部屋荒らされました。

くすのきさくら

キャンキャンキャン(確保しました!)

「――ただいまー。って、今日は誰もいないん……なっ!?」


 17時過ぎ。いつも通り俺が学校から家に帰ってくると――室内が荒らされていた。

 まただ、今月はこれで多分7回目。

 玄関にあった俺の予備の靴や、親や妹の靴が散乱している。さらに玄関から伸びる廊下にはティッシュペーパーや新聞がボロボロになって散乱している。さらにさらに、リビングでは柵が倒れ。床の一部は水浸し。チャンネルが床に転がっている。

 今日はかなり激しく漁ったようだ。いや――追いかけまわったのかもしれない。

 でも最近はよくあることなので『またか。対策しないとだめだろうな』などと、ちょっと呆れつつ思いながら。とりあえず荷物を置きに安全地帯。2階の自室へとまず向かう――が。


「なっ!?柵が開いている……」


 普段は閉まっているはずの2階への柵が開いている。俺は慌てて階段をのぼる。その最中も小さな足跡が複数。多分リビングが濡れていたから。それを踏んだ後2階へと向かったのだろう。あと、洗濯物も持ってきたのか。階段に親父の靴下が捨てられていた。なぜか――親父の靴下は良く引っ張り出されているんだよな。これは未だに何故なのか謎だ。


 ちなみに2階の廊下は1階よりはマシだ――って、マシじゃなかった!なんかいろいろ散らばっている。さらに俺の部屋のドアだけ開いている。って、俺の部屋の前だけものが散乱している。

 俺は急いで自室を確認に向くと――崩れ落ちた。


 俺の室内はジオラマが作ってある。鉄道模型だ。昔からコツコツと作っていたのだが――建物は踏みつぶされ。木々はなぎ倒され。一部車両は横転している。今回の被害総額は――なかなかのものだろう。って――何故だ。俺はしっかり施錠していたはずなのに――。


 ワン(おかえり)。


 愕然とする俺の横に小さな影と小さな影より少し大きな影がやって来た。小さな影は少し大きな影に咥えられながらもしっぽを振り俺の方を見て吠えた。そして俺の横に2つの影がやって来た。

   

 ワンワン(犯人です)。


 何を言っているのかはわからないが。なんとなくそんな気がして俺が勝手に訳しているが――登場したのはうちの家族ペットだ。妹が親頼み込みやって来た新しい家族。ワンちゃんである。

 ちなみに小さい方は数週間前に来たばかりなのだが――めっちゃやんちゃだ。が、めっちゃかわいい。いや、もう1匹の方もめっちゃかわいいがな。

 とにかく妹と世話の取り合いをするくらいにどちらもかわいい家族ペットだ。ちなみに先に居た方は大変賢いワンちゃんだ。今も多分暴れまわった犯人確保をしてくれたみたいだからな。


 って、何故俺の部屋で走り回った――普段ならしっかり施錠されているはず。それに朝もしっかりこの対策をするために閉めていたはずなのに……。

 いや、1週間くらい前にもやられてね。それで対策をしたはずなのだが――。


 ちなみに何故こんなことが起こっているかというと。小さい方がやんちゃで、1階のリビングにある2匹の日中の居場所スペースの柵を最近タックルで破壊して脱走が目立つから。だから2階とかにも柵を――だったのだが。ついに柵。ドアすら開けれるようになったか――にしてもめちゃくちゃだ――ショック。

 だが、怒らない。いや、かわいすぎて怒れない。でも――一応注意だけしておくか。


「――勝手に脱走するなよ」


 ワン(楽しかった!)

 クゥ……(すみません。チビが暴れて――)


 2匹がそれぞれ返事をする。ちなみに何を言っているのかはわからない。でも――言い訳をしている感じはないので――かわいい。なお、すべて俺の予想なのでもしかしたら――だが。かわいいから言い訳とかはないだろう。にしても――ほんと2匹ともかわいい。ちなみに今は2匹とも俺に甘えてきている。足にすり寄ってきている。かわいすぎる。ダメだ感動で泣ける。


「ただいまーって、泥棒!?」


 すると玄関の方から驚いた妹の声が聞こえてきた。そしてすぐに足音が近づいてくると。俺の横に居た2匹が足音の方にしっぽを振りながら妹のところに移動していく。


「わっ、また脱走したの?ってお兄ちゃ――わぁお」


 そして2匹を抱きかかえた妹が俺の部屋にやって来た。


「――おかえり」

「いや――荒らされたね」

「閉めておいたはずなんだがな――まあ仕方ない。また直すよ」

「お兄ちゃんが優しすぎる件!」

「何言ってるんだか」

「あっ、そうそうお兄ちゃん朝本借りたからー友達に頼まれてたの思い出してね。パパっと――あっ」


 いつも通り元気な妹が何か言っているな――程度にショックを受けている俺は思っていたのだが。返事をしつつ気が付いた。ちなみに妹もなんか気が付いたらしい。


「あ、ああ……」


 ――うん?ちょっと待て、朝入った?


「じゃ、じゃあ――私は散歩行ってこようかなー。あははー」


 明らかに妹が逃走しようとしている。


「なあ、妹よ。朝来てドア閉めたか?」


 俺は妹に聞くと視線を逸らされた。


「……さ、さーて。お散歩行こうかなー」

「ちょい待て、妹よ」


 ガシッと確保。すると、妹に抱かれていた2匹が解放される。


 ワンワン――ワン(リビングで待ってます。ほら、行くよ)

 キャウ(自分で歩ける!)


 そしてまた少し大きな方が小さい方を加えて部屋を後にした。本当に賢い。そしてどちらもかわいい。


「お兄ちゃんタイムタイム。私今月お小遣いピンチね?うん。って、じゃなくて、関係ないよ?ないからね?」


 特に俺が聞く前から何か勝手に言っている妹。とりあえず真犯人?だろう。朝バタバタしつつ俺の部屋に入り。ドアを閉めずに。さらに階段の柵も絞めずに学校に向かったのだろう。こいつちょくちょくやらかすというか。俺の部屋も自分の部屋みたいに出入りしているからな。

 ちなみに俺たち仲の良い兄妹である。


「お兄ちゃんは家族に優しんだよね?私も家族ーだから――今回はセーフ」

家族ペットには優しいぞ?」

「おかしい。なんかおかしい!妹にも優しくー。かわいい妹にもー」

「かわいい妹の為を思って、しっかり指導。弁償をさせる」

「なんでー!?って、だから今月ピンチ!」

「妹よ」

「な、なに?」

「い・い・わ・け。なし」

「ぎゃああー」

 

 家族ペットに優しい俺。この後しっかり妹に指導。弁償をさせたのだった。

 あっ、ちなみに散歩は遅くなったが。妹とどちらがリードを持つか揉めつつ一緒に行ったぞ。


(了)

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部屋荒らされました。 くすのきさくら @yu24meteora

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