再起少女[リブートガール]
もう一回、もう一回。
私は今日も頑張ります。
——寒いこの季節。私は告白した。好きな先輩に。結果は——正直失敗だったと思う。やり直したい。そう思って寝た。
でも今日頭痛がして目が覚めたら、昨日になっていた。
日付を確認して、起き上がって、時間を見て、不思議に思っても、また寝る。
頭痛がして、また起きて、全てを理解して私は学校に向かう。
やることは同じ。どうせ1日増えただけなんだから。変えたって仕方ないんだ。
昨日と同じ課題を出して、昨日と同じ授業を受けて、昨日と同じご飯を食べて、昨日と同じ部活に行って、昨日と同じところに先輩を呼び出して、昨日と同じ反応をもらって、昨日と同じ電車に乗って、気晴らしに昨日と同じ喫茶店に寄って。全部昨日と同じ1日をおくった。そして昨日と同じ時間に寝る。
耳鳴りがした。
「そレで良ィの?」
耳鳴りが問いかける。
「良いわけ…ないじゃん」
涙ながらに答えて、そのまま眠った。
耳鳴りがしてまた起きる。
私が後悔して止まない憎い一日だった。置き時計を見るとその横にはボタンがあった。こんなもの私は知らない。使い方は不思議とわかる。ひとまずこれを持って、学校に行こう。
昨日と一昨日の私とは違う。昨日とは違うご飯を食べて、昨日と違う人と話して、昨日と違う告白をして…
昨日と同じ返事をもらって。
私はボタンを押す。
—再起動—
ボタンを押せば全てが元通り。告白したことも、ご飯を食べたことも、お金を使ったことも、全部、全部、元通り。
今日も、明日の今日も、明後日の今日もその次の今日もそのまた次の今日も告白をする。もう一回、もう一回、もう二回、もう三回、何回だってやり直せる。そんなチカラがこの手にある。これで私はいつか成功してみせる。
——三千五百二十六回。私が告白した回数。三千五百二十六回。私が振られた回数。やっぱり今までがダメだったのかな。もう一回、高校入学からやり直せたら良いのにな。もう諦めよう。そう思って眠りにつく。今日は一度もボタンを押さなかった。
耳鳴りがして、朝起きたら、春だった。振り返る。一目惚れだった。その先輩に近づくために部活に入って、積極的に話そうとしたこの一年。それが失敗したこの一年。全部なかったことになったんだ。今度はもっと完璧に。一度体験しているんだからそれ以上のことができるはず。
部活に入って、臆せずに先輩と話す。ターニングポイント、県大会。先輩は…負ける。あの時私はどうすれば良いか分からずに話しかけずじまいだった。でも今度こそは…
「先輩、大丈夫ですか?大丈夫ですよ。これから先がありますから!」
「…ごめん、今は話しかけないで欲しい」
失敗した。もう一回だ。
失敗した。もう一回。
失敗した。もう一回。
失敗した。もう一回
失敗したもう一回失敗したもう一回失敗したもう一回失敗したもう一回失敗したもう一回失敗したもう一回失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗
もう一回、もう一回。私は今日も頑張れてますか?
三万回の初めましてに、一緒にいた一万五千年。その間の三百六十三万回のありがとう。それに加えて三万回のごめん。三万回のさよならを経験して、私はまだまだやり直す。
六万回は足りてない。二十四万回でもまだ足りない。九十六万回であと少し。百万回でもまだ見えない。もう数なんか数えてない。一緒にいたのはもう無限。初めましては大嘘で、ごめんも全部わかってて、ありがとうなんてもう単語。何億回目の告白も、言葉の意味すら失って。気持ちのことまで失って。
…それでも完璧を求めてやり直し。失敗を恐れてやり直し。
もう一回、もう一回。私はもう頑張れない。
耳鳴りがして、目が覚めたら、人生
素敵な耳鳴りだった。何億回もの失敗で、神が私に教えてる。もう頑張らなくていいって。
もう一回、もう一回。私はもう疲れたようで。
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