第2話

「何か分かったことあった?」

部屋に戻るとすぐアレストに話しかけられた。ベッドに座っている。

「友好的だったよ」

「え、そうなの?意外だな」

「中身は人間だと思う。番号がついてて『2』って言うんだって。あ、髪の毛が落ちてたよ」

「髪の毛?」

拾った毛をアレストに見せる。

「茶色い毛だけど、見覚えはある?」

「……茶色か」

アレストは暫し目を閉じた。記憶を辿っているのだろう。しかし、何も思い出せない。首を横に振る。

「分からない……か」

「俺は俺の下の名前しか思い出せなくてなァ……すまない」

「ううん、あたしもそうだから」

「ははは……そうだったね」


「2サンは記憶の失う前の俺を知っているから俺とは話したくないのかもしれないな」


「え?」

「いや、なんとなくだが……。あんたのことは友好的に見ていそうだが、俺のことは……」

「そんなことないよ、アレストも話してみたらきっと変わるよ」

「そ、そう?いや、だがなぁ、だが……」

「アレストって意気地無しなんだね」

「う……だって……」

「もう!一緒に話しに行こう!今、手がかりは2さんだけなんだよ!」

ノアがアレストの腕を引く。しかし、アレストは動かなかった。

「ちょっと、立って」

「……無理だ」

アレストの目には涙が浮かんでいた。

「無理なんだよ」

「そんなのわかんな……」

「俺はきっと極悪人だったんだ」

「……」

「2サンは、ほかの役人も……それを知ってる。だから俺とは誰も話そうとしない。ここは煌びやかだが、奴らの中では牢獄なんだろう。これは罰なんだ。ここから出ることは償いにはならない」

「どうしてそんなこと思うの……?」

「……俺しかまともに生き残っていないからさ」

「あたしは生きてた!」

「……俺とあんたしか」

「じゃあいいじゃん」

「……だが」

「あたしはアレストの過去は分からない。本当に極悪人なのかもしれない」

「……」

「けど、ここでしぬのを待ってるより……動いた方が償いになる。多分」

アレストは何も言わない。

「……とにかく、あたしは情報を集めるからね。諦めないから」


「待ってくれ」


「俺も……」


「……よく考えたら、1年しか経っていないんだ。まだ諦めるのは早いよな」


「うん!」

ノアがアレストの大きな手を握る。

「一緒にここから出よう!アレスト!」

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