夜中の不幸は三度訪れた

御剣ひかる

強面警官の後ろにぬいぐるみは卑怯

 眠れない夜にちょっと散歩でもと、ぶらりと外に出たのがそもそもいけなかったんだ。


 公園に差し掛かったところで急にひやりと空気が変わった。

 嫌な予感通り、出たんだ。

 お決まりの幽霊スタイルの女が。


 白い長いワンピースで、黒髪を前に垂らして、ちょっと前かがみになってふらふら歩いてくるんだよ。月明かりで青白くてさ。より幽霊感満載っつーか。


 そりゃもう怖いったら。


 なんでか判らないけど商店街の方に逃げたら大丈夫だろうって思ってさ。多分人のいる方とか、ちょっとでも明るい方へとか無意識で考えてたんだろうな。


 けど今度は別のに遭遇しちまった。

 本屋の辺の路地裏で不良達に絡まれたんだ。


 相手は五人、こっちはひょろいのが一人。


 その時現れたのが、アマチュア格闘家の若い男だった。

 彼の名誉のため名前は伏せとく。


 彼が不良達を筋肉で説得して、よかった、助かったって思ってたら。


 追いかけて来てたんだ、幽霊がっ!

 俺だけじゃなくて皆にも見えてたみたいで、不良も格闘家もひょろ男も関係なく悲鳴あげてさー。


 そこに巡回中の警官がやってきて、まとめて交番へ連れてかれちゃったよ。

 夜中に何を騒いでいるんだ、って聞かれたから、起こったことを順番に正直に話したんだ。


「幽霊なんかいなかっただろう。くだらんいいわけをぐちゃぐちゃしてるんじゃない!」


 怒られた。


 おれらまとめてアンラッキーセブンだったって感じ。ま、もとからこっちにうざ絡みしてきた不良は自業自得かもしれないけど。


 ところでさ、多分あれ落とし物か忘れ物として届けられた物なんだろうけど警官の後ろにウサギのぬいぐるみがあったんだよ。


 強面の警官とかわいいぬいぐるみが一緒に視界に入ってきて、なんか笑えてきて。

 笑っちゃいけないと思うと余計に笑えるのなんでだろうな。

 にやけるなってまた怒られたよ。


 あそこに置いてたのは卑怯だと思う。


 とにかく夜の散歩は要注意だ。



(了)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夜中の不幸は三度訪れた 御剣ひかる @miturugihikaru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ