第21話 さらなる「進行協議」継続・決定さる

 森川氏は、少し態勢を整え直し、落ち着きを取り戻した両者間に言葉を入れ込む。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 米河さん、あなたは実に大したものじゃ。物事を実に冷徹に、シビアに分析し、対応策を考える御方であることは、今の発言で、しかとわかった。

 そのくらいの人物であるからこそ、私は、あえてこの生死の境に出張って、貴殿と論争を所望している。

 これは別に、あなたに対してゴマをすっておるのでも、まして見くびっておったというわけでもない。もちろん、あなたを「試した」わけでもない。


 我々が論争すればするほど、今のように荒れる事態も考えられよう。

 しかし、それも包み隠さず、この世とあの世にきちんと痕跡を残さねば。

 私から見て生前の世への公開は、貴殿に任せる。

 異議は述べるかもしれぬが、基本的にあなたの表現で構わん。

 その代わり、こちらの世は私に任せられたい。

 もっとも、私の述べたことはこちらではすぐに皆さんに伝わるように仕向けておるから、貴殿の心配・懸念されるところには及ばぬ。


 どうじゃ、今日のところは、このあたりでやめようではないか。

 夜も明けてきておる。

 貴殿も今生での仕事が待っておるでしょう。

 次回であるが、4月の初め頃を目途に、この度の争点整理を踏まえて、さらなる進行協議を実施したいと思うが、おいかがでしょうかな?


・・・ ・・・ ・・・・・・・


「それでお願いいたします。当方も、それまで時間をいただきたく存じます」

「それから、私は夢で生前御縁のあった方に出向いておるが、貴殿のほうは何か?」

「別に問題ありません。そのほうが、より公開性も高まりましょう」

「4月初めは都道府県と政令市の選挙があるが、その頃でも、よろしいか?」

「もちろん、構いません。今回はあまり選挙に出向けませんし、明け方あたりの時間帯でしたら、特に私のほうは差し障りありませんので」


 かくして、次回の争点整理の日取りも決まった。

 夜は完全に明けた模様。このところ、日の出は早くなりつつある。


 森川一郎氏は、自身の居場所へと戻っていった。

 米河清治氏は、起きあがって、今生の仕事を始めた。

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