こっくりさん④

 長方形の皿の上に油揚げを一つ。

 その横には手書きの白い紙。紙には「はい」と「いいえ」、その間に鳥居の記号。その下には数字・五十音などを書いた。


 その紙の上に古びた十円玉を置く。


「こっくりさん、こっくりさん。おいでくださいましたら鳥居をくぐり『はい』と答えてください」


 うろ覚えなのだけどそんな言葉じゅもんで呼び出した気がする。


(まさか、動くわけないよね)


 ところが三人が人差し指を置いた十円玉はゆっくりと「はい」に向かって紙の上を滑っり、ピタリと硬貨が止まる。


「誰か動かしてる?」


 私たち三人はお互いに顔を見合わせる。友達は二人とも「動かしてないよ!」と言った。

 いろいろな質問をこっくりさんにしてみるが意味のない文字をデタラメになぞるだけ。質問にまともに答えないこっくりさん。


「油揚げありますよ」


 友達の一人が言うと、硬貨は不気味な動きを示した。


『く・わ・せ・ろ』


「食わせろ? でも、どうやって食べさせたらいいの?」


 私達は十円玉を油揚げの上に乗せてみる。


「これでいいんじゃない?」

「食べ終わったかな?」

「なんか気味悪いよ。もう、こっくりさんに帰ってもらおう?」


「こっくりさん、こっくりさん、食べ終わったら鳥居をくぐりお帰りください」


 紙の上に戻した十円玉は『いいえ』を示した。


「え、帰ってくれないんだけど」


 何回もこっくりさん終了のお願いをしてみるが硬貨は『いいえ』しか示さない。


「もう!」


『いいえ』に向かおうとする硬貨が、急に方向転換をして鳥居に向かう。そのまま動かなくなる十円玉。


「うふふ。無理矢理、帰らせちゃった!」


 どうやら友達の一人が動きに逆らい、鳥居記号に十円玉を戻したようだ。


 そんなことをして大丈夫なのかと心配したが、今のところ祟りらしきものはない。



 ……ただ、こっくりさんが終わった後に変な出来事はあった。


 友達の(弟の)部屋にあった玉無しのエアガン(BB弾の遊戯銃)をふざけて打って遊んでいた私達。玉無しのはずなのに突然、エアガンが運動会のピストルみたいな音と煙を出した。放たれた何かはそのままどこかへ飛んでいった。


 何だったのだろう。


 ……それも気のせいだったと思うことにしている。

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