いいわけはむようですわ!

瑞多美音

いいわけはむようですわ!


 数日前から、家族や使用人の様子がおかしい……なにやらバタバタしているのにわたしとシャリーの姿を見たとたんよそよそしいのです。


 「シャリー、なにかおかしいですわ」

 「たしかに……」

 「きっと、よからぬことをたくらんでいるのですわ!」

 「そうかも?」


 どこかに遊びに行くとか、楽しいことをするとか……わたしとシャリー抜きで。

 シャリーは乳母の娘で生まれてこのかた家の敷地から出たことのないわたしにとって、姉妹であり親友でもあります。


 広間の方があやしいとにらんだわたしとシャリーは使用人たちの目をぬすみ忍び込んだ……やはり、思った通りだった。みんなが集まって何かしてるじゃないですか!


 「いいわけはむようですわ!わたしとシャリーをのけ者にするなんて、ゆるせませんわー!」

 「フレイヤさまー……」

 「あーあ、せっかくのサプライズがぁ……」

 「あらあら……」

 「お父さま、サプライズとはなんですの?」


 ほうほう……この国には5歳になる年の花の月に誕生日とは別の盛大なお祝いをすると?


 5歳になるまでは家の敷地外に連れていってもらえなかったのも危険だかららしい……どうやら5歳以下の子供は悪い精霊に連れていかれてしまうことがあるんだとか……



 「5歳になる頃ようやく自身の魔力が安定し、身を守る魔道具が使えるようになるの。そのためいろいろな人を招いて盛大に祝うのよ」

 「ほほー」


 なんだ、わたしとシャリーをのけ者にしてみんなで遊ぶんじゃなかったのかー!


 わたしとシャリーのお祝いだったんだー!

 お兄さまやお姉さまたちが外に遊びにいけるのにわたしとシェリーが家から出られなかったのはいじわるじゃなかったのかー……


 「では、わたしたちはあさってにはじめて知ったふりをしますわー」

 「が、がんばります」

 「行こう、シャリー」

 「はい!」


 そそくさと部屋に戻り、ふたりはなにごともなかったかのように過ごした……家族や使用人たちは生温かく見守った。


 

 数日後、盛大にお祝いされたフレイヤとシャリーはそれぞれの両親から護りの魔道具であるブレスレットをもらい、はじめての外へ繰り出した……


 「わたし、もう少し家のなかでいいですわ」

 「……わたしも」


 だって、思っていたより楽しくなかったんですもの……やたらキラキラした光がつきまとってきて前はよく見えないし、それに光に服をひっぱられて転びそうになったりして……


 「あっはっはっ!………ふたりは精霊に好かれやすいようだ」

 「そうね。今日寄ってきた精霊たちはいい子ばかりだったけど中には連れ去ろうとするものもいるからブレスレットは手放さないようにね」

 「「はい!」」



 後にフレイヤとシャリーは精霊たちと大騒動を起こしたりもするのだが、その話はまたいつか……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いいわけはむようですわ! 瑞多美音 @mizuta_mion

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ