第3話

 出野長平は代々柔道家として名高い出野家に長男として生まれた。生来の頑固は父親譲りで、性格が似ているのが災いし衝突を繰り返していた。長平は自分に厳しく、常に自分を律していた。柔道の稽古に迷ったとき、苦しいことがあったとき、特に他人の弱音や言い訳、悪口雑言を聞いたとき、長平は滝行を行うのが常であった。滝の冷たい清流が自分の弱気や耳障りな言葉を洗い流してくれる気がしていた。正義感の強かった長平は幼い弟妹たちの不始末を自分の監督不行き届きとして、父母や近所に我が事のように詫びることも少なくなかった。そしていつの間にか自分のしたことに責任を取れる立派な青年柔道家となっていた。

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