白馬の王子様に憧れていたら、騎士になってしまった女

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

白馬に乗った百合

「くっ……どうしてこうなった!?」


 わたしは今、魔王にとらえられていた姫様を馬に乗せて、街を凱旋している。

 みながライスシャワーを、こちらに撒いてきた。

 わたしは英雄だと。

「白馬に乗った勇敢なる女騎士」だと、民衆はわたしを称えた。


 違う違う。

 わたしこそ、白馬の王子様にあこがれていたのだ。


 いつか、白馬に乗った王子様が、わたしを迎えに来てくれると信じていた。

 そのために馬に乗る訓練をした。

 わたしのような野蛮人が乗って、馬が暴れては王子が困るからだ。


 大人になるまで、剣術も学ぶ。

 王子様に操を捧げる前に、オークに「くっころ」されないためだ。


 実際わたしはオークにさらわれたこともある。

 いつまで経っても誰も助けに来ないから、自力で脱出した。

 聞けば、討伐隊はオークにやられてしまったという。

 なんと情けない。

 オークのような下等生物も倒せない王子など、こちらから願い下げだ。


 さらに、不幸なことは続く。


 我が国の王女が、魔王にさらわれたというではないか。

 オークは、先発隊だったのだ。


 わたしは単身、魔王城まで乗り込んで、見事魔王と対峙した。

 他にも仲間がいたが、結局たどり着いたのはわたし一人だけという有様である。

 なぜだ。魔王の軍勢など弱かったのに。


「こんな。こんなはずでは!」

「それは、こっちのセリフだ!」


 よりにもよって、魔王がわたし好みの「白馬の王子っぽいイケメン」だなんて。


「神のいたずらか、闇に堕ちよという悪魔の囁きか。いづれにせよ許せん! 魔王覚悟!」


 わたしは剣を握った。勇者より譲り受けた、聖剣である。


「ふーん、えっちじゃん。おもしれー女!」


 ビキニアーマーというハレンチ極まりない衣装に、魔王がニヤリと笑う。


 あわれ姫様は、ドレスを脱がされてバニーガールにされていた。


「姫様、今から助けます!」

 

「ふん、お前もお姫さまも、打ち負かした後でたっぷりかわいがってやんよ!」


 見た目はいいが、性格が最悪である。

 

「ゲスが!」


「ぬごお!」


 魔王と言うから、かなり強いと思っていたのだが、ワンパンで倒してしまった。


 勇者に鍛えてもらったのがよかったか。聖剣を賜っていたしなあ。


 いや違う違う。


 わたしこそとっ捕まって、魔王から連れ去ってもらう予定だったのに。


 どこでどう間違えた。


「あなたは、私の王子様です」


「いやわたし、女子なんで」


「構いませんわ。愛に性別の境目なんて、ありませんもの」


「いやそのりくつはおかしい」


「だってあなたはずっと、白馬の王子に憧れているとおっしゃっていたではありませんか。そして、見事王子様のような立派な騎士様になりましたわ」 


 違う違う。


 わたしは白馬の王子様には憧れていたが、白馬の王子になりたかったわけじゃないから。


「いいわけなんて、聞きたくありませんわ」


 お姫が、わたしのヒザを枕にした。

 

「決していいわけではない! 信じてくれーっ!」

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