第28話 論点抽出ダイジェスト 2

10 養護施設の生活は、「温室」か?

 森川氏 そのような言動をする職員がいた事実は認める。

 米河氏 森川さんに同じく、事実は認める。

 森川氏 私個人としては、かの地の子どもたちの生活が「温室」であるという表現には違和感を持っている。そんないいものかと。ただ、そのように表現したくなる職員の意識に対しては、一定の理解をしないではない。

 米河氏 あの地の子どもらにとって「温室」とは何か。そんな大層な環境か? 買い被り・思い上がりも甚だしい。温室農家に失礼である。そのような言動をする職員らの職業意識は言うほど高いわけもない。そういうのを恩着せがましいと言うのだ。


11 養護施設職員の社会性について

 森川氏 一般論で逃げるのかと言われるかもしれないが、個々の職員を見ていく限りにおいては、玉石混淆の一言に尽きる。こういってしまえば身もふたもないが、優れた人もおれば、もう一つな人もおられた。私自身は自らはもとより、よつ葉園内外の養護施設関係者各位に対しては、自らには厳しく、人には優しくをモットーに職務に励んできたつもりである。私が知る中でも、個々の職員の得手不得手も含め、社会性の有無、水準の高下には思うところはありました。言うまでもなく、自らが預かった地の職員各位の社会性の全体のボトムアップは肝要である。

 米河氏 私の経験上から思うに、全体として高いとは言い切れないという印象が強い。私が高いとは言わないが、低いとしか言いようのない人物も少なからず見聞きしている。その原因がすべて森川元園長にあるなどと言うつもりはもちろんないが、私も知る職員各位の元締めにおられた森川さんの御意見を、ぜひじっくりお聞きしたいと存じます。職員各位の社会性のボトムアップは、何も養護施設に限らずどの職場でも学校でも重要であるが、何より、個々のレベルアップこそが肝要である。


12 相部屋で過ごさせることの是非

 森川氏 昭和期に関しては、少なくとも中学生以下に関しては個室を与えるだけの物理的な場所だけでなく、仮にあったとしても、それで対応できるだけの状況下にはなかった。相部屋のような場所でも、子どもたちにとっては他者との協調を学べるという場所であったと思うが、いかがであろうか?

 米河氏 時代の制約を考えれば仕方ないところはあったろう。津島町時代では、空いている木造園舎の一角を高校生の個室にあてていた例があったという記憶がある。もっとも移転後は、その点はかなり後退していた時期もあると聞いている。そんなところで協調性が学べるかという疑念が、私には強くある。そこを明らかにしたい。


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