第19話 少し、ぶっちゃけさせていただきます。

 本日は、少しぶっちゃけた視点というか、まずは表現から争点を抽出したく存じます。人生の大先輩ともあろう御方には大変無礼なところあるやもしれぬが、その点については、何卒小生の意をお汲み頂き、御理解いただければ幸いであります。

 それでは、いざ、申上候。


 貴殿ら福祉関係者もそうであるが、対象となる人物に対して、やれ支援だの援助だの奉仕だのと、いっぱしのことをされているのは大いに結構で感謝されよう行為を為される方々の一部、否、少なからずの者に見られる傾向を述べる。

 そのような御仁らは、いざ、その対象者が力をつけ自立しよう、ましてやこの世界に大きく羽ばたいていこうとするその矢先になると、手のひらを返しているという自覚なきまま、その足を引っ張り、その地に留め置かんとするが如き対応をとる者がおる!

 貴殿の弁にも、いささかその傾向見られし表現を、よつ葉園50周年の山上元保母の回想より発見せり。

 確かに貴殿の弁においては、その対象者への軽挙妄動の如き方向に向かわざるべく訓戒を与えていることは確かにその通りであり、特段の利権と称すべき利益を得ようとするに非ざりしことは認むるが、されどその根本にある姿勢に、先に小生の述べし傾向を感じざるを得ない要素を、余は感じ取れり。


 これは貴殿に係る案件ではないが、貴殿組立し養護施設よつ葉園という枠組内においてなお、その要素を認めざるを得ぬ言動を、吾輩は仄聞(そくぶん)せり。

 入所児童に対し必要欠くべからざる支援を与えしは当然の責務とみなすにやぶさかでないところ、いざその地を離れ、自らの足で歩むべきその期に及んでなお、よつ葉園という枠内に留め置きていくばくかの金銭にとどまらずオドレラの利権を、相手に対する支配の如き対応をせんとする児童指導員ら幹部職員あり。

 猶(なお)、名誉のためにその者の名は伏せる。


 本論点に関する貴殿の見解を、余はとくとお尋ね申し、論争の糧とすることを大いに切望するものである。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 述べるに従い大上段を切ったが如き表現をさらに用いる米河氏の弁の意を、かの老紳士は、難なく汲取り切ったようである。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 貴殿の弁、確かに了知せり。

 本件は、争点として扱うに吾輩といたしてもやぶさかならざるものなり。

 よって、本論点は貴殿の弁をとことん受けて立つ所存である。

 然れども本日は争点整理故、この論点についてのこれ以上の言及は避けるが懸命と思料するが、貴殿の見解や、如何に。


~ 当方も、本日の当争点言及は避けるが吉と思料いたし候。(米河氏)


・・・ ・・・ ・・・・・・・


「しかし何故、君はそういう表現を使って述べて参ったのか?」

 いささか呆れ気味の老紳士の弁に、かの青年将校が返答する。

「そのような表現で述べるのが妥当であろうと思ったまでのことですよ」

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