お子さま怪盗アンラッキー7!!
純川梨音
お子さま怪盗アンラッキー7!!
ボキュの名前はセブン!怪盗セブンだ!
昼間はこうして歩いて学校に通う普通の小学生。だけど、夜ともなれば世間を騒がす怪盗セブンに早変わり。
ボキュが盗むのはラッキーの象徴だ。
なぜかって?ボキュのおじい様はカジノのスロットで777《スリーセブン》を当てまくり一代で富を気づきあげた、まさにツイてる人だった。ボキュの名前も777《スリーセブン》にあやかってつけられた。
つまりボキュは“ラッキーの申し子”ってワケ。だからラッキーの象徴をこの手に集めるのは必然なのさ。
この前はうさぎの足を独り占めするために、あらゆる場所からウサギを盗み出してみせた。
まあ、だからなのか世間からは“アンラッキー7”と呼ばれている。みんなにとっては自分たちの幸運を盗んでいく不運の象徴だものね。
「…って、うわ!」
ボキュは犬のウンチを踏んでしまった。ツイてな、いや、運がついたのだからラッキーだよね、うん。
「セブンくん、おっはよー!今日も不運だね」
後ろからルミちゃんに声をかけられた。 今日もルミちゃんはカワイイ。ボキュのマイスイート。彼女こそ、ボキュの幸運の象徴。いずれ必ずこの手に!
「なにをボーッとしてるの?」
ハッ、つい見惚れてしまった。
「あ!上みて上。うろこ雲だー。良いことの前兆って言うよねー」
ルミちゃんに言われて見上げると、見事に空一面うろこ雲だ。これは…今夜のターゲットは決まったな。
「セブンくん、そろそろ急がないと遅れるよー」
「うん…あたっ!」
ボキュは空を見上げたまま、足元の空き缶に気づくのが遅れて転んだ。
放課後、ボキュは早速、うろこ雲を盗むための装置の開発に取り掛かる。ラッキーの申し子であるボキュは、頭脳にも恵まれているのさ!
さて、うーん、雲は直接手にとれないから、吸引することにして、集めた雲はボキュの秘密基地のタンクに貯めよう。
アレ、このドリル、前は問題なく動いたのにな、電池もう古くなったのかな。
アレ、発注したポンプの太さと装置の接着口の大きさが合わないぞ、ちゃんと発注するとき確認したのにな。
なんの、他の人なら諦めるような不運に見舞われてもやり遂げられちゃうのが“ラッキーの申し子”怪盗セブンさ!
装置はぼくのラッキーのチカラで完成!衣装もバッチリ!前回の仕事でついた汚れも落とせてる。今日もボキュはサイコーに、キュートでラッキーなお子さま怪盗だね!
忘れちゃいけないのが予告状!夕刊に載せてもらえるように、学校のお昼休みの間に細工はしておいた。
さあ、夜になったぞ!ぼくはグライダーに乗って、空に伸びる吸引ポンプの先を操りながら雲を盗みにかかる。
そこへ警察ヘリが待ち伏せしていた。
「コラ!怪盗セブン!そこは国土交通省が定める航空交通管制空域だ!グライダーで飛ぶことは許されないぞ!」
幸運の象徴を盗られまいと必死なようだ。だけどボキュは怖気づいたりしない。
どんどんうろこ雲を吸い込んでいく。しかし、一個一個にポンプの先を向けるのは一苦労だな。
ん?だんだん雲が一つに集まり始めて、なんだか雲行きが怪しくなってきたぞ?
同時にボキュの手元の操作レバーがなぜかガタガタ言い始めた。
ツイてな、いや、ボキュがアンラッキーなワケがない、なぜなら777《スリーセブン》から名前をもらったのだから、そして今までいろんな幸運の象徴をこの手にしてきたのだから!ここでもボキュは証明する!ボキュが“ラッキーの申し子”だってことを!!
ボキュは警察ヘリをかわしながら、手早く装置を修理する。
気がつくと、雲の大群が寄せ集まっていた。ラッキー!
ボキュは一気に吸い上げにかかった。
翌朝、天気は雲ひとつない快晴。
「セブンくん、おっはよー!今日もいい天気だね!昨日、天気予報ではうろこ雲は後々雨雲になって、明日は雨になるでしょうって言われてたのに」
ボキュはそんなルミちゃんの笑顔を晴れ空の下で見られてラッキーだよ。
「怪盗“アンラッキー7”のおかげだね!あのお子さま怪盗、昨日も最後は集めた雲が自分の基地で洪水を起こして、秘密基地の場所が警察にバレちゃったんだってね。前の“うさぎの足事件”のときも、盗んだうさぎのフンで衣装がフンだらけになってたし。ほんと、アンラッキーっていうか、そういうところがカワイイんだけども」
カワイイってルミちゃん、褒めないでよ。カワイイって。
「カオ赤くしてどうしたの?急がないと学校遅れるよー」
「うん!っいて!」
ボキュは石段に蹴っ躓いた。ルミちゃんの笑顔に見惚れて幸せいっぱいのボキュにはどうってことないけどね。
今夜は何を盗もうかな!
お子さま怪盗アンラッキー7!! 純川梨音 @Sumikawa_Rion
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