第4話 妹には関係ないこと
「二人とも、飯はもう食ったのか」
「まだだけど、俺は良い。食欲ないわ。陽菜にだけ食わせてやってくれ。どうせ食わせて貰ってないんだろうし」
巧は冷凍庫から冷凍のお好み焼きとチャーハンを持ってきて陽菜にどっちが良いかと聞いた。
「えっと、あの、陽菜は、怖い」
「んだよ、じゃ、いらねえのかよ。仕方ねえな。巧、こっち頼むわ」
お好み焼きの方を手に取り巧に渡す。
「了解。んじゃ、陽菜ちゃん。待っててね」
巧はいつものことのように陽菜の態度を気にもせずレンジで温め始める。
「なあ、巧、ちょっとシャワー貸してくれや」
「ああ、良いよ。勝手に使って」
立ち上がろうとすると陽菜に服の袖を掴まれた。
「お兄ちゃん、怖いよ。行かないで」
「大丈夫だって、うぜえから離せや。巧になんかされたらぶっ殺してやるから」
怯えた目で見てくる陽菜に仕方なくまた座り直した。
「どうした、風呂行かねえの」
温め終わったお好み焼きを机に置き不思議そうに聞いてくる。
「巧に襲われそうで怖いんだとよ」
俺が正直に言うと巧は軽く笑い座って煙草に火を付けて吸い始める。
「別に襲わねえよ。襲ったりしたら仁に殺されることも知ってるし。陽菜ちゃん、仁くんね、うぜえとか言ってるけど、本当は陽菜ちゃんが大好きなんだよ」
「おい、変なことを陽菜に吹き込んでんじゃねえぞ。死ね」
巧がまた笑う。陽菜は俯きながら少し頬を赤く染めている。
「ああ、怖い怖い。だから、陽菜ちゃん。大丈夫だから仁を風呂に行かせてあげて?」
陽菜はやっと離してくれて頷いた。
「おい、変なこと陽菜に吹き込むんじゃねえぞ」
「変なことな。俺、よくわかんねえな。例えば、学校の女教師と犯りまくってるいやらしい兄ちゃんだと言う事とか?」
陽菜にはそういう感じの話は一切してこなかった。それは俺の事で陽菜には関係のないことだからだ。
「おい、てめえ、調子ぶっこいてんとぶっ殺すぞ」
「わかったよ、悪かったって。陽菜ちゃん、今のは冗談だから気にしないで」
陽菜は小さく頷いた。そして俺は風呂場に向かいシャワーを浴びた。風呂場の脱衣所から下着とズボンだけを着て出ると陽菜が待っていた。
「何やってんだよ、そんなとこで」
「あの人、やっぱり怖くて待ってたの」
陽菜がそう言うと俺に近寄ってきて抱きついてくる。
「暑苦しい。くっつくなよ。離れろって」
「お兄ちゃん、陽菜ね、知ってるよ。お兄ちゃんが誰かと付き合ってるって事。体に痕が付いてるのを何度か見たことあるし。陽菜はその相手が誰でも応援するからね」
何を言ってるんだ、陽菜は。あ、そう言えば、今日も美咲として痕を付けられたんだった。すっかり忘れてた。
「そんなんじゃねえよ。別に付き合ってるって訳じゃねえし。勝手な勘違いしてんじゃねえよ」
「そうなんだ。隠さなくても良いよ。でも、お兄ちゃんがそう言うなら信じる。ねえ、お兄ちゃんは陽菜のこと、好き?」
何を今更言っているのか。好きじゃなかったら巧の家に連れてくるような真似はしないし放っておく。
「まあな。お前は血が繋がっていないとはいえ、妹だしな」
「うん、陽菜はお兄ちゃんの妹だから好きだよね。良かった」
陽菜のその言葉は違う意味にも聞こえてしまったがそれを聞き流した。
「おい、お二人さん。そろそろ寝ないと明日辛いぞ」
「ああ」
巧は自室に行き陽菜をソファーに寝かせて自分は座ったまま目を閉じた。
ー続くー
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