第15話

「曹操殿のお言葉は分かりますが、徐州から出兵しても袁術軍に追いつけるとは思えないのですが」

陳宮は地図を示し、説明する。袁紹軍は袁術軍が南下を始めた事で慌てて出陣の準備を始めていて、兵の移動速度を考えるとその準備に数日の時間を要する事になる。その間にも移動を続けるはずの大軍を考えてみれば、実際に戦場となる場所に到達するまで十日以上かかるのではないかと思われた。

だが、これには曹操は首を横に振る。

曹操曰く、袁術は陳留に向けて真っ直ぐ進軍しており、呂布軍が向かった時にはもう袁術は陳留を目前としているだろうと言う事だ。

「それについては問題無い。袁紹軍からの援軍要請を受けて、すでに張遼、徐栄、楽進の三将軍率いる精鋭部隊を陳留に向かわせた。到着予定は三日後の昼頃となる。彼らは陳留に到着次第、迎撃態勢を整える手筈になっている。彼らが合流するまでは私が直接指揮を取るつもりでいるので、貴公らに動いてもらう必要はない」

曹操の言葉に、陳宮は眉をひそめる。

その表情を見て曹操は笑みを浮かべるが、それを見てもなお呂布は曹操を信じる気になれなかった。

それは呂布だけではない。曹操を信頼していた関羽や鮑信ですら、今の曹操に対して疑いの目を向けていた。

それほどに今の曹操からは、これまでの誠実さというものが感じられない。

だが、呂布はその感情を隠して言った。

「では、我々はこのまま徐州へ急ぎましょう」

袁紹軍の動向が気になるところではあるが、それよりも今は劉備達の安全の確保を優先したい。

そう思い、呂布が進言すると曹操は呂布に向かって微笑む。

それは先程までの、冷徹さとはまた違う印象を受けるものだった。

「いや、待ってほしい」

そう切り出したのは曹性だった。

彼は今回の行軍中、常に護衛として先頭にいた。それは今回に限らず、曹操が徐州を出てからも変わる事はなかった。

だが、今こうして発言しようとしている事は珍しく、それもこの非常時に言い出すとは誰も予想していなかったらしく、その場にいた全員の視線が集まる。

特に名指しされた訳ではないのだが、それでも注目を一身に集めてしまった曹性が狼怯んでいるのを見ると、つい笑いそうになってしまう。もっとも、笑う余裕のある者は他にいなかったようだが。曹性の発言を咎めようとした夏侯惇だったが、すぐに曹操に止められる。

ここで曹操と口論する訳にもいかないと悟ったのか、それ以上は何も言わずに黙って下がった。

「どうした、曹性? 何か言いかけたように思えたが?」

曹操が穏やかに問いかけると、曹性や呂布以外の者も、まるで曹性を庇うかのように前に出る。呂布もその流れで一歩出ようとしたが、それに気づいた曹操が片手を上げて制し、呂布もそのままの姿勢で止まってしまう。

呂布は内心、自分の行動を後悔していたが、曹操の行動があまりにも的確過ぎて反応が遅れてしまうのは仕方ないと思うしかなかった。

おそらく曹性の発言によって場の空気が悪くなりかけ、それを取り繕おうと曹操自らが動いたのだと思われる。

ただ、曹操の人心掌握は見事だと思うが、曹操の真意が見えないままだと呂布には不安が残った。

曹操の狙いはいったい何なのか。それが読めず、もし万が一にでも袁術側に寝返る事などと言い出されたら、その瞬間には曹操の首は無いかもしれない。

そんな事を考えていると、曹操が口を開く。

「曹操様、この場にいる者たちはみな、貴方に忠誠を誓っております。この者達の忠誠心を疑わないでいただきたく」

夏侯淵が言うと、他の者も同意して首肯している。

「私も曹操殿を信じているからこそ、この場で発言させてもらったのです。ですが、その忠義に甘えて曹操殿のお考えが確認できないまま動く事はできません。どうかお聞かせ願いたいのです。何故今になって袁紹軍との連携を口になさったのかを」

夏侯惇の言葉に呂布だけでなく、ここにいる全員が驚いた。

袁紹軍の動きに関しては陳宮だけが知っている情報で、それを呂布も知っていたというだけの事。曹操自身が口にした通り、今この時に呂布達に告げる必要の無かったものなのである。

「なるほど、曹操殿。そういう事ですか」

陳宮が小さく呟く。

「曹操殿は私達が援軍に向かった後に動き、袁紹軍と合流するつもりだったと。そして、援軍に来た呂布軍をそのまま袁術軍に対する攻撃に使わせるつもりだったと」

陳宮はそこまで言って、一度言葉を切る。呂布達は無言のまま、陳宮が続ける言葉を待っていた。

「曹操殿は袁術軍と手を組んで袁術軍を挟撃しようと、そう言う事ですね」

陳宮は静かに、だがハッキリと曹操に言った。

陳宮のその言葉に、今度は曹操軍の面々だけではなく、呂布や関羽達も驚いて目を見開く。

「曹操、まさか……」

信じられないとばかりに声を上げたのは張飛だが、それに対して曹操はゆっくりと首を横に振って答える。

「勘違いされてもらっては困るが、私は袁術側に着くつもりはない。ただ、我々だけでは袁術軍に勝てないだろうと言うだけだ。呂布軍の援軍は必要不可欠。呂布軍が来るまで我々が持ちこたえられれば、袁紹軍と共に袁術を討つ事も不可能ではないと考えているのだが、いかがだろうか?」

曹操は穏やかな口調で言う。

それに対して張遼が、やや不機嫌そうな表情を隠す事無く質問をぶつけた。

張遼も今回の袁紹軍の援軍は不本意であったらしく、今回の行動について納得できていないところがあったらしい。

張遼が怒る気持ちもよく分かるだけに、呂布としても怒りを抑えられる自信が無い。それはおそらく関羽も同じだろう。それでも呂布は必死に堪えた。

「その根拠は?」

そう問い質したのは、意外にも関羽だった。

あの関羽にしては珍しいと呂布は思ったが、曹操が本当に曹操本人かどうかを確認する為だと考えると不思議ではなかった。

「呂布軍は徐州に侵攻された際に袁術を追い詰めました。それはひとえに徐州の民が呂布に義理立てしてくれたからであり、そのおかげで徐州に攻め入った袁紹軍を打ち破る事ができたのです。その功績を無視して、徐州の人間でもない袁紹軍と一緒に戦う事は難しいと考えています」

曹操が淡々と説明を始める。

それはまさに事実なので、呂布は反論する余地は無かった。

呂布と劉備は徐州を救う為に戦ったが、そもそもそのきっかけを作ったのは劉備なのだ。

しかし劉備自身はその事に気付いていないようで、目を輝かせて話を聞いている。

確かに曹操は呂布が知る限り最高の戦略家だが、今回の件に関してだけは賛同しかねるものがある。曹操の言い分には筋が通っているものの、その目的は不明瞭だと言える。

「ならば曹操、貴公は劉備が恩を返すためにこの戦に加担すると思っているのか? 我らを裏切ってでもか!」

関羽が大喝すると、その場の雰囲気はさらに悪化してしまうのではないかと思えるほどだったが、それでも曹操は眉一つ動かさないまま答えを返した。

「それは無いでしょう。劉備殿であれば、私を斬ってでも止めるはず。それでもなお私の目的に賛同してこの場に残るというのなら、もはやその者にかける情けはいらないと判断せざるを得ません」

曹操はきっぱりと言い切る。

さすがに曹操といえども、呂布軍に対してここまで冷徹になれるのかという驚きはあるが、それ故にこの曹操こそが曹操だと思えた。

曹操と関羽の間が険悪な雰囲気になった事で曹操軍の者たちも騒然となり、曹操が制止しなければ戦闘になるのではと危惧される程に殺気が渦巻いている。

だが、曹操はそれらを手で制す。

そして一呼吸おいてから曹操は口を開いた。

「もし呂布将軍が曹操軍に加わってくれるのであれば、呂布将軍の率いる全軍と袁紹軍をもって袁術軍を討伐しよう。それが私が呂布軍の為にできる、最大限の礼である」

その一言で呂布の周囲で沸いていた空気は一瞬で収まり、同時にこの場が緊張で包まれる。

これが呂布の望んだ結果なのか。

正直、分からない。

呂布は曹操という人物を尊敬しているし、信頼もしている。だが今この状況において、呂布はこの曹操の行動にはどうしても不信感を抱いてしまうのだ。

今さら袁術を裏切れと言われても従う訳にはいかないのだが、この曹操の目的が不明過ぎる。

ただ単純に袁術と戦うだけなのではなく、何か大きな狙いがあるのではないか、あるいは呂布を利用しようとしているのではないか、そう疑いを持ってしまう。

そうでなければ、こんなに突然にこの様な事を言ってくるとは思えないのだ。

呂布は自分の思考に囚われ、この場がどのような状態になっているのかを正確には把握できていなかった。

「なぁ、兄貴。俺も曹操はあんま好きじゃないけどよぉ、今はちょっと冷静になろうぜ」

呂布の隣にいた魏続が小声で耳打ちしてくるが、それにすら反応できないほど呂布は深く考え込んでしまっていて、呂布は自分で自分が分からなくなっていた。

「曹操殿、先ほど曹操殿の仰った策、ありがたく承った」

夏侯惇が前に出て言うと、曹操はその顔を見て満足げにうなずく。

「ただ、やはり納得はできない! 袁術軍の動きに関しては、もう少し情報を集めた上で決めさせていただきたい!」

夏侯惇がそう言うと同時に、曹操軍側からも不満の声が上がる。

それに対して曹操は特に文句を言うわけでもなく、黙ったまま目を閉じているだけだった。

曹操軍はしばらく騒然としていたが、やがてそれもおさまる。

そして曹操が目を開くと、呂布軍に向けて声をかける。

「袁術軍はもう目の前に迫っております。これ以上長居をしていては戦いの前に疲れてしまいましょう」

それだけ言うと踵を返してしまう。どうやらこのまま引き上げるつもりらしい。

その背中を見ながら張遼がぼそりと言う。

「あの男、気に入らない」

張遼にしてみれば袁紹以上に曹操は嫌いらしく、珍しく露骨に不満を漏らしていた。

「まあ落ち着けって、張遼の兄貴。ここで暴れたらせっかく援軍に来たのに帰されちまうかも知れねぇぞ?」

張飛は笑いながら張遼をたしなめているが、その表情は引きつっている。

張遼にたしなめられた張遼だけでなく、他の呂布軍の将達からも不満が漏れ始めていた。

呂布自身も同じ気持ちなのだが、この曹操にはまだ聞かなければならない事がある。

この状態で呂布が曹操に質問する事によって曹操の出方を試す事ができたかもしれないが、それはあまりにも危険が大きすぎる賭けだと言える。

曹操と劉備が組む事が無いのであれば、少なくともこの戦での劉備の命の危険は無いと言える。

ただ、それでも曹操の思惑通りに動いていいものかどうか。その迷いを捨てきれないうちに、呂布は劉備に話しかけられる。

「呂布将軍、この恩義は必ず返す!」

相変わらず劉備は嬉々として話す。

「劉備さん、あまり無茶しないで下さいね」

劉備と陳宮のやり取りを聞く限り、曹操に対する疑惑は晴れないまでも劉備に対して悪感情を抱いているという事はなさそうだ。

それはともかく、まずはこの劉備の件だけは片付けておかねばならない。

「劉備殿、一つお聞きしたい事があります」

「私などよりももっと曹操との会話を楽しんだ方がよろしいのでは? 私はこの後にも用件があるので、少し急ぎの用ですから失礼いたします」

呂布が言葉を発した瞬間、劉備は曹操に向かって走り出す。

それを止めるべきかと思ったが、関羽がそれを制して劉備についていく。

「……あれが曹操の真意ですか? それならば、呂布将軍の思う壺でしょうが」

張飛が心配そうに聞いてくる。

関羽にしても不安はあるだろうが、その点は大丈夫だろうとも思える。

曹操の出した条件に従えば袁術軍が動き始める前に曹操軍と共に戦える。だがその条件が信用できなかった場合は曹操軍に背を向けるしかないのだが、そうなれば曹操は容赦なく呂布軍を斬り捨てにかかるだろう。

そうなった時、この曹操の策に付き合うのであれば呂布は袁術軍より先に行動しなければならない。呂布と劉備は徐州に攻め入った際、呂布に寝返る事を決めた人間たちを連れてきていた。呂布が信頼している者はこの中には入っていないが、それ以外の者の中には曹操から見れば裏切り者と思えるような者たちもいたはずだ。それをそのまま曹操に差し出してしまっても構わないのだろうか、と呂布は疑問に思っていた。

もちろんその程度の事で呂布軍から離反するような者達であれば切り捨てても良いのだが、万が一その裏切りが袁術軍の策略であった場合を考えると、その証拠を残しておく事も考えなければいけないのである。

もし本当に呂布を味方に引き入れる気なら、曹操はそのような証拠を残したりはしないだろう。

もし呂布を本気で引き入れようとしているのだとしたら、曹操はこの戦場において呂布の足を引っ張るような事をするはずがない。

そう考えていくと、曹操は呂布と本気で戦いたいのではなく、むしろ呂布を利用しようとしているのではないかと言う気がしてくる。そう考えるとこの一連の曹操の行動には納得できる。

だが、それにしてもこの呂布を利用した曹操の動きは、曹操らしくない。

もし呂布を利用しようという意図があるのだとしても、ここまで回りくどい方法をとる必要は無いのだ。呂布を利用しようと思っているのだとすれば、なおさらである。曹操が呂布を利用する為にこんな面倒な手を打つのかと考えると、何か違和感があるのだ。だが、それが何か分からない。この曹操の目的が何なのかがまったく読めなかった。

この場で劉備に問いかけても答えが得られるとは思えないので、とりあえずは劉備を信じようとも思ったものの、やはりどこかに引っかかってしまう。

(……何か、忘れている)

思い出さなくてはならない事があると分かるが、思い出せない。

「兄貴、何かあるんすか?」

魏続も心配してくれているが、どう答えるか迷うところだった。

曹操軍と一緒に戦う事はできない。しかし袁術軍の到着を待っている余裕もない。そんな中途半端な状況になってしまった。

その時、呂布は自分の馬の手綱を握っている手に痛みを感じた。思わず手を離すと、手の甲に鋭い傷が出来ていて血が流れ出している。

何が起こったか分からず驚いていると、隣にいた陳宮がため息をつく。

「……またか」

真横にいるにも関わらず、呂布は陳宮の声を聞き取れずにいて、さらに視界が霞み始めていた。

「兄貴、どうしたんですか?」

張遼が慌てて声をかけてくる。

俺はそのまま馬から落ちてしまう。地面に倒れたところで俺の意識は完全に途絶えてしまった。

目を覚ますと、そこは幕舎の中で寝台の上に寝かせられていた。

いつの間に移動させられたのだろうか。確かあの場にいたはずだが、その後は記憶が無かった。

陳宮の姿を探して辺りを見回すが、見あたらない。

おそらく呂布の側を離れたくない陳宮の事だから、ずっと側にいてくれたと思うのだが。

「……陳宮?」

そう呼びかけると、部屋の隅の方からひょっこりと陳宮が顔を出す。

「起きたか」

「あぁ、なんとかな。お前がいてくれて助かったよ」

まだ身体が本調子ではないらしく、全身に力が入らない。それでも起き上がろうとすると、陳宮が制止する。

「動くな。お前『生理』来てるだろ?」

唐突すぎる発言に、呂布は顔を真っ赤にして咳き込む。

言われてみるとその通りで、ここ数日気分が悪い日が続いていた。

「やっぱりそうだったのかな」

「お前の場合『男だけど生理もくる』特殊な体質だしな」

女性と男性、どちらの機能も備えている呂布の特異さを、陳宮はあまり気にしていない。

「それなのによくあんなに動いていたものだ」

陳宮は呆れ気味に言う。

「自分ではそれほど不調とは思っていなかったんだが」

呂布は腕を動かしてみたが、自分の意志通りに動いてくれる。頭痛や吐き気も無いので、いつも通りの呂布だと思う。

張遼が部屋に入ってくると同時にこの会話も聞かれてしまった。

「……申し訳ありません」

なぜか謝られてしまい、呂布は首を傾げる。

確かに変ではあるが、それほど大袈裟にする程のものではなさそうだ。

だが張遼の表情は暗く、今にも泣き出しそうな感じさえあった。

「ま、いいって事だよ。呂布将軍だってたまには疲れたとか言って休みたいとかさ」

「え?でも生理なんでしょ?」

張飛の言葉に俺と陣宮は固まってしまう。

そして、呂布は

「うん。そういまは『生理』になってる」と答えていた。

何故かその言葉を聞いて、張飛も兵達も安心している。

その様子に疑問を持ちながらも、呂布は深く考えるのをやめて休む事にする。

呂布軍の武将が体調不良で戦線離脱するという異常事態に、呂布自身も不安になりつつも無理矢理眠ったおかげで翌朝にはだいぶ楽になっていた。

とはいえ体調は悪いままなので、休んでいたら張遼がやって来て俺の頭を撫でてくる。普段の呂布であれば振り払うなり殴り飛ばすなりするところなのだが、やはり体が重くて思うように動けない。それに、見た目は細身に見えるが呂布軍の中では上位に入る実力者であるこの武将を力で退けるのは骨が折れるという事もあった。

しかし頭だけならそこまで負担は無いので、大人しくされるがままにしておく。

その張遼の行為に対して、なんか気分がすこしおかしくなる。今までであれば、張遼の事をそういう目では見た事がなかった。どちらかと言えば弟分のような存在として見ているつもりだったし、実際それは間違っていないはずだった。だが、今のこの状態では張遼に対する想いが変化してきているように思える。

それを陳宮に伝えると、またため息をつかれた。

「……呂布、お前はもう少し自分の魅力という物を考えた方がいいぞ。」

え?そんな事は無いと思うけど。

そう言おうとした時、ふと思い出した事がある。

以前曹操軍との戦いで夏侯惇と斬り合った時の事だが、その時の事を思い出そうとした時に頭の中に浮かんできたのだ。

確か、斬られた。

あの時は夢中で痛みも何も無かったが、あの瞬間、確かに何かを感じ取っていたのだ。だが何を感じたのか、どうしても思い出せない。まるで脳の奥底に封じ込められているかのように、そこから先の記憶がない。

思い出そうとすると、何かこうモヤがかかったような感覚に陥る。何かが思い出せないというよりは、思い出さないように本能が抑制をしているといった方が適切だろう。思い出したとしても、あまり気持ちの良いものじゃないらしい。

思い出さなくても支障が無い以上は、無理に思い出そうとしない方が良いと判断する事にした。

次の日、まだ本調子では無いので俺は休むことにした

そんな昼下がり張遼がまた俺の部屋にやってきた

俺は少し顔を赤くする理由は簡単。

張遼を意識し始めてしまっているのだろう。

「失礼します」

そういって入ってきたのはやはり張遼。

相変わらず俺の世話を焼いてくれる。

それが嬉しい反面、どこか落ち着かない気分になってしまう。

「あ、あの張遼」

「なんですか?」

「昨日みたいに頭を撫でてほしい」

一瞬何を言われたか分からなかったようだが、すぐに理解してくれたようで俺の頭を優しく撫でてくれた。

その手は柔らかく、それでいて力強い感じがした。しばらくそのままでいるがなかなか満足できない

「どうしました?」

そう聞かれても答えられない

「いや、その……」

どう言ったらいいか迷っているうちに、顎を上げさせられる。そのまま顔を近づけられて、口づけされた。突然の事だったが嫌な気は一切しなかった。むしろ心地よいぐらいだ……

唇が離れると、恥ずかしくなって下を向いてしまう。それを見た張遼は笑みを浮かべながらこちらを見る

(あぁもう、なんなんだこれ!)

内心焦りながらも嬉しさの方が勝ってしまいそうな自分がいる。だが、このままでいいわけはない。

意を決して顔を上げると張遼が俺を見つめている 張遼に手を伸ばしたくて仕方なかったが、ここで甘えてはダメだと思ったのでぐっと堪える すると張遼が近寄ってきて、抱きしめられる 張遼は優しい声で俺の名前を呼ぶと再びキスしてくる 舌を入れられ絡め取られると、全身に電気が流れたかのような衝撃を受ける

「んぅ……っ!」

声が出てしまうと我に返ったのか慌てて離れて俺から離れていく 俺の顔を見て耳まで真っ赤にしている張遼が可愛らしく思えた しばらくして張遼が顔を上げて俺の目を見ると真剣な表情に変わる

「兄貴、あ、いや、、男で、さらに女なんでしたっけ?」

どっちだよ!!ってツッコミたいがここは我慢しよう

「ま、一応男でもあるし、そうでもない」

「やっぱり男でも、女のところもあるんですね」

「ま、まあな」

「ならいいです」

「?」

「抱かせてください」

「……え?」

今なんて??????? 張遼ってば今なんとおっしゃいました??? 思わず聞き返すともう一度言ってくれたのだが

「抱かせて下さい」

って言うことはつまり 張遼は俺に欲情していると言うことなのか!? これは大変由々しき事態である 俺ももちろん健全な青少年だから人並みに性に対する興味はある だが、こんなにも唐突に張遼から迫られたのは初めてだったので、戸惑いを隠すことが出来ない そもそもこういうのは女性に先に告白をして付き合ってからのアレとかではないのだろうか?? しかもこの子はまだ15歳でしょう?? え?そういう事して良いの??っていうかさっきの口ぶりだと俺のこと好きだったの? 俺全然知らなかったんだけども。いつから好かれてたのよー。俺全くわかんないんだけれども。

流れで最後までしてしまった。

数日後

曹操と劉備たちと合流。その後について話し合うことに。

曹操軍が天下三分の計を行いたいという事を伝えてきた。呂布軍としては当然了承した。

呂布は呂布軍の中で一番偉い人である。

なので話し合いの場においては、呂布の意見が求められる。

しかし、呂布軍の中には意見を出す者はいなかった。呂布軍は呂布が絶対的な権限を持っている軍である。

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