どうぞお越しくださいませ」


 その日の話は、ここまで。

 そろそろ、夜が明けだす頃。

 米河氏は、改めて寝直した。

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