こっくりさん③

 ユリコちゃんがこっくりさん中に倒れた。

 そんな話を聞いても私はこっくりさんに興味津々だった。その頃はまだ怪奇現象なんてテレビの中だけのエンターテイメントでしかなかったのが大きいだろう。

 硬貨が動き出すところを、この目で見てみたい。現実に確かめてみたいのだ。


 私はこの時すでに『こっくりさん』に取り憑かれてしまっていたのかもしれない。魔性の魅力を感じてしまっていた。反面、こっくりさんを恐れる気持ちもあった。


 この日は放課後、友達と遊ぶ約束をしていた。私は帰宅するとすぐに友達の家に向かった。そこには隣のクラスの子もいた。

 ゲームをしていると友達が言った。


「こっくりさん、やってみない?」


 唐突すぎる誘いに私は驚いた。


「え、なんで?」


「こっくりさんてキツネの神様でしょ。今日はうちの冷蔵庫に油揚げがあるよ」


 油揚げがあるとかないとか。


 ……今、考えたらおかしな会話なのだけど。

 その言葉を聞いた私は、喜んでしまっていた。


「お供え物があるのか! よし、やってみよう」


 油揚げは稲荷神社などにもお供え物として祀ることはあるものだが、一体この時なぜ私達はそんなことを知っていたのかは謎である。


 とにかく、こっくりさんのために準備を始めた私達。三人。


 準備が整ったら、こっくりさんのはじまりである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る