トイレにいく幽霊

 トイレのハナコさん。

 トイレのヒキコさん。


 水がある場所だからなのか。

 トイレって怪談話が多い気がする。

 いや、学校だけではなくどこにでもいるのかもしれない。


 季節は秋だろうか。実家に帰った時の事だ。


 家族が寝静まった夜中。私は風呂に入っていた。皆が寝ているので一人の時間を満喫していた。

 湯船に浸かってリラックスしていた時だった。


 バタバタと急ぐように廊下を誰かが歩いている。


 私の実家は一直線の廊下の先にトイレがある。トイレの隣に脱衣場と風呂場がある。

 廊下を歩く人がいるとその足音が風呂場まで聞こえる。


 トイレの電気のスイッチを押す音。

 そしてドアを閉める音が聞こえた。


「トイレに起きてきたのかな」


 私は呑気に湯船に浸かる。


 ……。

 …………。


 いつまでもトイレから出てくる音が聞こえない。


「出てこないけど(トイレで)倒れたのかしら」


 私は身体をふいてバスタオルを巻いた。

 脱衣場からトイレを見ると電気がついていない。静かで真っ暗だった。


 そう、誰もいなかったのである。




 ……気のせいだったと思うことにしている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る