第24話 人を残すは上。では、かの地の当時の現実は?
米河氏は、森川氏からの有無を言わせぬ勢いに飲まれかけつつも、自らの分析をもとに、自信も尊敬する野球人の言葉と同時に向合い、答えていく。
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少し話を8年前にさかのぼらせて頂きます。
これは前々回の選挙で、常木が市議会の副議長をしていた後のものです。
このとき同じ政党筋で、別の若い候補者を少し外れの地域に擁立されました。
その分、票が割れたようですが、相手の若い候補者が落選し、常木のほうは難とか、3300票程度で、下位でしたが無事当選しました。
その若い候補者ですが、どうも、評判がよろしくなかったようです。
選挙事務所内の雰囲気も、そのような人物を立てたということで、あまりよくなかったですね。そのあたりのことは、ここでは述べません。
さて、前回の選挙でもし常木が引退していたらどうだったか?
おそらく、今回のような形にはなってないでしょうね。
明らかに常木票というのが3300しかなければ、1人は当選できそうにも思えますが、しかしいささか心もとない票数です。
なぜなら、常木も多選のベテラン議員の例にもれず、高齢になっておりますから。
その中の何百票単位で、物故者や転出者がいますからね。
しかしながら、常木は次の選挙で5000票近くを獲得した。
これは、11人中4位当選でした。
それだけの票が、行き場をなくすわけですよ。
せめて地元は、そのうちの半分近くを固めれば、あとは後継者の努力で、当選圏内に入り込んでいくことも十二分可能な位置づけになった。
もう一人の女性候補、私より1歳下の方ですが、その方は、常木票を上乗せできただけでなく、それよりも地元票を固めていくことが基礎になった感じですかね。
それと、政党関係者や女性票、もっとぶっちゃけご祝儀相場的な上乗せもあってのトップ当選であると思われます。
かくして、常木は引退と同時に、自らの前回の票を最大限生かして、2名の新人市議会議員を誕生させました。
つまり、「人を遺す」ことができたというわけです。
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ところで、養護施設という場所において、この言葉がどのような意味合いを持ってくるかを考えてみたい。
そもそも、あの環境は人を遺すというのは言い過ぎにしても、人を育てて世に送り出すということがきちんとできているのか。
単に「卒園」と称してその施設を「退所」させ、それで社会に放り出していただけではないか。なぜ私が過去形にしたかと申しますと、今の児童養護施設についてまで批判の刃を向けてはいけないからです。
あくまでも、過去、区切るなら、昭和末期の私の時代、あるいは、私が生まれる前後の、森川さんが園長をされていた時期のよつ葉園を検証する上で、この論点は決して避けることはまかりならないものであります。
よつ葉園だけを論じて当時の児童福祉、養護施設全般を判断するわけではありませんが、まずは、よつ葉園という場所がどうであったかを、私は問いたい。
そうすることで、当時の児童福祉、そして今の児童福祉の課題点が見えてくるのではないかと思料する次第である。
以上、森川さんにおかれてはいかにお考えでしょうか。
御卓見を伺いたく存じます。
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