第5話 最終戦争を迎えし新年の挨拶 2
「ところで貴殿は、昨日まで、半田山小学校の同級生2人と津山に参っておったそうじゃな」
「ええ、確かに参っておりました」
「彼らはどうやら、わしとあんたの「最終戦争」を観戦する気満々であるな?」
「そのようですね。彼らの今の仕事にとっても、何らかの糧になることが見込めるのがその最大の理由ではないかと、私は思料しております」
「それはもちろんあるじゃろう。単に懐かしいからとか、同級生で仲が良かったからという理由だけで、彼らがあんたの言動に着目しているわけではないことは、明らかである。それは、私もわかっておる」
それではさて、どこからその「最終戦争」の火ぶたが切られるのであろうか?
森川氏は、米河氏に尋ねた。
「あんた、今年は、一斉地方選挙の年であろう。貴殿の父上と同学年になる先輩が高齢のため引退とも、伺っておる。それは事実か?」
「事実であります」
「そうか。その方は、何じゃ、大槻君よりも3学年ほど下の方のようじゃな」
「それも、事実であります」
「その方の後継者は、擁立される見込みかね?」
「はい。すでに実質的に決定しております。来週あたりで事務所開きです。ですから来週は倉敷や津山等への出張はありません。岡山のこのホテルに土日、宿泊して仕事に入る予定を入れております」
「それは、コロナ対策のあのキャンペーンを利用したものかね?」
「そのとおりであります。違法行為ではありません」
「そんなことはハナからわかっておる。何も貴殿の行為を咎める意図はない」
「これがあの山上さんあたりなら、家庭というものをまったく顧みないどころか一切考慮に入れないことでいちゃもんとも因縁ともつかぬことを仰せのところでしょうかね。今の私なら、何百倍返しでお返しして差し上げるところだが」
「まあ、待ちなさい。そんなことでくだらないやり取りをしている場合でもなかろうが。なぜ、よつ葉園という場所に関わる最終戦争に、私が出てくるのか。その理由を考えれば、敵に塩を送るわけではないが、いまさら私以外の元職員と称される人や、元児童も含めて、誰とやり合っても無益無駄な行為であろう。別に弁チャラを述べるつもりはないが、それが貴殿のためでもありましょう」
米河氏、いささか神妙に答える。
「それはもう、十二分に承知いたしておりますよ。いまさらそんな無益な叩きのめしをするような言動は、致しませんよ」
まだ、外は明るくなっていない。
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