言い訳に屈した私と屈しなかった美人な同僚

鹿嶋 雲丹

第1話 言い訳に屈した私と屈しなかった美人な同僚

 作っても売れない。

 気を使って綺麗な写真を撮って、説明文考えて入力して。

 それでも売れない。

 何の話かと言うと、もう始めて四年以上になるハンドメイドの話だ。

 思い悩んで辞めたのが、始めて二年目くらいの事だった。

 そんなある時、美人の同僚から言われたのが、やったほうがいい! の一言だった。

「いや、だって売れないし」

「売らなきゃ売れないよ」

「ハンドメイドのアクセサリー売ってる人、沢山いるし」

「いるねぇ」

「沢山いるから、見つけてもらえないんだよね」

 私はもっともらしい言い訳を並べたて、だからやらない、に話を持っていこうとした。

「でも、もったいないよ。私は好きだな」

「うん……そう? そう言ってもらえるのはすごく嬉しいけど」

「やりたくないの?」

「いや……やりたくないわけじゃなくて、売れないから」

「やりたいならやろうよ!」

 美人の同僚、Eさんはなかなかに強かった。ちなみに私は押しに弱いところがある。美人の押しには特に弱い。

 だが、それだけじゃない。彼女の言う事はもっともなのだとも思うから、自分の言い訳を貫けなかったのである。

「う……うん……でも、売れないかも」

「売れるよ! とりあえず私が買うから!」

「あ、ありがとう」

 彼女は本当に私からピアスを2個も買ってくれた。

 それはとても嬉しいことだったが、彼女と別れてからもずっと考え続けていた。

 ネット販売を続けるか、どうするか。

 この時の私には、ひたすら自信がなかったのだ。

 ところがこの後、さらなる後押しがやってくる。

 それは、楽○市場のセールス。

 嘘か真か、セールスに電話口で褒められて、私はすっかり舞い上がった。

 結果的に一年で撤退したが、私のハンドメイド熱はそこから回復した。

 今でも細々と続けているのは、私の言い訳に屈することなく笑顔でエールを送ってくれた、Eさんのお陰だ。

 本当に、人生どこでなにが起こるかわからないものである。感謝。

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言い訳に屈した私と屈しなかった美人な同僚 鹿嶋 雲丹 @uni888

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