第4話 すれ違いと絆

 「私の名は、エシリアよ」


そう、女騎士が言った。

 知っていた……

 彼女の事は、正直知っていたけれど……

 

 まさか俺の〝フィギュアが意思を持つ〟なんてな。


 転生前。


 あの時、トイレの神様と出会った時の事。


 俺はどうしても転生先に、二次元フィギュアの、コレクションを持って行きたかったが、神様には認めてもらえなかったのだ。


 しかし、神様は俺に素晴らしい能力を転生後の俺に授けてくれるらしい。


 その能力は、

 〝フィギュア・コレクター〟


 簡単に言うと、俺のフィギュアコレクションを異世界で召喚し、『実体化』をさせる事が出来る能力だ。

 

 だが……


 今現在は、その能力が俺を窮地に追い込んでいた。


 「エシリアさんですか!素敵なお名前ですね!」


ナミナちゃんは、エシリアに向かってそう口にした。


 確かに素敵な名前かもしれないけれど……

 ナミナちゃんは、エシリアは本性を知らないからな……


 「ふっ、まぁ私の名は良いのよ、貴方の名を教えてちょうだい」


 「わっ、私はナミナと申します!」


 互いの自己紹介が終わった事で、俺を窮地が追い詰める。


 「ところでソウスケ?あんたよくも私の事をべたべたと触れてくれたな!この変態が!」


 どうならエシリアは、フィギュアだった頃に俺が触れた事に怒っているのだろう。


(まぁ、べたべた触れたのは悪かったな。)


 「あぁ、あの時は悪かったな、でもな……」


 そう言いかけた所で、ナミナさんが遮るように口を開いた。


 「えっ!ソウスケさんって女性の体に許可も得ずに触れるような人なんですか……?」


ナミナさんは、落ち込んだのか、暗い口調で俺にそう問いかけてきた。

 

 「いや、そのエシリアの言い方に誤解があってですね」


 俺は、なんとかナミナちゃんに幻滅をされない様に、話を変えようとした……のに……


 「ソウスケさんが、そんか人だったなんて思いませんでした!優しい人だと思っていたのに!」

 

 ナミナさんは、そう言うと俺から逃げるように洞窟の入り口から走っていった。


 おいおい……

 勘弁してくれよ、異世界でも女子に嫌われちゃうのかよ。


 「行っちゃったわね、追いかけなくていいの?」


エシリアは呑気にそう言った。


 「ちくしょう、異世界でもこんなんなのかよ!」


悲しさと、悔しさのせいなのだろうか。

 俺は、ナミナちゃんの後を猛ダッシュで追いかけていた。


 (ナミナちゃん、何処にいるんだ!)


ナミナちゃんを、無我夢中で探していた。


 「おーい!ナミナちゃーん!何処にいるのー!」


 何処にも居らず、俺は僅かに諦めようとしていた。


 「いつまで探しているのよ」


そう口にしたのは、エシリアだった。

 俺の後を追ってきたのだろうか。

 

 「見つけるまで絶対に諦めないぞ」


何故だか知らないが、エシリアに見られていると分かると、よりナミナちゃんを絶対に見つけると力強く思えるな。


 (なんで、エシリアが近くにいるだけなのに安心を出来るのだろう……)


「はぁ、しかたないわね、私も探してあげるわよ」


エシリアは、面倒く下がりながらも協力をしてくれるみたいだ。

 (まぁ、意外に優しいのは知っているんだけどな)


 「是非ともお願いしたいね、誰のせいでこうなっているんだか」


 「自業自得じゃないの、私は本当の事を話しただけよ」


 (たしかにそうなんだけどよ、もっと優しく接してくれよ……ただでさえナミナちゃんの事で悲しいんだから)


「ねぇ、あれ見てよ」


エシリアは、そう言って目線の先に向かって指を指した。


 「なんなんだよ、ナミナちゃんを探すのに集中してくれよ……って、嘘だろ……」


目線の先には、巨大な薔薇の化物と、

 〝ナミナちゃん〟がいた……

  

 「おいおい!ナミナちゃん危ない!」


俺は彼女の元へ〝無我夢中〟で走った。


 ナミナちゃんはこちらに気づいたようだった。


 「ソウスケさん!こっちに来ちゃ駄目です!」


ナミナさんは真剣な表情で涙を流しながら、そう言った。


 (そんな時でも俺の心配かよ!涙も流して怖いだろうに!)


俺はナミナちゃんの前に立ち、洞窟内で、拾った岩を思い切り薔薇の化物に向かって投げた。


 しかし、化物は、根を触手のように動かし、岩を弾いた。


 ーー嘘だろ……

 根にしちゃ固すぎるだろ。


(はぁ、せっかくナミナちゃんを助けにきたのにこの様かよ……ダサい所見せちゃったな)


「たとえ死んだとしても絶対に彼女だけは守らなきゃいけないんだ!」


正直俺は死んでも良かった。

でもナミナちゃんだけは死なせたくなかった。


 俺を信じてくれた人だから!


 俺は死ぬ覚悟で、化物に向かって拳を握りしめ、勢いをつけて走った。


 (俺は死ぬだろう……でも、守ると誓ったんだから守らなきゃだろ!)


 「なるほどね、守るもののためには自分の命も惜しまないのね」


そう口にして、俺の前に現れたエシリアは

物凄い高さで飛びながら、剣を化物に振り下ろした。


 化物は、呻き声を上げながら、呆気なく死んだ。


 「無茶な事をするわね……でもかっこよかったわよ」

 

 そう俺に言ったのは、エシリアだった。

 

 「大丈夫ですか?ソウスケさん、私のせいでこんな事になってしまってごめんなさい!」


ナミナちゃんは俺に謝った。

 ナミナちゃんは何も悪くないのに……


 「悪いのは俺だよ、ナミナちゃんは悪くないよ」


「でも……こんな俺だけど一緒に冒険出来ないかな?」


 自分でも、目から涙らしきものが出てるのが分かった。

 やっぱりカッコ悪いな。


 「私もソウスケさんの事情を何も知らないで、一方的に責めてごめんなさい!」


ナミナちゃんも目から涙を流していた。


 「仲直りは済んだようね」

 

 エシリアは、そう言った。


 「でも、エシリアさんに二度も救われちゃいましたね!」


 たしかに、二度も救われたな。


 「エシリア、助けてくれてありがとうな!あのままじゃ、俺達は死んでたよ」


「わっ、別にソウスケを助けた訳じゃないわよ!私はナミナちゃんを助けるつもりで!」


エシリアよ、ツンデレがばればれだ。


 「私の名前、覚えてくれたんですね!」


ナミナさんは嬉しそうにそう口にした。


 「こんな駄目駄目な俺だけど、一緒に冒険しようね!」


「ソウスケさんは、全然駄目駄目じゃないですよ!」


「ナミナちゃん、こいつに気遣いをする必要は無いわよ」


ナミナちゃんは、優しい言葉をかけてくれたが、エシリアは……


 「おい!エシリア、それは言い過ぎだ!」


「ごめんなさいね、私は嘘がつけないのよ」


「エシリアさん!程々にしてあげてください!」


こうして、俺達のわちゃわちゃとした冒険の続きが始まった。


 

 





 

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変な異世界転生をしたけれど、二次元フィギュアが異世界で実体化しました アサダユウキ @asada1221mini3939311

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