第18話 WBC日本優勝。そして、翌日未明。

 2023年のWBC大会は、日本がアメリカを下して優勝した。

 現地時間はともあれ、日本では朝8時から12時前までの4時間弱のドラマ。

 この日は前日と違い祭日ではない。

 気もそぞろ、仕事もそぞろに、この野球の戦いを見た人は数知れず。

 世間では、号外があちこちで配られた。

 昼食などものかわと、多くの人が号外に手を出した。


 その日、米河氏は所要のため午前中は別の用件で出向いていた。

 途中、ネット情報で彼は日本優勝の報を受けた。


大谷翔平 VS マイク・トラウト


 大会運営者の思惑は、この夢の対決を描くことに大成功を収めた。

 そして、興奮冷めやらぬその日の夕方、彼は居酒屋のテレビでその試合を見た。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 一杯飲んで機嫌よく帰り、早くから寝込んだ彼は、夜中に目を覚ました。

 彼にとっては、これはいつものことである。

 トイレに行って戻ると、今度は寝床に戻らず、その横の肘掛椅子に腰かけた。

 2時間ほど仕事をした彼は、再び、電気を消して横になった。

 午前4時。まだ、外は暗い。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


「お疲れのところ、申し訳ないな。日本が野球でアメリカを倒して世界一とは、沢村栄治対ベーブ・ルースの時代を知る私としては、隔世の感、大ありじゃ」

「そうでしょうね。プロとアマの境界上における「いがみ合い」も、いい意味で雪解けしつつありますし、これも、ライバルとなる多協議のおかげでしょう」

 老紳士は、休み始めてしばらくたったころを見計らって、米河氏のもとに来た。


「それでは、昨日の争点整理の続きを参りませぬか」

「わかりました。それでは、参りましょう」


 かくして、世代と時空と生死の境界を越えて、争点整理は続く。

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