第33話 狗神さまには美の刻印
セントルイスで玉隠し
長崎が生んだプリンスを模写るプリンセス
「ずっとフアンでしたの、貴女のことが……」
うん? ファンじゃなく、不安だと……?
「わたくし達、名字に【美しい】って付くじゃありません?
ですから、こう言うのはいかがかしら?」
ポシェットの中から一本の巻物を取り出す老貴婦人。
【Beauty & Beauty】広げた尺は案外短かった。
「ビューティー&ビューティーですか、悪く無いと思いますよ」
お世辞では無く同意を示すビューリ。又の名を美川◇◇。
渦中の老貴婦人の名前は、狗神茂呂。又の名を美輪◇◇。
このふたりの正式な表記は【Beauty & Beauty =B&B】だ。
ビューリいわく、組むことは決めた。
演ることはディナーショーよりもLIVEだ。ふたりで熱唱したい。
狗神先生は孤児院の名誉館長を務める傍らで、全国津々浦々に飛び回って
貧困撲滅運動に尽力されている。
ああ、詐欺っぽくなるから断っておくけど
狗神先生も、狗神茂呂の二代目だかんな。俺と立場が同じ人間だ。
こう言うこと、あって当然なんだけど、お茶の間側から勝手に憧れて
本人よりも本人らしくなってしまう……
松浦あややちゃんをAIRする
はるな愛さまも俺達SIDEの人間だ。
AI 技術が日進月歩の中で、
AIR技術を発展させるなんてなかなか見上げた根性だよな。
LGBTQヴォイスに注目が集まっている。狗神先生は孤児院の生徒から
ミワーワって呼ばれてるらしい。……ジブリには謝っておく。
湯婆ー婆みたいなカツラも持ってるって仰ってたぜ。恐れ入りました。
シンプルに【LGBTQ & LGBTQ】じゃくどいかな?
「シンプル」かつ「くどい」……?
矛盾めいた説明だが、先生も俺も、ポジション的には同系列だ。
我等がリーダーのMugen巡海に男性の内面に在る
女性性の心情を書き起こした歌詞を発注して貰おうと思う。
春一番が吹く中で、ファスト・ファッションを着込む四十代。
JP 作家:岩永桂 @iek2145
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